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第一部 球技大会④


(はあ、やっとあきらめてくれた…)


由佳は大きくため息をついた。


新校舎と旧校舎の間にある裏庭に由佳はいた。大久保という訳のわからない男子に告白されて、即振りをしたばかりだった。この高校に来てから3度目である。よく話したこともないのに告白できるな。大してかっこよくないのに。由佳は項垂れながら体育館の方に戻った。


今回のやつはかなりしつこかった。気持ち悪いからこれ以上話しかけるなと言ったら諦めて退散したが…ああいうタイプは苦手である。あんなやつらには告白されるのに、告白してほしい人はこっちを見てもくれない。まあ、自分が悪いのだが。


ふと、体育館裏に女子生徒が向かっていくのが見えた。見たことのある走り姿から、由佳はそれが誰か、すぐに分かった。陸上部の後輩である薫だ。

何で体育館裏なんかに向かうのだろうか…。由佳は好奇心とともに、何故か不安になった。何に不安になっているか分からなかったが、心の中で徐々に膨らんでいく不安を抑えきれず由佳は薫の後を追った。


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体育館裏近くまで来ると、薫の声が聞こえた。誰かと話している。

覗き見は良くない、ここで引き返しなさいと心の中の自分は警告していたのだが、膨らむ好奇心と不安に負けて体育館の角から覗いてしまった。


(えっ…)


体育館裏の段差で薫と…あの人が仲良く座って話していた。

当ってほしくない最悪の予想が当たってしまって、由佳は顔が引きつるのを止められなかった。

あの二人…あんなに仲良かったのか。しかも体育館裏で密会。まあ、あの人はやさしいし、後輩からすごく慕われそうだし…モテると思うし。


由佳は心苦しくなって、見ていられなくなって、急いで引きかえそうとした。すると、振り向きざまに誰かとぶつかってしまい、よろけてしまった。


「っと、ごめんごめん…って、由佳ちゃん?」


体勢を立て直して相手の顔を見ると、同じクラスメイトの戸田くんだった。左手にはコンビニの袋を、右手には携帯を持っている。


「何してるの?」


「いやちょっと…その…」


覗き見していたなんて言えない。だけどなんて言えばいいかわからず、由佳はどもってしまった。


「この先に泰樹いなかったか?あいつ、俺のこと待ってるはずなんだけど」


戸田が体育館裏に出ていこうとしたので、なぜか反射的に腕をつかんで止めてしまった。


「えっ…どうした?」


「あっ、いや…その…」


「何で腕を…って、あー、なるほど」


戸田が体育館の角から顔だけ出して、薫と泰樹のことを確認した。

由佳は戸田の腕をつかんだままだったことに気づき、急いで離した。


「ご、ごめんなさい…」


どうしてしまったんだ自分…。由佳が下を向いて落ち込んでいると、戸田が顔を引っ込めて「やっぱり女の勘ってすげえな」と呟き、由佳の方を向いた。


「まあ、なんだ。ここは俺に任せてさ。由佳ちゃん体育館に戻りな。何とかするから」


戸田くんが一体何を言ってるかわからなかったが、とりあえずこの場から一刻も早く立ち去りたい気持ちが勝ち、「ありがとっ」と戸田くんに言うと急いで体育館に戻った。


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