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サアディアの剣とイルヒドの杖3 ~ラヴィスニアの王女  作者: 山辺沙紀
第三章 魔剣アーヴァテイル
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Ⅰ 魔竜

 ダンジョン攻略、六日目を迎えていた。攻略は思ったより難航している。最大で十八階層までたどり着いた。

 階段を上がったところで、ディールが足をとめた。


「まいった。ドラゴンがいる」

「どうして驚くの? ダンジョンにドラゴンはつきものじゃないの」

 レーシャはきょとんとしている。


「ここは塔だぞ」

 わけのわからないことをディールが口走った。

「混乱しているの? ディール」

「混乱もするさ」

 汗をぬぐうディールの横顔をレーシャは余裕ありげにみつめた。

「魔竜ガイナルディア。ふふっ、それっぽい名前ね」

「ガイナルディア――? なぜ、名前を。……おまえ、隠していたな」

「ごめんなさい。でも……」

 笑っていたレーシャが緊迫した表情になった。

「ついに、出現したわ」

 レーシャはためらう様子もなく、魔竜に歩みよると、その顔を覗きこんだ。


 どうやらドラゴンは寝ているようだった。起こさないに越したことはないのだが。

 ドラゴンの額に埋め込まれた宝石をレーシャはみつめた。

「これがセイラムクルスの結晶」

「おいっ、レーシャ!」

 ディールは、剣を構えながら、裏返った声で、叫んだ。

「大丈夫よ。グーグー寝てるわ」

 レーシャはドラゴンの額にあった、宝石を手でつかむと、思いっきり引っ張った。

 ポロっと宝石が外れた。

「ほら、簡単。びっくりね」

 レーシャは楽しそう笑いながら、手にのせた宝石をディールにみせた。

 魔竜はおとなしく、鼻先をひくひくさせている。

「ほらっ、倒さなくても、アイテムゲット! なんでも見ると倒したがるのは剣士さんの悪いくせね」

 物足りなさそうな顔をしているディールをみて、

「叩き起こして、挨拶くらいしていく? もう二度と会うこともないだろうから」

「静かに寝させておけ」

 ディールは慌てて、手を振った。

「みごとドラゴンを倒して、わたくしの前でいいとこ見せようとか、思わないの?」

「別に思わん」

 いいとこなら、もう十分にみせてるだろ、と静かにつけくわえた。

「欲しいものは得た。とっとと先へ進むぞ」

 

***


 魔竜がいた階の二つ上階に、アーヴァテイルが封印されたフロアがあった。

 光り輝く階段を見つけたのである。それと同時に、

 セイラムクルスの結晶が妖しく輝きを放った。

 ディールとレーシャは、迷わず踏み出した。

 それはまるで転移魔法と似た感覚だった。

 空間が歪んだ。視界が一瞬暗くなったかと思いきや、森の中に放り出されるような感覚があった。

 フロアに雑魚モンスターは一匹もいない。静寂に包まれた空間があった。

 ちょうど中央に、小さな祭壇があり、白銀の光を放つ剣が空中に浮かんでいた。

「あれが、魔剣アーヴァテイル」

 レーシャの表情が明るくなった。

「待て!」

 魔剣へと手を伸ばそうとしたレーシャをディールが強く引き止めた。 

「魔剣のことは俺に任せてくれないか」

「どうして? いやよ。あれはわたくしのものだわ」

 レーシャは妖しく目を輝かせている。この目をディールは知っている。リシテアが魔剣クィヴィニアを見るときの目と一緒だ。

「訊け、レーシャ! 魔剣は女には扱えないもの。おまえだってそれは知っているはずだ」

「いいえ。ディール。必ず、使いこなしてみせる」

 魔剣の呪いなど承知の上、とレーシャの決意は変わらない。

 魔剣クィヴィニアが共鳴するかのように震えている。

「さぁ、ディール。魔剣クィヴィニアで、アーヴァテイルを呼び覚まして頂戴」

 ディールは己の魔剣を制御するだけで精一杯になる。胸の痛みに耐えながら、ディールはアーヴァテイルが放つ光の中に入っていくレーシャをみた。


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