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最終部 前触れのない波乱②


「私も亜里沙からその話聞いた!誰がそんなデマ垂れ流してるんだか…」


予備校の帰り道、隣を歩いている由佳が怒りをあらわにしていた。


泰樹と由佳は、場所は違えどお互いの予備校自体はすぐ近くにあったので帰りは一緒に帰宅していた。受験期で唯一の、癒しの時間だった。


「まあ、思い当たる節はあるんだけど…」


「え、そうなの?」


泰樹は少しびっくりした。思い当たる節とは…?


「うん。多分、あいつだと思う。今頃かい…」


「それ、詳しく聞いてもいい?」


「うん、でもその代わり…」


突然、由佳が泰樹の腕に抱きついてきた。泰樹は突然の出来事にびっくりしてしまった。


「うおっ!どうした?」


「なんか…くっつきたくなった」


そう言われると嬉しくはあるのだが、同時に恥ずかしくなって泰樹は顔を赤くしてしまった。う、嬉しいけれども…。


「だから、くっつきながら話すね」


「お、おう…」


そう言うと、由佳は秋の渡り廊下での出来事を話し始めた。


「なるほどね。あいつ、思ったより下衆なんだなぁ」


「まあ、私に振られたのがよほど悔しかったんじゃない?」


由佳は噂を流したと思われる奴を蔑むように言った。いや、そうなんだろうけれども…被害が出ているというか…。


「よし、私に任せて」


「え、どうするの?」


由佳の顔を見ると、何か意地悪を企んでいる顔になっていた。何か嫌な予感がする…。


「まあまあ、任せなさい!」


待て待て、すごく怖いんですけど…。


「そういえばさ、泰樹は志望校変わらず?」


由佳が急に話を変えてきた。噂の話は泰樹自身も気分がよいものではなかったため、素直にその流れに乗ることにした。


「うん、そうだね。変わってないかな」


夏に由佳から聞かれて以降、泰樹は志望校を変えていなかった。レベル的にもちょうどだし、何よりやりたいことがそこにあった。変える理由など、ない。


「私もそこ目指そうかなー」


「俺につられて志望校同じにするのだけはやめてな?」


「何よ、私と離れたいって言うの?」


由佳は抱いていた腕を突き放し、プイと反対側を向いてしまった。


「いや、そういうわけじゃなくて…人生左右するわけだし…」


「…わかってるけどさぁ」


由佳の声のトーンが落ちる。しょうがない…これを言わせるのも罪だと思うのだが。


「それにさ」


泰樹は由佳の後ろから軽く抱きしめる。


「離れても、好きなのは変わらないし」


そう言ってから泰樹は我に返ると、すぐに由佳を離した。自分の顔が赤くなっているのが分かる。


「…ばーか」


由佳が泰樹の方を向く。その顔は、珍しくかなり赤くなっていた。


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