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アオハルなんて くそくらえ  作者: 社畜社会
4/6

第三話 「それが. . .陸上部との、新しい関係との出会い」

 高宮先輩は言った。

「じゃあ、陸上部の部室に行こう!」

 . . . . .と。


 俺は思った。陸上部ではどのような練習をしているのかと。

 グラウンドでは姿を見かけないから部室で筋トレをしているのか。でも、それだけでは練習にならない。ということは陸上部用の広い部屋があるのか。

 考えれば考えるだけ謎が多い陸上部。どんなところかわくわくした。


 . . . . .なのに、なんだろう。

 俺は数分高宮先輩について行った。部室はどうやら校舎の隣にある、体育館よりも少し小さいが部室としては大きいような建物のようだ。


 部室に着くと、先輩は部室のドアを開け、僕に言う。


「さあ、入ろうか。」


 僕は少し遅れて反応した。どんな部室なのかを想像してしまった。外に出なくても練習ができる部室。さらに地下があって練習ができる部室。そんなことを考えていた。


「はい、分かりました。」


 そう答えると、高宮先輩に続いて僕も部室に入る。目に映った光景は?!

 

 あるのはソファー、ロッカー、机(こたつ?)、テレビ、ゲーム機、それと数人の先輩たち and more。


「. . . . .ナンダコレ。」


 カタコト。ツイ片言にナッテシマッタ。あ、やバイ。思考モカタコトなんだけど. . . . .。 ていうか、ほんとになんだよこれ。ただの遊び場じゃねえかよ。なんかゲームしてるやつがいるんだけど。しかも小説読んだりトランプで遊んだりしてる人も居るんだけど。ていうかトランプは一人でやるもんじゃないんだけど. . . . .。


「なんだこれとはなんだ。ここが陸上部だぞ。」


 高宮先輩がなにかおっしゃっていらっしゃる。俺が敬語が使えることに感心するぐらい現実逃避をしていた。だってあり得ないんだもん。こんなに堂々としている高宮先輩が信じられない。


「いやいや、ここが陸上部ですか?それともあなたたちがおかしいんですか?」


 そこで、高宮先輩との会話に割って入ってくる人がいる。


「おい、俺たちはおかしくないぞ。周りがおかしいんだよ。だから俺らは正しい。」


「っちょ、ネット厨が言ってるようなこと言わないでくださいよ!. . . . .ていうか誰ですか?」


「ああ、まずは自己紹介をしないとだめだよな。俺の名前は片桐博人。ナチュラルに自己紹介ができるけど友達がいないシャイボーイだ!現在友達募集中。っていってもそれを他人に言ったことないから実質的には募集してないな。」


 おいおい、この先輩. . . . . .片桐先輩か。片桐先輩めっちゃしゃべるじゃねえか。しかも友達募集中って. . . . .それって調子乗ってるやつが彼女募集中とかほざいているたぐいのやつ?


「この先輩めっちゃしゃべりますね。」


 俺は片桐先輩に聞こえないぐらい小さな声で高宮先輩に耳打ちする。

 すると高宮先輩は


「ああ、こいつはいっつも知的にしゃっべったり読んでもいない小説を手に持って二時間耐久やったりしてるやつだ。まぁ、変なやつだ。しかも片桐は部長なんだ。部長が変なやつって陸上部ももう終わりだな。」


 と大きな声で僕に言ってくる。ああー、人がやらかしたときってなぜか冷静になってしまうんだよね。だから冷静になったときに追い打ちをかけられたらすごい傷つく。まじあるあるだよな。. . . . . . . . .すいません、俺の中だけのあるあるでした。


「っちょ、聞こえてるって!」


 つい大声でさけんでしまった。片桐先輩がこちらをすごいにらんでくる。よく見たら髪型が少しヤンキーっぽいな。なんかめがねかけてるけどだてめだし。でも、なんか作ったようなにらみ方だからちょっとかわいいような気もする。あ、やばい。俺はゲイにはなりたくないんだ!


「おい、高宮と. . . . . . . . .霧川?だっけ?」


「霧里ですけど. . . . . . .。」


「そう!霧谷だ!おまえら聞こえてんだよ。人の悪口言うときは聞こえないように言えっつの。」


 結局名前間違ってるし. . . . .。ていうか悪口は言ってもいいのね。まぁ人と仲良くなるためには悪口が一番効率的だもんね。人を信じられなくなった俺と自分が大好きな俺がいるから今の俺は鬱病じゃないんだなと思いました。


「いや、片桐。悪口ってのは聞こえるように言うもんだろ?お前常識あるの?それともお前が常識って思ってるのが間違ってるのか?」


 高宮先輩が追い打ちにかかる。ていうかそんな笑いながらせめてあげないでください。 でも片桐先輩は全然ダメージ受けてないように見えるな。笑ってるし。


「そうだな、高宮。悪口ってのは聞こえるように言うもんだよな。なんで今まで分からなかったんだろ。中学の頃何回も知らされてきたのにな。大おかずついでたら廊下の方から女子が俺の悪口ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ. . . . . . . . .クソおぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 あらー、先輩壊れちった。もうほっといた方がよさそうだな。それよりも俺は机の上で一人でトランプをして盛り上がっていらっしゃる方が気になるんですけど。


「霧里、どうした?あのトランプが気になるのか?あのトランプはな、アメリカから輸入したやつなんだぞ!すごいだろ。」


「えー、そっちに目がいっちゃう?しかも意外とトランプがすごいし。アメリカ輸入ってどこに凝ってるの?俺が知りたいのはそこでトランプを一人でしている人ですけど。」


 そういうと、アメリカのトランプをやっている女子が机をバンッとたたく。しかも立ち上がったもんだから長い髪がバサッとなって顔が隠れてしまった。しかも髪を染めている金髪少女。俺嫌いなタイプだわ、こいつ。え、何?怖いんだけど。


「ちょっと!トランプ二人でやってるじゃない!一人じゃないんだけど!」


 . . . . . . . . .?このひとおかしい。どうやったら二人でやってるように見えるの?幻覚でも見てるの?チャゲが飛鳥になったの?それはそれで怖いな。特にお茶を入れてもらったらすごく怖い。


「どこにもう一人いるんですか。怖いんですけど。何か見えるんですか?それとも友達居ないんですか?」


「と、友達ぐらい普通にそこら辺にいるわよ!ほら、そことかこことか!」


 金髪女子はいろんなところを指さすけどそこには誰もいない. . . . . . . . .。


「怖い!怖いんだけど!ていうか誰?高宮先輩、この人誰!?」


「ああ、こいつは神崎葵。リア充だ。私たちの敵だ!」


「ち、違うわよ!私は友達居ないし. . . . .。」


「え、でもさっき居るって言ってた. . . . . 。先輩って霊感あるんですか?」


「ないわよ!察してよ!」


 神崎先輩は机をばんばんたたいている。あらら、机の上にあるトランプが地面に落ちていく。でも、分かったことがある。この人は確実におかしい人だ。近づかないようにしよう!


「ところで、さっきからそこでピコピコゲームしてる人は誰ですか?ていうか部室でゲームすんなよ!ここ何部なの?!」


 すると、ゲームをしている眼鏡系白い髪の美人女子。あら、普通に褒めてしまったわ。まあ、そいつは何をしていらっしゃるんでしょうか。


「ああ、こいつは早河杏奈だ。ゲーマーで大会でも何回も優勝してるすごいやつなんだぞ!」


「ああ、そうですか。なんかどうでもよくなってきた。. . . . .ていうか早河先輩。何してるんですか?」


「ん?ああこれ?FPSだけど?」


「そんなの分かってますよ!なんでゲームしてるんですかってことだよ!」


「. . . . . . . . .え?」


 早河先輩は、え、なんでしちゃいけないの?みたいな顔している。なんでそんな顔できるの?バカなの?おかしいの?それとも俺がおかしくなっちゃったのかなぁ。なんか洗脳されてきたぞ、これ。勝手に俺が考えてるだけなんだけどね。


「. . . . .はぁ、ていうかここ本当に陸上部なんですか?なんか変だし練習してないしゲームしてるし一人でトランプやってるし. . . . .」


「一人じゃない!!」


 神崎先輩が何かおっしゃっていらっしゃるけど気にしないことにした。それよりも、どうもこの部活は腐っている。いろいろ自由なことやってるしみんな友達居ないし. . . . .あ、それは仲間意識ができてうれしいね!


「と、とにかく本当に陸上部なんですか?」


 そう問いかけると、死んでいたはずの片桐先輩が口を開く。いつの間に生き返ったんだよ、この人。


「じゃあ、なんで俺たちは陸上部じゃないと思った?」


 . . . . .質問の意図がつかめない。なぜかって?それは陸上をしていない、それが答えのはずだ。なのになぜこの人はそんな質問をしてくるのだろうか。気がついたら全員俺に視線を向けていた。俺は少し詰まってしまったが、それでも答えは決まっている。


「. . . . .だって、陸上の練習をしていないじゃないですか。しかもゲームしたりトランプしたり部室が遊び場みたいになってるし。」


 言い切ると、片桐先輩はどこかさみしそうな目をして. . . . . . . . . .笑った。


「ああ、俺たちはただ遊んでるんだ。俺たちは皆友達が居なかった。そのくせしてスポーツだけは異様にできた。スポーツに才能が行ったせいでコミュニケーション力があまりつかなかった。当然友達はいなかったし何事も一人で成し遂げてきた。」


 . . . . . .つい黙り込んでしまった。ふいにこの人たちは自分と一緒だと考えてしまった。ただ遊んでる、そんな言葉がその言葉以上の意味を持っていると感じさせられた。唖然としていると、片桐先輩は話を続ける。


「. . . . .なのに、社会は理不尽なことばかりだ。成績はよくても面白いやつだけをひいきする先生がいたし、弱いやつは罪をなすりつけられて何も言えなかった。それで裏で色々言われたりした。なのに俺たちはいつも一人だ。たえきれるか?こんなことが. . . . .」


「. . . . .。」


 またも黙り込んでしまう。この人たちは思っていた以上にいろいろなことを考えている。


「だから、これは陸上部であっても、陸上に専念するような部活じゃぁない。互いに同情し合って互いに傷をなめ合って、互いに支え合う. . . . .そんな漫画みたいな、ドラマみたいな、幻想の世界を作ったんだ。たとえそれが間違っていると言われたってそれを俺たちは必ず否定する。最後まで抗い続ける。」


 そうか。この人たちはそんな関係を夢見てきたんだ。いままで何もかも一人でやってきて理不尽だって社会の勉強だからってごまかして、それでもたまってしまった感情をどこにもぶつけることができない。だからこそ、その感情をぶつけ合う関係がほしかった。互いにわかり合える存在がほしかったんだ。それが幻想だって分かっていても。


 . . . . .なら、俺は。俺は. . . . .


「そう. . .ですか。じゃあ、ひとつ. . . . .一つだけ聞いてもいいですか?」


 先輩たちは笑顔を浮かべている。あんなことを語っておいて笑顔を浮かべれるなんてすごいといまさら尊敬した。


「ああ、言ってみろ。」


「じゃあ、俺は. . . . .俺は。先輩が語った. . . . .教えてくれた、幻想の. . .存在になれますか?」


 相変わらず先輩たちは笑顔を浮かべている。それは悲しそうな目じゃなくて希望が宿っている目で。


「ああ、なれるよ。ならなきゃいけないんだ。だってそれは幻想だから。幻想がかなえられなかったら夢なんてあったもんじゃない。」


 片桐先輩はいつの間にか手をさしのべている。


「ようこそ、陸上部へ!」


 俺はしっかりと先輩の手を取った。その手を取れば自分は救われると思ったから。いままでと違う生活ができると思ってしまったから。だから. . . . .はっきりと先輩の目を見て答える。


「よろしく、お願いします!」


 それが. . . . . .陸上部との、新しい関係との出会いだった。 

 こんにちは社畜社会です。

 今回は先輩たちの事情的なやつを題材にしてみました。でも、今後の内容はベタな展開にはしません。もっと、他の先生方が考えないような作品を作っていけたらと思っています。今後ともよろしくお願いします!

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