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第二部 文化祭準備①


 「あー、うまくいかねー」


戸田はお化け屋敷で使用する『腕』を紙粘土で作っていた。


戸田や泰樹たちがいる高校の文化祭は9月下旬の2日間で行われる。例年3年生は各グラスごとに出店をし、泰樹や戸田たち3Fはお化け屋敷をすることになっていた。


そこで、球技大会の翌週にお化け屋敷制作へ向けた係決めをしたのだが、戸田は不運にも一番仕事量がある『お化け役』になってしまった。


『お化け役』は、屋敷内の構造をどうするか、どうやってお客さんを驚かすか、などなど自分たちで決めなければならないことがたくさんあり、さらにはお化け屋敷に使用する小道具の製作までもしなければならない。当然、仕事量が多い分割り当てられる人数も多いのだが、意見が全くまとまらず初回の係ごとの集まりからかなり悪戦苦闘した。結果的には何とか纏め上がったものの、不器用な戸田にとっては小道具の製作は苦難の連続だった。普通、中学の図工の成績『2』のやつに小道具作らせるかよ…。


「うっわ、へたくそ」


いつの間にか戸田の後ろにいた亜里沙が悪態をついてくる。俺だってやりたくてやってるわけじゃないんだぞ。


「じゃあ亜里沙やれよ!」


「だって私会計係だもーん」


亜里沙は腕を組みながら見下してくる。

亜里沙は『会計係』という、制作にかかる諸費用などを計算し、生徒会に提出して予算をもらうという仕事をしていた。計算しなければならないのとお金が絡むということで、クラスで一番頭のいい亜里沙が選ばれた。が、正直言って『会計係』がする計算は簡単なものばかりで、相当楽な仕事である。こんな仕事誰でもできるのだが…頭がいいという特権なのだろうか。こちらは重労働。ちょっと悔しい。


「私、手伝おうか?」


戸田と亜里沙がにらめっこをしているところに、突然由佳が入ってきた。由佳はクラスメイト(ほぼ女子全員)の意思により、転校生ということで仕事は特別に免除されていた。思いっきり楽しんでほしいという女子たちからの『粋な計らい』らしいが…正直言って、ちょっとでも制作にかかわった方が楽しいのでは?と戸田は内心思っていた。


「え、いいの?」


「いいよ!私、図工得意なんだ!」


由佳がエッヘンと威張る。やばい、めっちゃかわいい。


「そういえば、戸田君としっかり話すの初めてだよね…?」


何回か話す場面はあったものの、こうやって由佳と会話らしい会話をするのは初めてだった。

そう思うと何故か急に由佳のことを意識してしまい、戸田は急に緊張してしまった。まずい、顔を直視できない。

由佳が「改めてよろしくね!」と言ってきたものの、「お、おう」と中途半端な返事しかできなかった。隣で亜里沙がにやにやしながら見ている。これまでの仲なんだから見てないで助けろっつーの。


「そういえば泰樹は?」


亜里沙が由佳に聞いた。そういえば先ほどから泰樹の姿が見えない。戸田と同じ『お化け役』のはずなのだが。


「あー、さ、さっき、1階の倉庫に材料取りに行ったよ!」


由佳が顔を赤らめる。反応が分かりやすすぎる…ちょっと悔しいぞ…。


「じゃあ私は泰樹にちょっかい出してこよーっと」


「えっ…」


亜里沙の言葉に由佳が固まった。こんなこと言うなんて、確信犯だな…。


戸田がそう思っているうちに亜里沙は「いってきまーす」といって直ぐに教室を出て行ってしまった。


取り残された二人。


この空気感で普通に話なんてできるわけないだろ!と戸田は心の中で叫んだ。


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