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第二部 打ち上げ終わり


「泰樹は大学、どこ受けるの?」


少し前で自転車を漕いでいた由佳が振り向いた。


あの後、由佳と亜里沙、加えて戸田と4人で一緒に打ち上げ会場に向かった。打ち上げでは、周りから4人揃って遅れたことについて特に言及されるようなことはなかった。が、隣に座っていた戸田からは「俺らに感謝しとけよ」と耳打ちされた。特に戸田からお世話になった記憶はないのだが…しかも『ら』って、戸田以外にもいるということなのか。よく分からない。


受験生ということもあり、打ち上げは早めにお開きとなったのだが、戸田と亜里沙はカラオケ大会(と称した二次会)に参加するらしく、泰樹は久々に由佳と二人で帰っていた。


「前向けって。またこけるぞー」


「言われなくてもわかってますー」


由佳が頬を膨らませながら前を向く。


「んー、そうだな。多分…」


泰樹は今の学力なら十分進学可能な大学名を伝えた。

すると由佳は「ひゃー」と言いながら、お手上げと言わんばかりに左手を肩の高さまで上げた。


「私の成績ならそこは無理かなー。でも諦めずに頑張ってみる!」


「もともと頭いいんだろ?こないだのテストの時は…まあいろいろあったし、参考にはならんだろ」


「何よー他人事みたいに。泰樹のせいでもあるんだからね?」


また俺のせいにされたが、今回は前回みたいな重みはない。由佳がニコニコ笑っている。


「まあ、泰樹が勉強教えてくれるからいっか」


「勝手に決めるなっつーの。俺は俺で手一杯だから無理」


「じゃあ今度の文化祭、案内してよ。私この学校の文化祭初めてだからさ!」


じゃあ、と言っているが泰樹には『テスト勉強教える』と『文化祭案内する』のどこが等価になっているのかよくわからない。

それよりも、泰樹は文化祭の存在を忘れていたため「文化祭」という言葉を聞いた途端、急に体が重くなった。


「文化祭かぁ…俺あんまり案内できないよ?」


「なんでよ?」


「毎年サッカー部の試合被ってたから。」


あまり目立たないキャラの泰樹にとってはサッカー部の試合が被ってくれていたことは非常に助かっていた。しかし今年は引退しているため、その手は使えない。


「じゃあ、一緒に回っていろいろ楽しもう!」


「あのなぁ…」


「返事は!?」


「…」


「返事!ほら!」


「…はい」


あっけなく押し切られてしまった。


「あ、そういえば、渡り廊下で言おうとしてたことなんだけど…」


渡り廊下でタイミングを逃してしまって言えなかったこと。

自分でも『今言うか!』というタイミングで切り込んでしまったが、言える時に言わないと、とても勇気のいることだしなかなか言い出せない。


「何よそのついでに~って感じ。雰囲気作りしてよほら!」


案の定、由佳は『今言うの!?』といった感じで返してきた。ほら!とニコニコしながらこちらを見てくるが、この状態からあの渡り廊下での雰囲気に持っていけるとは到底思えない。

泰樹がどうしようかと困っていると、由佳が「ふふっ」と笑い出した。


「まあ、いいよ。もう答えは決まってるから」


答え…まだ俺は何も伝えてないのに分かるというのだろうか。

でも、これまでの出来事から、泰樹の言いたいことを由佳はなんとなくわかっているだろうとは思っていた。

答えは聞きたいが、冷静に考えると残念な方になってしまう可能性だって十分にある。やっぱり、聞きたくないかもしれない。


「答えはね…」


ブーッ、ブーッ。制服のポケットで泰樹の携帯が振動する。電話の着信だ。

由佳もそれに気づいたらしく、「はぁ、本当にタイミング悪いよね」と言いそっぽを向いてしまった。

泰樹は申し訳ないと思いながらも発信元を確認すべく携帯の液晶画面を見る。


「ん?これ誰だ?」


泰樹は液晶画面を見ながら困惑した。電話帳には登録していない番号からの電話で、090から始まっていた。携帯からの着信であることには間違いない。

最初、ただの間違い電話か迷惑電話かどちらかだろうとは思ったのだが、どこかで見たことのある番号だった。


「ん?どれどれ?」


由佳が画面をのぞき込んでくる。その距離の近さに泰樹は思わずドキッとしてしまった。


「あー、迷惑電話でしょ!無視しな!」


と言って、由佳が勝手に着信拒否のボタンを押してしまった。


「ちょっ、何勝手に切ってんだって」


「雰囲気台無しにした電話なんて即着拒だよ!着拒!」


由佳は半分怒りながら泰樹の腕をグーで殴ってくる。いや、俺のせいではないんだが…。



結局、由佳が機嫌を損ねてしまったため、それ以上言い出すことができきないまま家に着いて解散となってしまった。


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