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第二部 文化祭準備②


「…」


「…」


何も会話がないまま時が過ぎていく。

由佳は亜里沙の行く先を気にしているためか、作業が手についておらずぼーっとしている。戸田は何か話題を振ろうとするが、今の由佳にどう話しかけたらいいか分からなかった。


あー、どっちでもいいから早く戻ってこねえかなぁ…


「戸田君って泰樹と中学校は違うの?」


戸田が2人の帰還を待ち望んでいると、突然由佳が話題を振ってきた。

戸田は不意を突かれたあまり、「へ?」と間抜けな返事をしてしまった。


「だから、泰樹と中学校は違うの?」


由佳が作業を再開し、紙粘土で二の腕の部分を作りながら聞いてくる。その声はどこか拗ねたような声をしていた。おそらく拗ねている原因は俺ではなく亜里沙だと思うのだが…何故か俺が悪いみたいな雰囲気になっている。俺、何もしてないのに…。

まあ、拗ねてもしっかり作業を手伝ってくれていることは非常に助かっているので良しとしよう。


「違う違い、高校からだよ」


「そうなんだ…」


戸田の返事を聞いた由佳が落ち込む。やばい、また沈黙になる前に会話繋げないと。


「中学校は泰樹のところからちょっと離れたところだった」


「ふーん」


由佳が興味なさそうに返事をする。いくら可愛いからって、その返事はないだろその返事は…俺のことは興味ないってか?


「なんでそんなこと聞くの?」


このまま終わるのも釈然としないので、戸田は聞き返すことにした。


「泰樹の中学時代の話、知ってるかなーって思って」


由佳が指の部分の形を整えながら無感情なトーンで返事をしてくる。

そういえば、俺自身も泰樹の中学時代について、よく分かっていない部分がたくさんあった。普段はサッカーの話が中心なためか、中学時代のサッカーの話については知っているものの、プライベートについてはよく分からない。


「亜里沙に聞いても教えてくれないんだよなー」


由佳がニスで爪の光沢を仕上げながらため息をつく。確かに、仲がいい亜里沙が由佳に話さないというのは珍しい。まあ、泰樹に関してのことだから自分が有利になるように隠しているのかもしれない。


「確かに俺も気になるなぁ…」


由佳から制作している腕に視線を戻して作業を再開しようとしたとき、作成していた腕が突然手もとからなくなった。あれ?どこいった?


「やっぱり、ヘタクソだね」


由佳は戸田から奪い取った腕を壊し、一から腕を作り直し始めた。

なんだよ、不得意なんだからしょうがないだろ!…と言いたい気持ちは抑え、「わり、頼むわ。トイレ行ってくる」と伝えると戸田は立ち上がって教室を出た。


かわいいけど、かわいくないな。戸田は心の中で思った。


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