Automatic system
アイナ達は、反乱軍の機械を全て倒した。
「やった!」
「これでもういいですよね?ヒトミさん?」
ヒトミは、スピーカー越しに返事をした。
「ええ、良いわ。戻ってきて」
アイナがバイクで基地に戻ろうとしたその時、空から電子線が降り、街を破壊した。
「えっ?!」
アイナがその方角に向かうと、人々の、特にアンドロイドの様子が変だ。なんと、反乱軍ではないはずのアンドロイドが人を襲撃しているのだ。
「どういう事…?」
アイナが横を見ると、仲間であるはずのアマネとイクトが、アイナに爆弾を向けている。
「アマネ、イクト?!」
アマネは何も言わずに仲間達に爆弾を投げ込み、更に電子銃を撃った。イクトも、空から電子線を放ってくる。
「そんな…、どうして?!」
「まさか…、乗っ取られたの?!」
スピーカー越しにヒトミの驚く声が聞こえる。
「なんでこんな事に?!」
「でも、アイナちゃんは乗っ取られてないの?!」
二人の他に、街のアンドロイド達も、アイナ達を襲って来る。
「共通セキュリティコードを外部から乗っ取られたんだわ、だからアイナは乗っ取られなかったのね」
「なんとかして止めないと…」
アイナは光線銃を取り出して、二人を止めに行った。
「しっかりしろ!」
タケルは電子剣を取り出してアンドロイドの集団に向かって行く。アンドロイド達は秩序もなく暴れ回り、人間や街を攻撃していた。
「反乱軍じゃないから、倒さないようにして!動作を停止させるくらいに留めて!」
「分かりました!」
タケルとミーシャは街のアンドロイド達と戦い、アイナとハヤテは、アマネとイクトの方に向かった。
「早くしないと街が…」
アイナは、マイクロボットで電波を阻害する光線を放った。更に二人のモーターを静止させ、動きを停止させると、街のアンドロイド達の方に向かった。
ハヤテは、アイナから離れて、探知機で侵入元を捜査した。そして、人工衛星を特定すると、別の人工衛星でそれを破壊した。
「イクトの技術を応用したんだ、これで二人は大丈夫」
人工衛星が破壊されたお陰で、他のアンドロイド達も停止し、街は静かになった。それを、影で誰かが見ていた。
「あれが…、Cybersurvivorか…」
Cybersurvivorとは違う制服を着て、受信機が付いた眼鏡を掛けた青年は、隊員達を見て、そう呟いた。
アイナは異常が無くなったのを見て、ホッとした。
「みんな、良かった…」
アマネとイクト、それから街のアンドロイド達はまだ目が覚めないが、暴走する事はなかった。
「さぁ、みんな帰還するわよ」
アイナは隊員達と一緒に帰ろうとすると、頭に違和感を感じた。
「あれ…?」
それはだんだん痛みへと変わり、身体が痙攣していく。だが、事件が終わったと思っていた他の隊員は、アイナの異常に気づいていなかった。
「アイナ?」
空っぽのバイクを見たハヤテが振り向くと、アイナは何も言わずに倒れ、意識を失っていた。
「アイナ!どうしたんだ!」
「アイナちゃん!」
他の隊員もそれに気づき、アイナの元へ駆け出す。
「アイナ!仕方ない、強制送還するわよ!」
ヒトミは、隊員達を強制送還させると、すぐにミーシャにアイナの様子を診させた。
「ミーシャ、何か分かった?」
ミーシャはアイナの身体を全て診て、首を振った。
「身体には異常はない…、多分神経ネットワークに異常があると思うけど…、共通セキュリティーがないから開けられない」
「そんな…」
アマネとイクトも起き上がり、アイナの元へ向かった。
「アイナ!どうしたの?」
二人が何をしても、アイナの身体はぴくりとも動かなかった。
「これは…、多分、アイナの開発者じゃないと無理だね」
アイナには、他のアンドロイドに装備されている共通セキュリティーも、開発者コードも無い。普通、アンドロイドに異常がある場合、共通セキュリティーを使ってネットワークや機械系を操作するか、開発者コードを使って、それぞれの開発者のマニュアル通りの設定をすればいい。だが、アイナはその方法が使えない。アイナが復活するには、アイナの開発者に頼むか、アイナ自身が頑張るしかない。
「アイナの開発者って誰なの?!」
「アイナは…、何も言ってなかった」
その様子を見てヒトミは、隊員達の元にやって来た。
「私が開発者の元に届けるわ」
一同は口を開き、一斉にヒトミの方を向いた。
「届けるって…、ヒトミさん、アイナの開発者ご存知なんですか?」
「私の勘が当たればね」
ヒトミはイヤホンを操作すると、ある人から連絡が来ている事に気がついた。
「やっぱり…、私、行ってくる」
ヒトミはアイナを背中に背負い、外に出ていった。
天気予報では一日中晴れと言っていたが、空は暗く、土砂降りの雨が降っていた。ヒトミはアイナを背負いながら赤い傘を差し、ゆっくりと歩いていく。アイナの身体は金属の為重く、簡易型のパワードスーツを着けても、ずっしりとした重みを感じた。
「急に連絡して、すまないね」
スピーカー越しに聞こえる声は低く落ち着いていて、ヒトミよりも年上の男性のように聞こえた。
その人から連絡が来るのは何年振りなのだろうか…もう二度と連絡が来なくても、おかしくないと思っていたヒトミは、懐かしいその声を聞くと嬉しくなり、それと同時に胸が苦しくなった。
「ここで待っていればいいの?」
ずっと歩いていたヒトミは、古びた時計台で立ち止まった。そこは、電話越しの人物との思い出の場所だった。時計はGoldenParadigm社のもので、十年前から動いていた。
ヒトミは、傘を差してその人物を待っていた。そして、足音が近づいたのに気づき、ゆっくりと歩き出した。雨は次第に強くなり、雨音以外の音は聞こえない。スピーカー越しの声も、だんだん聞こえ辛くなってきた。
時計台から少し離れた公園で紺色の傘を差した人物が立っていた。ヒトミはその人物に向かって駆けて行く。傘で顔は見えないが、ヒトミより背が高かった。
男性は、ヒトミに気づくと後ろに周り、ヒトミからアイナを取って背負った。
「来てくれて、ありがとう」
男性は、このまま立ち去ろうとする。
「待って!」
ヒトミは駆け出して男性の腕を掴もうとしたが、先に頬に触られてしまった。
「大事な用が終わったら、すぐに戻るから」
男性はそう言って去ってしまった。
「そんな…」
ヒトミはその場に立ち尽くし、静かに涙を流して男性が去った方角を見ていた。
アイナは、朦朧とする意識の中、目を覚ました。目の前には花畑が広がっていて、青い空が見える。そして、アイナの横には、笑顔で駆け回る幼い二人の子供が見えた。片方は背の高い男の子
で、もう片方は背の小さな女の子である。二人が友達なのか、兄妹なのか、分からなかったが、二人が仲が良いのは一目見て分かった。
「これは…、誰の記憶なんだろう…」
アイナは、その二人に見覚えがあるような気がしたが、それが何処なのかははっきりしない。それと、アイナが今まで訪れた場所や、インプットされている情報の中に、こんな綺麗な場所は存在しない。これは、何時の、誰の記憶なのだろうか、アイナは全く分からなかった。
アイナは、それを眺めていたが、記憶の中の映像はだんだんぼやけていき、最後はシャボン玉のように弾けて消えてしまった。
再び目を覚ますと、アイナはセンボウの部屋で寝かされていた。
「あれ?私は…」
センボウは、アイナを見て笑うと、頭をそっと撫でた。
「無事で良かったよ、アイナ」
アイナの身体には、幾つもの銅線が着いており、頭にはヘルメットのようなものも被されていた。
「君はやっぱり良いアンドロイドだよ」
センボウは、いつものようにアイナを褒めるのだが、アイナは、何故自分が褒められているのか、自分が何をしていてのたか、さっぱり分からなかった。




