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Cyber survivor  作者: 無名人
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silver site

「アイナ、お疲れさま、向こうの事は私が処理しておいたわ。人工衛星が電波妨害をして、一部の地域だけ電波障害があったそうね。」

「そうですか…」 

 ヒトミはキーボードを叩き、エンターキーを押して完了させた。

 アイナはヒトミから離れ、仲間達と喋っていた。

「まさかアイナがまた暗黒博士と戦うなんてね」

アイナは、強敵である暗黒博士と二回戦って、疲れていた。

「まっ、私が居なかった事だけ、幸いに思うことね」

「アマネ…、お前で倒せるのか?」

自信満々に語るアマネを、タケルは心配した。

「やっぱり…、暗黒博士って、反乱軍なんですか?」

「間違いないだろうな、人間を庇うアンドロイドを襲い、街をパニックにさせたからな」

タケルは腕を組んで頷いた。

「反乱軍って、私達と同じように、団体で行動してるのですか?」

「いや…、俺達は反乱軍って引っ括めてるけど、実際は色々な奴…、個人や団体が居て、それぞれで活動している。暗黒博士はな、実は何かの団体とかじゃなくて、個人で行動してるんだよ。要は単独でテロを起こしてる感じか。他のチームも頑張っているけれど、中々捕まえられない。」

 タケルは、Cybersurvivorの中で最年少であるが、一番しっかりしており、状況を理解していた。チームの中でも率先と動き、身体は小さいながらも、反乱軍に果敢に立ち向かう姿は、アイナも憧れる程だった。

「タケルさんはどうしてそんなに勇敢なんですか?」

「それは…、ある人に憧れてるから…」

「ある人?」 

タケルは、左腕の端末を操作して、二人の人物を映し出した。一人は、小さい頃のタケルで、もう一人は制服に青色ジャケットを着た男性だった。

「あれは…、Cybersurvivorが俺と司令官だけだった頃、俺はずっと司令官の指示を元に動いてたんだ。司令官は賢くて、優しくて、俺を助けてくれた。」

タケルはステック型のヘッドホンを持って、アイナ達に過去の話をし始めた。


 タケルは、有能なサイバー技師である両親の元に産まれた。タケルは幼い頃からサイバー技術を学び、実践していた。

タケルは両親の事を誇りに思っていた。そして、両親と同じように、国家レベルで活躍出来る有能なサイバー技師になる為に必死に頑張っていた。

 五歳になったある夏、平和だったタケルの日常の中に、反乱軍のアンドロイド達が現れた。自分達を支配しようとしていると思い、タケルの両親を憎んでいた反乱軍は、タケルの目の前で殺したのだ。

 そして、タケルは反乱軍に連れ去られ、育てられた。理由は、タケルを自分達の味方にしようとしたからだ。だが、人間を憎む反乱軍は、タケルに虐待をした。反乱軍のアンドロイドのメインデータに、人間の育て方は無かった。それが原因なのもあるだろう。

 タケルは、反乱軍から逃げようとした。だが、執拗に追いかける反乱軍に逃れられる訳が無く、すぐに捕まえられ、連れ去られ、檻に入れられた。反乱軍は、タケルの教育を諦め、まるで動物のように扱ったのだ。タケルはアンドロイドの集団の中で一人耐え、外の世界に出れずに居た。


 それから二年経った時、反乱軍が支配していたエリアに、一人の青年が現れた。そして反乱軍を次々に撃ち倒し、タケルを檻の外から出した。タケルは久々に見た空の広さに驚き、青年の方を見た。

「あの…、俺を助けてくれてありがとうございます」

青年は笑ってタケルの頭を撫でた。

「礼には及ばないよ」

「これで…、やっと自由になれます」

タケルはほっとしたのもつかの間、自分の両親が死んだ事と、帰る家がない事を思い出した。タケルは途方に暮れ、青年の目の前で泣いた。

「どうしたんだ?」

「自由になれたけど…、俺には…、何も…」

タケルは今まで自分の事に必死で、周囲の状況など何も見ていなかった。自由になっても、幼い自分には大人が居なければ、何も出来ない。

「どうすれば…、いいですか…?」

助けを求めても、意味が無いとは分かっていたが、タケルは目の前の青年に縋りついた。

「俺には何もない…、サイバー技師の力はあるけどそれ以外は何も…」

「そうか…」

すると青年はタケルに近づいてしゃがみ込み、視線を合わせてくこう言った。

「僕の…、家族にならないか?」

「えっ…?」

タケルは、青年の言う事が信じられず、きょとんとした。

「僕が君を育てる事にする」

「そんな…、迷惑じゃないんですか?!」

タケルはそんな親切は受け取れないと思い、青年から離れて首を振った。

「子供なら…、素直に甘えて良いのにな」  

「でも…」

「一緒に帰ろう。そうだ、君には大切な役目を任せたいんだ」

青年はタケルにそっと手を差し伸べる。

「役目…?」

「僕はこの世界を、変えたいんだ」

タケルは青年と手を繋ぎ、前を見た。

「世界を変える為に、俺の力が必要なんですか?」

「そうだよ」

青年は頷くと、タケルを何処かに連れて行った。


 青年が連れてきたのは、最先端の技術が詰まった巨大な基地だった。建物は二つの棟に分かれていて、一つはビルのように高い実験棟、もう一つは、白いドームがある司令棟だった。 

「そういえば、君の名前を聞いてなかったね」 

「あっ…、俺はタケル…SU-12-Tk3…」

青年はキーボードで何かを打ち込むと、こう言った。

「そうか…、僕はCybersurvivor…、ここの所長とも、司令官とでも呼んでくれていいかな」

司令官は、CY-000-Cb0というSXY-IDを打ち込むと、中に入った。

「Cybersurvivor…?」

「サイバーの力でCentralcityの平和を守る部隊さ、君はこれから平和を乱す反乱軍と戦うんだ」

「僕が…、戦う?」

司令官は、腕に着ける端末と、電子剣をタケルに手渡した。

「そうだ、君は今日から、Cybersurvivorだ」 

タケルはそれを受け取り、ゆっくりと着けた。

 それから、司令官とタケルは、Cybersurvivorとして活躍した。また、タケルは司令官と共に基地で暮らし、サイバー技術以外に、人間として必要な事を学んでいった。二年間冷たい暮らしをしていたタケルにとって久々に感じた人間の温もり、それが何よりも嬉しく、何よりもありがたかった。

 タケルは司令官の側にずっと居た。だが、十二歳になった年の冬、何も言わずに突然司令官は消えてしまったのだ。そして、入れ替わりのように現れたのが、二十歳になったばかりのヒトミだった。

「今日からよろしくね」

 タケルは、悲しむ暇も無く、突然現れたヒトミと、その助手のハヤテを仲間として受け入れなければならなかった。

タケルは、ハヤテとはすぐに仲良くなったが、厳しい態度を取るヒトミとは、最初は上手くいかなかった。

 その後、ミーシャとアマネ、それからアイナが入って来て、今のCybersurvivorになったのだ。


「そうだったね、タケル」

 ハヤテは頷き、タケルの方を見た。

「まっ、私のお陰でCybersurvivorが成り立ってんのよ」

「絶対違うだろ…」

アマネは自分の事ではないのに、妙に得意気だった。

「この司令官…、どこかで…」

 アイナは、三人のやり取りよりも、司令官の写真を見ていた。最近入って来たアイナには、見覚えが無いはずなのに、何故かその司令官の事を知っている気がしたのだ。

 アイナが考えたその時、ドームが赤色に光り、大きなサイレンが鳴った。

『緊急!BM-5地区にテロリストが出現!直ちに出動せよ』

基地に搭載されたAIの電子音声がそう叫ぶと、一同は支度を始め、直ちに目的地に向かった。

 現場では、独立可動型の戦車が街中に現れ、人々はパニックに陥っていた。更に、デモ隊らしき人間と、アンドロイドが揉み合いになり、お互いを殴っている。 

「何これ…、無茶苦茶じゃない…」

アイナは、お互いを止めようとしたが、看板を持ったアンドロイドに背後から殴られた。

「我々に、人間からの自由を!」

「服従されるのは御免だ!」

 アンドロイド達はそれぞれに訴え、街を壊し始めている。その動きにまとまりはなかった

「こいつらは……、アンドロイドじゃない…、ただの破壊兵器だ」

タケルは一人で人混みの中に突っ込むと、アンドロイドと人間を引き離そうとした。

「何するんだ!人間の子供の分際で!」

「やめろ!」

アンドロイド達の標的はタケルに移り、一方的に攻撃を始める。だが、デモ隊の人間は何も言わずにただそれを見ているだけだった。

「そんな…」

アイナはタケルを庇おうとしたが、人数が多くて入り込めない。

「これがこの世界の現実なんだよ、アイナ」

ハヤテはアイナの横に来てそう呟いた。

「どうすれば…、いいの…?」

 ハヤテは何処かからドローンを呼び出すと、人混みの中からタケルを掴み出した。そうして助けられたタケルは傷だらけで、看板の破片が皮膚に刺さっていて、見るからに痛々しかった。

「とりあえずあの戦車だけでもなんとかしないと…」

戦車は街を縦横無尽に走り回り、人間アンドロイド関係なく攻撃している。

「私が行くわ」

アマネは大量の爆弾を持って現れると、それを戦車に一気に投げ込んだ。すると爆発が起こり、戦車は跡形残らず粉々になった。

「一旦退散するか」

「でも…、デモ隊やテロリスト達が…」

アイナは人混みの中に行こうとしたが、ハヤテに腕を掴まれた。

「駄目だ、タケルと同じ目に遭う。ここは警察に任せて僕達は引こう」

ハヤテは、大型のドローンにアイナとタケルを詰め込み、自分も乗ると、基地に戻った。

「俺には…世界を変える事が出来ない…」 

傷だらけの身体を抑えたタケルは、そう呟いた。

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