Bronze memories
戦いが終わった後、アイナはアパートに戻り、センボウの部屋で充電していた。
「どうして私はこたつのコードで充電なんですか…」
「もう少しの辛抱だからな、ちょっと待ってくれないか」
センボウは箱の中を漁り、何かを探していた。
「あの…、私って何から出来ているのですか?」
「何からって…、皮膚は特殊な樹脂、身体を動かすモーターは合金やシリコン、後は…」
「そうじゃなくて…あの…、私を造った時の感情いうか…、そんなのが知りたいのですが…」
「へぇ、君が感情に興味があるとは…」
「センボウさん、私は、センボウさんのどんな気持ちで造られたのですか?」
「そうだね…」
センボウは箱の中から小さな鍵を取り出した。
「アイナにはね…、僕の“思い出”が入ってるんだ」
「センボウさんの…、“思い出”?」
センボウは少し寂しそうな顔をした。
「アンドロイドに限らず、ものを作る時って、その時の感情に左右されるんだ。アイナの前に…、九つのアンドロイドを造ったんだが…、全部失敗した。あの時の僕は、心が荒ぶっていて、焦りもあった。早くこの事を成し遂げなければならないと、必死になって…、周囲が見えていなかった。」
「えっ…」
「その時、一度心を落ち着かせて…、自分にとって何が大切か…、考えたんだ。そこで思いついたのが、“家族の思い出”それこそが、僕が大切なものだと思ったんだ」
アイナはセンボウを見て、考えた。
翌日、司令棟に来たアイナは、ヒトミに呼ばれた。アイナは最初、怒られるのかと思い、ビクビクしていたが、ヒトミの顔は怒っているというよりも、真剣だった。
「アイナ、あなたは誰に造られたの?」
アイナはセンボウとの約束を守り、こう言った。
「私は、アマチュアのアンドロイド技師に造られました」
すると、ヒトミはため息をついた。
「やっぱり…、口止めされてるのね」
「やっぱり…?」
「私には分かるのよ、おまけにそのヘッドホン…」
「これですか?」
アイナはヘッドホンを外してヒトミに見せた。
「私を造った人の妹さんが大事にしていたものらしいです。その人は妹さんの事を凄く思ってて…」
「それは…」
ヒトミは何かを言おうとしたが、アイナに言い出せなかった。
アイナはその後、タケルの元へやって来た。
「タケルさん、大丈夫ですか?」
「大分落ち着いたよ」
タケルは椅子から立ち上がると、ドアの横に立った。
「今の俺を見たら司令官はきっと悲しむ、そう思ったら立ち直れたんだよ」
「そうですか…」
アイナはホッとした。
「いつか…、成長した俺を司令官に見せてやるんだ」
「そうですね、きっと喜びますよ」
アイナは司令官の顔を思い出してこう答えた。そして、ドアの向こうに行こうとしたその時、ドームが赤く光り、サイレンが鳴った。
『緊急!BC-4地区に反乱軍出現!直ちに出動せよ!』
「あっ!」
「急がなきゃな…」
アイナ達は直ちに支度をすると、現場に向かった。
BC-4地区には暗黒博士が現れ、街を襲撃していた。
「またあいつが!」
タケルとハヤテは真っ先に暗黒博士の元へ向かったが、弾丸の雨に撃たれ、倒れてしまった。
「そんな…」
アイナは光線銃を握り締めると、暗黒博士に向かってこう叫んだ。
「もうやめて!」
暗黒博士はアイナの方を向くと、黒い銃を撃った。アイナはそれを避け、暗黒博士に光線を撃つ。
「なんでここまでするの?」
アイナの問いに、暗黒博士は一言も答えない。どんな時でも、暗黒博士は話すというのがなかった。
タケルとハヤテは立ち上がって、アイナの元へ向かおうとしたが、暗黒博士は、アイナ以外は近づかせまいと、光線を壁のように張ってきた。まるで、暗黒博士はアイナとだけ話をしたいと言っているようだった。
アイナは光線銃と閃光弾を駆使して、暗黒博士に攻撃する。周囲には爆発が起こり、街の一部が破壊された。暗黒博士は、アイナの攻撃を避け、銃を撃ち込む。
二人の激闘は、他の人が入り込む隙がなかった。