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第二部 文化祭③


「お前なんでここにいるんだよ…」


戸田が呆れたと言わんばかりの顔をしながら泰樹の隣に座った。


泰樹は校舎に戻ってから頑張ってぶらぶらしていたのだが、結局『体育館裏でのんびり』に落ち着いていた。風通しが良い分、この季節は少し肌寒くなってしまうというのが欠点だったが、立ち入り禁止になっているため人目を気にすることなくゆっくりできる。ふわふわ感から逃れたい泰樹にとっては好都合だった。


この体育館裏に来るのはあの球技大会以来で、もうあれから一か月も経ったと思うと、時が経つのは早いなと泰樹は思った。一か月前はいろいろとありすぎて細かくは思い出せないが、ここでは後輩である薫と話した記憶がある。薫はお茶目で可愛らしく、なんだかんだで他愛のない会話をすることができて楽しかったなと泰樹は思い返した。

そんなこんなで泰樹が体育館裏でのんびりしていると、お化け役シフトが終わった戸田から『今どこいるよ!?』と連絡を受け、体育館裏にいると教えてやった。


お化け屋敷の中が暑かったのか、戸田は右手に団扇を持ち、この季節では寒いと思われる半そでのシャツを汗だくにした姿で泰樹の前に現れた。


「そんな格好してたら風邪ひくぞ?」


「んなこと言ったってしょうがねえだろ暑いんだから」


戸田が「あちー」と言いながら左手でシャツを仰ぎ、右手にもった団扇を仰ぎはじめた。


「そんなに教室暑かった?」


「暑いってもんじゃねえよ、地獄よ地獄。もうちょっと風通しがいい黒幕にしてくれてもよかったのに」


戸田が横でぐちぐち言ってくる。そんなこと言われてもしょうがねえだろ布の種類が一つしかなかったんだから。


「てかさ、お前もうちょっと学校祭楽しめって。せっかく社交的になってきたと思ったのに」


「いくら社交的になったからってそんなすぐこの空気に慣れるわけないだろ」


戸田からの説教に泰樹は一応反論した。戸田の言うことはもっともだが、急にいつもの状態から変えられるわけもなく、加えて学校内で他人と社交的になるには多少なりともリハビリが必要だった。

友達がたくさんいる戸田とは違うんだっつーの。


はぁ、と泰樹がため息をすると、聞き覚えのない携帯の着信音が鳴った。自分のではない。とすると…


「あ、電話だわ。わり、出る」


戸田は立ち上がると、泰樹とは少し離れたところで電話に出た。あいつ、元々あの着信音だったっけ?


「わり、ちょっと呼び出されたから行ってくるわ!」


戸田が電話口を抑えながら泰樹に向かって言った。まあ、おそらくお化け屋敷の人員不足なのだろう。


「おけ。いってらっしゃい」


泰樹は戸田に右手を上げると、戸田は「あざっす!」と言って校舎の方に消えていった。


まあ、さっき戸田から言われたこともあながち間違いではない。

ちょっとはふわふわ感、慣れてみるか。


泰樹は立ち上がってズボンをはたくと、校舎の方へと歩みを進めた。


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