13
朝食後制服に着替え、花純は直哉たちと共に学園へと向かった。直哉の友人たちとは学園の入り口で別れ、花純たちは事務室へと赴く。
「花純さん、学園は皆土足だからね。上履きとかないから」
「うん」
また気軽な感じの言葉尻に戻った直哉に、花純はほっとした。
もしかして怒らせたか、はたまた呆れられたかと思っていたが、そうでもなかったらしい。
「失礼いたします」
事務室の扉を開くと、大勢の人たちがこちらに顔を向けていた。花純たちに気付いて、ケニーが笑みを浮かべて立ち上がる。
「おはようございます」
近付いてきて朝の挨拶をされた。
「「おはようございます」」
二人の返答に、ケニーは笑顔のまま頷いた。
「何処の教室を使えばいいのか解からなかったので。あと花純さんの荷物は置きは何処になるのかも」
「少し待って下さいね」
そう告げてから、ケニーは一度自分の席に戻った。
鞄を持って二人の前に戻る。手に持っていた鞄を花純に差し出した。
「この鞄は学園指定のものです。これは貴女のものですよ」
「あ、ありがとうございます」
慌てて花純はその鞄を受け取った。
「中には教材や筆記道具などが入っています。何か他に入り用があれば私に言って下さいね。何か必要なものを買う為のお金も入っていますから、ご確認を。これは毎月支給されるものなので、月末になったら私の所へ来て下さい」
ケニーは直哉に視線を移し、言葉を重ねた。
「しばらくは第三会議室を使って下さい。常識を教え終えたら、学力試験を受けていただき何処の課へ行くか判断します」
「え・・・? 初等課から始めるのではないのですか?」
「落ち人は学力能力が高い人が多いのです。日本人対応の教本もありますから、文字は徐々に覚えればいいかと思います」
何とっ! 日本語対応の教本があるとは。それは心強い。先にこの世界に来た日本人が、頑張って作ってくれたのだろう。その日本人に、花純は大いに感謝した。
ケニーは鍵を直哉に渡す。
「第三会議室の鍵です。なくさないように」
「はい」
「カスミにはこれを」
もう一つ鍵を差し出す。
「荷物入れの鍵です。ナオヤさん、案内お願いしますね」
「解かりました」
ケニーとはそこで別れ、二人は荷物入れの場所へ行く。
その間も学園では落ち人がきたと噂が立っていたのか、学生が興味深そうに二人を少し離れた場所から眺めていた。
「何だかパンダになった気分・・・」
「パンダって白黒の大きな獰猛な動物のこと?」
「うん、でも獰猛って・・・・・・」
確かに見た目はクマだけど、パンダが獰猛って表現した人は直哉が初めてかもしれない。あの色で騙されそうだが、確かにクマみたいなので獰猛なのかもしれない。
「日本の動物園では可愛いって人気者なのよ」
「花純さんは獰猛じゃないよ」
何と返していいのか返答に困るところだ。
いつの間にが校舎の入り口に戻っていた。
「この左右に荷物入れがあるから。花純さんの鍵、何番って書いてある?」
「・・・九八三番」
この番号を見て、やはり千人近くこの学園には生徒がいるのだと実感した。
花純から番号を聞いて、直哉は歩き出した。途中、可笑しそうな声を出す。
「荷物入れって日本では確かロッカーって言うんだよね。日本の学校や職場でもあるって聞いた」
「うん、そうだよ。あと靴も替えてから校舎には入るの」
「ははは、掃除が大変だろうって父さんも言ってたな」
たくさんの荷物入れがある場所に着く。基本的に学園指定の鞄が入るくらいの大きさみたいだ。
「九八三・・・。ああ、ここだね」
花純の目線の高さだった。よかった。下の方ではなくて。高いのも困るけど。一番高い荷物入れなどは、花純の背の高さでは届かない。もしかしたらケニーが、そこのところは気遣ってくれたのかもしれない。
「でも花純さんにはこれも当分必要ないかも。第三会議室は当分僕たちが使うから、誰も入ってこないだろうし。そこに荷物も置いて、鍵をかけてから出ればいいからね」
確かにそうかもしれない。
「じゃあ、早速第三会議室に行こうか」
「うん」
花純たちは二階へ続く階段を上がった。




