第五話 「あれ?この会議の意味. . . . .」
――作戦会議。この言葉はよく小学生の中でよく使われる言葉だ。昔なら戦争などで作戦会議が使われていた。今ならばテレビのバライティー番組やスポーツ選手などが使う言葉で、一般人の俺たちが使うべき言葉ではない。
. . . . .いや、俺たちは確かにアスリートではあるけれどアスリートとしての自覚はない. . .と思う。(俺を除いては)
しかし、そんな一般人の俺たちが作戦会議をしている。つまり、現時点をもって俺たちは一般人じゃなくなったんだ!. . . . .なんて冗談はよして、そんなことを考えなければならないくらい俺は緊張していた。
. . . . .そう、校舎内で起こる. . .恐怖のゲームに。
「さて、作戦会議を始めよう!」
片桐先輩がそう言うと、他の先輩たちも真剣な目になる。さっきまでミルクフランスを食べていた先輩には思えないな。うん、俺も梅干し味のおにぎり食べてたんだけどね。あれ、普通においしかった。ツナマヨも梅干しもおいしいな。また今度買おう。
「まずはルールの確認だ。前回、前々回の時は校舎の鍵が完全に施錠されていて屋上まで鍵を取りに行くゲームだった。」
「い、意外と簡単なんですね。」
そう言うと神崎先輩がヒステリックにわめく。っていうか俺最近口悪くないですかね。あ、もともと人としゃべらなかったから気づかなかったんだね!なんか死にたい!
「簡単なわけないじゃん!もうあれは体験したくないのに!あの恐怖感、捕まったときの虚無感、体力の消費、先生の殺気、あの時間だけでいくつのものを感じ取らないといけないの!?」
お、おおう。なんか神崎先輩が久しぶりにまじめになったからびっくりしました。っていうかこの人存在感すごい高いんだよね。だっていつも一人でトランプやって一人でつぶやいてるんだぜ?まじトラウマレベル。
「ま、まぁ落ち着け。今は作戦を立てようじゃないか。神崎、お前はおとりだ。」
「ちょっと!どういうこと?なんで私がおとりなの?反対に高宮がおとりやればいいじゃん。足速いんだから!」
「お前も速いだろうが。じゃあ多数決にするか?確実にお前が負けるぞ?」
「なんでそんな私嫌われてるの!?あああ!もう、わかったわよ!私がおとりになってあげる。」
「おーけい。じゃあ作戦は早河、ゲーマーのお前なら作戦ぐらい簡単だろ。」
「えー、めんどい。じゃあさ、霧里考えてよ。」
「ええ?俺?べつに考えてもいいですけど. . . . .」
ああー、これ失敗したら俺が責められるやつだ。分かってるんだよ。今までもそうだったからな。でも、この人たちならたぶん大丈夫かな?みんないつも一人でやってきたんだから。
「分かった。霧里、頼めるか?」
「. . .はい。っていうか片桐先輩がいつも以上にまじめだから怖いんですけど. . . . .」
その意見に高宮先輩も同意する。
「ああ、なんか片桐がまじめになったら気持ち悪くね?もうちょっといつも通りのキャラでいってよ。あのなんか挙動不審の変なキャラ。」
「ええ?俺ってそんな変な感じで見られてたんだ. . .。なんかショックなんだけど。」
片桐先輩がショックを受けている間に俺は作戦会議を考える。屋上まで鍵を探しに行く. . . .。なかなか大変だと思う。部屋の中心に置かれた校舎内の見取り図を見て、よく考える。
「先輩、このゲームをやるときって教室の鍵は開いてるんですか?」
「ああ、あいてるけど. . .あんまり入らない方がいいぞ。前なんか床にとりもちがつけられてて捕まったからな。. . .くそ、あんのハゲ、絶対ゆるさねぇ。」
おお、片桐先輩そんなことされたんだ。っていうかとりもちってところがバライティー過ぎる。
「しかも時々床にトラップがついてるんだ。あの、引っかかったら音が鳴るやつ。いきなりひっかかってびっくりしたな、あれ。」
「そうよ、あのとき高宮が引っかからなければ逃げ切れたのに!」
「ま、まあまあ。っていうか今の話聞く限り逃げ切れたことあるんですか?」
本当に気になる。これで逃げ切ったことなかったらマジで絶望状態。超高校級の希望はもらえないようです。
「. . .ない!一回も。」
. . . . .ストレート。角待ちされていたヤンキーに顔面をメリケンサックで殴られる感覚。さっき食べた梅干し味が逆流してきそうです。ツナマヨだったら逆流しなかったのに!っていう現実逃避を繰り返す。
「で、先生たちは何人ぐらい居るんですか?」
「あー. . . . . . . . . . .ざっと10人くらいかな?」
なぜに疑問系。分かってないのかよ!あー、の後めっちゃ迷ってんじゃねえかよ。でも、本当に10人ぐらいだろうな。さっき犯行声明をあげていらっしゃった方たちがそんぐらいだったからな。
「あー、はい。あんま役に立たなかったけどありがとうございます。」
「役に立たないって何だよ!実際何人居るかは予想だけどさ!」
「まぁまぁ、それじゃあこうしましょう。強行突破。」
「「「「は?」」」」
一斉に僕の方を見ている。え、何コレ。中学時代誰にも話しかけられることのなかった俺が注目されてる?あ、違うわ。先生に遠回しに帰れって言われたことあるんだった。俺って社会から嫌われすぎじゃね?会社に入ったら絶対パワハラのオンパレード。仕事押しつけられすぎて同僚にもなめられるレベル。
「いやいや、強行突破って. . . . .すぐ捕まるよ?バカなの?それともからかってんの?」
「ちゃんと最後まで話聞いてくださいよ。ヤンキーみたいですよ?」
そう言ったら片桐先輩は「あ?」と声を発する。ほら、そういうところがやんきーっぽいんだよ!直せ!その部分。
「だから、先生たちに怪我させられたら学校の責任じゃないですか。しかも俺たちが裁判を起こせば確実に勝てる。最初の前提が間違ってるんですよ。これはゲームじゃなくて狩り。はじめから負けることが設定されてるんです。」
皆は「あー」と変な声だして納得している。だけど、一人だけ納得していないのが居る。
「高宮先輩どうしたんですか?そんな苦い顔して。」
「いや、まさかそこに目をつけてくるとはおもわなくてな。でも、その作戦はたぶん駄目だと思うぞ。」
「へ?なんで?」
神崎先輩が問い返すが高宮先輩は華麗に無視。神崎先輩以外の皆を見ている。
「だって、あいつら容赦ないじゃん。しかも証拠の隠蔽とかうまい。」
皆は一斉に「あー」といって納得している。いや、今のどこに納得する要素があった?ゼロだろ、ゼロ。容赦ない、証拠の隠蔽うまい. . . . .なんでそんなこと分かるの?なんか先生たちがブラックに見えてきたんですけど. . .。
「ということで考え直せよ。ちゃんとおとりも用意してやってるんだから。」
「はい、そうですね。このおとりを有効活用しないといけませんね。」
「私、なんかした?友達もいなくて同士にも嫌われるって. . . . .」
なんか思った以上に神崎先輩がしょんぼりしてしまった。やばい、いじったらそれを真に受けてめんどくさくなるやつだ!誰か!カバーしてあげて!(俺は絶対にやらないけどね。)
とそこで早河先輩がカバーに入る。おお!?この人がカバーするなんて珍しいなあ。嫌な予感しかしない。でもちょっとうれしい。人の不幸は蜜の味って言うしね。悪口言われることは決定事項。
「大丈夫だよ、私たち神崎と同士じゃないから!落ち込まないで!」
おお!ノックアウトで神崎は力尽きた。
片桐先輩は浅いため息をついている。なんか思った以上に楽しいんだが. . . . . .この雰囲気が。ていうか高宮先輩めっちゃにやにやしてるんですけど. . . . . .。この部活性格悪すぎでしょ。心がピュアな俺はなぜかすっきりしました。
神崎先輩は本当に何もやる気なさげでぶっ倒れている。なにかぶつぶつつぶやいているが気にしないことにした。気にしたら負けだ。見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ。
「じゃ、じゃあこの作戦はどうですか?」
「あ?どんな作戦だ?」
「降参。」
いったとたん皆が静まりかえる。あら、何か変なことをいったかしら?それとも俺が正しいから皆が間違ってるって勘違いしちゃったのかな?そう、俺が正しい。俺が世界のすべて。
片桐先輩は深いため息をついて目をどろどろしながら俺に問いかける。
「おまえなぁ。それやったら可能性自体が消えちまうだろうが。はじめからあきらめるってのはそこらのきゃぴきゃぴ低脳リア充どもがやることだぞ?そこは意地張って粘れよ。」
へぇー、最近の若者ってそんな傾向にあるんだなあ。ということはリア充と同じことを考えた俺もリア充ってこと!?悲しくなるからもうこの話はやめにしとこうか。自分で墓穴を掘りたくないです。
「はぁ、じゃあもう早河が考えろ。霧里じゃあ腐った答えしか出てこないからな。」
「な!?俺ほどの純粋な人間が腐っている訳ないじゃないですか!」
「はぁ?お前深いところまで浸食されてんぞ?ふつうそんな発想出てこないだろ!」
言葉に詰まった。先輩の言うことはごもっともです。っていうか、俺ってピュアな人間じゃなかったんだ。ほんと、知りたくなかった。でも、ひねくれてるって言われたらちょっとうれしいよねって感じるのは俺だけでしょうか?俺だけでしょうね。
「ってかもう時間ないじゃん!」
部屋の隅にある時計を見ると七時五十五分を指している。
「やば!もう時間ねぇぞ!強制ペナルティーが科される!急げ!」
そういって皆は部屋を出て行った。普段逃げる癖がついているのか外に出る速度が相当速い。倒れていた神崎先輩もいつの間にかいなくなっている。はぁ、俺が鍵を閉めなきゃならないのか。
そんなことを考えていられるのも. . . . . . . . . .今のうちだった。っていうか、この後の恐怖マジやべぇ。何がやばいってマジやべぇから。




