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恋人捜しは騎士団で  作者: 如月美樹
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 舞踏会を退出する人たちが以外の他多いのか、王族が座る壇上の前には数組列をなしていた。

 カイトに手を引かれた花純は、その列の一番後ろに並ぶ。もちろんゴードンも一緒だ。

 その順番を待つ間、ゴードンが話しかけてくる。

「しかしセブラン殿下とカスミが躍った時は、皆驚愕していて面白かったな」

 実に愉快そうに話すゴードンを、カイトがひと睨みする。

「・・・危ない人に目を付けられた気分だ」

 確かにと、ゴードンも頷く。

「ナオヤが聞いたら卒倒するかも。カスミに殿下が顔中にくちづけたと聞いたら・・・・・・」

「あ・・・、駄目だよ。そんなこと言ったら、駄目」

 慌てて花純が口止めする。

「でもここにはパンダニ学園に通う生徒は大勢いるぞ。そいつらからの話で耳に入るより、俺たちが直接言った方がよくないか?」

 そんな恥さらし的なことは、花純には出来そうにない。でも、確かにゴードンが言うように他に人から聞かされるより、自分たちから告げた方がいいような気もする。

「で、でも~・・・」

 それでも渋る花純に、カイトが真剣な顔でこんなことを言った。

「カスミは被害者だから、何も気にしなくてもいい。俺たちが後で話しておくから」

 それを聞いて、もしかして今までもこっそり男の子たちだけで何か話されていたのか? と花純は驚愕した。

 仲が良かったグループに入れてもらったから、確かに男の子たちだけの時間も必要だろう。でもその場で、もしかしたら自分のことを話されていたかもしれないなんて・・・。

「カイト、お前・・・。殿下がしたことをまるで犯罪みたいに言ってしまうのは・・・、どうかと思うぞ?」

 カイトの声が他の人に聞こえていないかと、ゴードンは素早く視線を彷徨わせる。

「年端も行かぬ少女に対し、公衆の面前で無体を働いたのだ。それくらい言われても仕方がない」

「カイト~、もう止めてくれ。お願いだから。・・・・・・それにカスミはもう成人している歳だからな、念の為言っておくけど」

 その間にも列は、徐々に前へと行く。自分たちの後ろにも人が並んでいた。

 国王の斜め後ろに立っていた騎士団長のレウォンが花純に気付き、にこりと爽やかに微笑んでくれた。

 花純もちょうど気付いた時だったので、笑みを返す。

 騎士団の制服はやっぱり格好いい。特にレウォンは団長であるからか、いろいろ装飾もついていてとても華美だった。顔が派手なレウォンには、よく似合っている。

(団長さんがもう少し若かったら、奥さんも悪くないけど。でも息子さんが私より年上なのは、やだな~)

 と思ってしまった。

「お、カスミ。次だぞ」

 ゴードンの声に、姿勢を正しながら前を向く花純。

 前は壮年の夫婦のようだ。その女性の方を注視する。この人を真似ていれば、間違いはないだろう。

 所詮はなんちゃってご令嬢なんだから、多少のぎこちなさは許してくれるはず・・・・・・だよね?

 前の人たちが去った後、カイトに引かれて一歩前へと出た。

「おや、久しぶりだね。確かヴェルビエ伯爵のご子息だったかな?」

 国王が直接声をかけてきた。

 花純は慌てて先程の淑女を真似て視線を落とし腰を折った。

「ご無沙汰しております、陛下」

 カイトは胸に手を当て、頭を下げた後そう声を発した。その堂々たる態度に、さすがは伯爵家次男と思わずにはいられなかった。

「そなたは学園でも優秀だと聞いた。伯爵が自慢していたからね。そなたのような者は、もっと頻繁に舞踏会へ参加しなくてはならぬぞ」

 何だかご挨拶どころではなくなってしまった感じだ。退出するのは、この様子では無理ではないか?

「確か貴方は婚約者もいないのだと伯爵から聞きましたよ? 好きな方でもいるの?」

 王妃様だろうか? とても可愛らしい声だった。

 まだ頭を下げたままの花純は、見ることは出来ないけど。

 カイトの親は、王家の方々と凄く親しいようだ。どんな立場の人か、聞いたことがなかったけど。

「好きな女性はいます。その女性に忠誠の誓いも立てました」

「・・・・・・・・・っ!」

 びくりと身体を弾ませて、思わず顔を上げてカイトを見てしまった。

 もしかして、もしかしなくても・・・それは自分ではないのか? と花純は額に汗を浮かべる。

 こんなところで告白?

 心臓に悪いから止めて欲しい。

「忠誠の誓いとは・・・・・・。また穏やかではないね」

 さすがの国王も、カイトの言葉に苦笑している。

「まあ、素敵ではないですか。一生その方をお守りするという意思表示ですわ」

 恋する乙女のように、うっとりとした声で王妃様がそう言葉にする。

 それにも国王は苦笑し、もう一人の男にも視線を配る。

「クルムロフ伯のご子息も一緒かい? 君たちは仲が良かったのだね」

「はい、陛下。ご無沙汰しております」

 ゴードンの挨拶に、国王は深いため息を吐き出した。

「この頃の若い者たちの舞踏会離れは深刻だよ。そなたたちのような若い者たちには、舞踏会は野暮ったいと思われているのかな?」

「いえ・・・、そのようなことは」

 さすがにここは否定しておくべきだと、ゴードンも控えめに声を出す。

「社交の場での人脈作りは重要なことだよ。そなたたちも、もっと参加して欲しい」

「「はっ!」」

 カイトとゴードンが声を揃えて返事をする。

「・・・・・・おや、そなたは」

 そしてカイトとゴードンの大きな身体の影にひっそりと隠れていた花純に、とうとう国王の目が向いた。

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