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茫然と立ち尽くすアルジネットを、花純は瞳を瞬かせながら見上げた。
「アルちゃん・・・?」
「・・・カイト様が、誰に忠誠の誓いをなさったの?」
そんなに真顔で言われると何故か照れる。
「え~と、私に・・・?」
何故か疑問形で応えてしまう花純だった。
アルジネットは力なく、ストンと椅子に座った。
そして長く続く沈黙。
カフェの中もアルジネットが静かになった時点で、通常の賑わいを取り戻していた。
花純は手持無沙汰なので、目の前のスイーツの盛り合わせに手を伸ばす。
茫然としていても、アルジネットは美人さんだ。自分に自信があるのも頷ける。
三つ目のケーキに手を伸ばそうとした時、急に手首を掴まれた。
「ぎゃっ!」
驚いて変な声が出てしまった。
「貴女、事の重大さが解かっているの? ケーキを食べている場合ではなくってよ?」
いや、ここは食べようよ。せっかく注文したんだしと思ったが、花純は素直に手を膝に戻した。
「忠誠の誓いの意味は、解かっていらっしゃるの?」
「ん~・・・、私が聞いたのはもし結婚しても忠誠を誓った人と妻が同時に危険な目に遭っていたら、忠誠を誓った人を先に助ける・・・だったかな?」
花純の言葉を聞いたアルジネットは、頷きながら眉間に皺を寄せた。
「そう。それ以外にもいろいろな弊害が生じますの。あまりにも心に絶大な痛を被る為、今では忠誠の誓いをする者はほとんどおりませんのよ。異性に忠誠の誓いを立てた者は、大概その人と結婚することが多いですわ。それが一番穏便に何事も事が運びますから」
「・・・へ?」
カイトと結婚? いや有り得ないでしょう。
だって年下だし・・・。
と思うが、カイトの自分の構い方に一抹の不安が押し寄せる。
アルジネットも、カイトの想いに少しも気付いていない花純に苛立ちが募る。
カイトは多分言葉として想いを告げてはいないのだろう。
忠誠の誓いをするほど恋い慕っているのに、何をしているのだ。
「そう言えば・・・」
アルジネットは、最近急接近し始めたヴィートのことを思い出した。二人の仲を見せつけるように、学園内の食堂で昼食を共にしている。
「ヴィート様とは、どういうご関係ですの?」
話が逸れたことに、花純はほっと息を吐く。
「街でお父様の騎士団長さんにお逢いして、騎士団に入団しないかって勧誘されて・・・」
「・・・・・・・・・勧誘?」
何がどうなってそうなったのだ?
「アルちゃんは、明さんを知ってる?」
「ええ、騎士団の英雄ですわね」
英雄・・・。ただのゲームおたくが英雄・・・。
ちょっと花純とは、明の評価が大きく違うが今は無視しよう。
「明さんも私と同じ国の出身でね。初めてこの世界にきた時、役所まで会いにきてくれたの。その時明さんに騎士団に入ればいいって言われて、それが多分団長さんまで届いてたんじゃないかな」
そんなに簡単に、騎士団に入れる訳がない。騎士団はいわば優秀な人物でのみ構成されている。
いくら団長がいいと言ったとはいえ、そんなに事が簡単に運ぶはずがない。
「・・・・・・貴女、何者?」
そのアルジネットの言葉に、どう応えていいのか戸惑う。
「え~と、花純・野々宮。落ち人、十八歳です」
それ以外、何者でもない。今は・・・。
高等課を出れば少しは何かが付け足されるのかもしれないが、今はそれだけでしかない。
「・・・まあ、いいですわ。来週末、国王様主催の舞踏会がありますの。貴女も出席なさい」
「え・・・・・・・・・? 何で?」
アルジネットは、どうしても花純の交友関係が知りたくなってしまった。そして彼女が何者であるのかも。
「ドレスやその他は私がご用意いたしますわ。貴女を来週私の家へお招きします。そして、そのまま舞踏会に参加よっ!」
「・・・・・・・・・」
今度は花純の方が、何でそうなるのだ? 頭を悩ませる番だった。




