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第二部 文化祭②


今日から始まる文化祭。ルンルン気分を抑えきれない由佳はいつもより早く家を出た。


ここの高校では最初で最後の文化祭。初めてだから楽しみだということもあるのだが、先週、転校前の高校にいる友達とメッセージのやり取りをしているとき、来週は文化祭だと送ると『その日代休で学校休みだからそっち行ってみようかな!』とメッセージが返ってきた。久しぶりに会う旧友と初めての文化祭。楽しみなことだらけだ。まあ、本当に楽しみなのは二日目なのだが。明日はもっと早く家を出てしまうかもしれない。


クラスメイトからは「最初で最後の学校祭を楽しんでほしい」ということで文化祭の役割等は免除されていた。

最初は裏方の仕事をすると申し出ていた。出し物側で参加することも文化祭の醍醐味だと思っていたし、何より一人分余計に負荷が出てしまうということは申し訳ないと思っていた。が、最後は「由佳が店番に立ってしまうとギャラリーができてしまって自分たちだけでは収集つかなくなる」と女子陣に押し切られてしまい、結局何の役割も与えられず文化祭を迎えた。悪意のない善意…一番困るやつだ。しょうがない。由佳は切り替えて、二日間満喫することにしていた。


前の高校の友達は午前の新幹線でこちらに向かい、午後にはここに到着できるらしい。午前中は特段やることがなかったので、ひとまず校内をぶらぶらすることにしていた。


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何も考えず気の向くままに歩いていると、4階にあるガラス張りの渡り廊下に着いた。こんなにきれいな景色が見える渡り廊下くらい開放すればいいのにと由佳は思うのだが、学校側が安全面で許可を降ろさないらしく、この部分は生徒以外立ち入り禁止となっていた。もちろん、文化祭でにぎわっている今、この場所にいるのは由佳ただ一人である。


由佳は渡り廊下から見えるガラス越しの景色を見下ろしてみた。

今日の天気はあまり良いものではなく、空には薄暗い雲がかかっていて風がいつもより少し強く、風が吹くたびに落ち葉が空に舞っていた。


ここの場所に来るのは、泰樹と話したあの夏の終わり以来である。由佳はあの日と同じように、景色が見えるあのベンチに座った。なんだかんだしているうちに一か月も経ってしまった。時が経つのは早いものである。

ああ、もうちょっと、もうちょっとでいいから、進展してくれれば付き合えそうな気がするのにな…と由佳は思っていた。でも、もしそれが自分の勘違いで失敗してしまったらと思うと怖くなり、進展させるだけの勇気はない。


ふと、背後で人の気配がした。誰もいないはずなのに…だれ?


「由佳ちゃーん」


気持ち悪くて聞いたことのある声が背中から聞こえてきた。振り向くと、球技大会の時に振ったばかりの大久保がそばに立っていた。うわ…やっぱり。


「隣、座ってもいい?」


「ダメ」


断ったのに、大久保は由佳の隣に座ってきた。由佳はすかさず立ち上がってベンチから離れ、大久保と距離を取る。


「なになに、つれないなぁ」


「あんたのこと、嫌いだから。私の目の前に二度と現れないで」


この間強く振ったつもりだったが、まだ足りなかったというのだろうか。しぶとすぎる。由佳はかなり語気を強めにして大久保に言い放った。


「こんな男、なかなかいないと思うんだけどなぁ。俺、モテるんだよ?」


そんなこと知るか。その顔でどこからそんな自信が出てくるのか。


「私は嫌いだから。とっとと消えて」


「もー、ガード固いなぁ」


由佳はとにかくこいつから離れようと思い、大久保の言葉を無視して階段の方へと向かった。


「もしかしてさ、由佳ちゃん」


後ろから呼びかけられるが、由佳は無視して階段の方へと向かう。ああ、気持ちわるい。


「泰樹くんのこと、好きなの?」


由佳は思わず階段へ向かっていた足を止めてしまった。なんでそんなこと聞くの…?


「あー、それは図星だね」


大久保が上機嫌になる。ああ、むかつく。


「まあ、分かったよ。うんうん。じゃあ、またね」


大久保は立ち上がると、由佳が向かっていた校舎とは反対側の校舎にある階段の方へ歩いて行った。



由佳は止まった足を再び動かすまで、時間がかかってしまった。


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