第二部 女子力か、女々しさか②
「恋愛系?」
由佳は勉強のことだとか、学校のことだとか、もっと他のことかと思っていて、思わずポカンとしてしまった。
「そう。モテモテの由佳さんにご教示いただきたいと思いまして」
「戸田、彼女いないの?」
「いないよ」
「へー以外」
「そういうのはもっと心を込めて言うべきだと思うけどな」
戸田が顔を引きつらせながら由佳に向かって言った。
由佳は「めんごめんご」と両手を合わせ、舌をペロッと出す。
「はぁ。そんな顔しても無駄だぞ」
「まあまあ!で、本題は?」
「その前に、由佳は彼氏いるの?」
由佳が話題を戻そうとしたが、戸田がまた話題をそらしてしまった。
戸田が最後に話した言葉にはどこか真剣さや気迫があって、由佳はすぐに答えることができなかった。少しの沈黙が流れる。
「…いないけど。」
「好きな人は?」
戸田がいつになく真剣な目で話してくる。
由佳は正直に答えるかどうか迷ったが、真剣な質問には真剣に答えようと腹を括った。
「…いる」
「それは泰樹?」
「えーと…」
由佳は言葉に詰まった。
そうだ。そうなのだ。私は泰樹のことが好きだ。でも、その言葉を他人の前ではっきりと口にしたことはないはずだ。言うか迷った。
でも、今、たぶん、戸田が何を相談したいのか、何を話そうとしているのか。なんとなくではあるが、分かった気がする。
本当は、戸田は話題をそらしたのではなく、話題を戻したのかもしれない。そうであるならば、答えは一つしかない。
「そうだよ」
「まあ、わかってたけどな」
戸田がはぁとため息をつく。やっぱり、この流れは…
「でも、さ」
ゆっくりと、慎重に、戸田が話し始める。
「もし泰樹が亜里沙と付き合ったら?」
ああ、やっぱりそう来ると思った。予想通り。
「亜里沙は泰樹と付き合うことはないって言ってたし、それはないと思う」
由佳は慎重に、少しだけ自信をもって、戸田に話した。
「あいつ、由佳にそんなこと言ってたのか…」
戸田が両手で顔を覆う。ん、どういうことだ?
「あのな、俺は事実だけを言う。どっちの味方とか、敵だとか。そういうのは一切なしで。ありのままを伝える」
え、何?
「亜里沙、泰樹のこと好きだぞ」
え…。
「なんで、そう、言い切れるの?」
「なんでって、亜里沙が俺にそう言ってきたから」
由佳は何も言えなくなってしまった。
「それを踏まえて聞くが」
戸田は一呼吸おいてから、由佳の目を見つめた。
「俺、泰樹の代わりになれないかな?」
じっと見つめられる。戸田は視線を逸らしてくれない。
この短時間で、2つ大きいことがあって、由佳の思考は完全に停止していた。一体私はどうすれば…。
戸田の『相談』に対する答えは決まっていた。決まってはいたが、いろいろな感情が目まぐるしく回っていて、なかなか言葉が出てこない。
「まあ、返事はいつでもいいから、待ってる。今日はありがとう。んじゃ」
「ちょっと待って!」
戸田が席を立とうとしたところで、由佳は戸田を呼び止めた。
何か、本能的に、呼び止めないといけないと思った。
「嫌だ。しっかり考えてほしいから」
そう言い残し、戸田はカフェから出て行った。
由佳はただ茫然と、戸田が出て行ったカフェの出口を見ることしかできなかった。




