第一話 「友達なんてくそくらえ」
――陸上部。それはただ走るだけの部活。達成感も喜びも悔しい気持ちもくそもないただの走るだけの部活。俺の主観からはそう映る、そんな部活に俺は入ってしまった。
中学校も陸上部に入っていたのだが高校も陸上を続けるとは思わなかった。
なんでこんな部活に入ってしまったんだろうか。
中学生の時の俺は陸上一筋で成績は最悪。しかも友達もいなかったから「俺全教科で合計80点だった!てへぺろ☆」みたいな会話もできずに一人で呆然とテスト用紙を見て絶望していた。
だから、高校はスポーツ推薦で入ったのだが. . . . .俺は入る部活を間違えたのだろうか。 もうずっと帰宅部で友達も居ない、もちろん彼女もいない世界でいきるのも悪くないのだが、そんな人生よりは部活で青春がしたかった。俺の本音. . . . .。
だけど. . . . .現実なんてそう甘くなかった。いや、普通にこの部活がおかしいだけだろう。何がおかしいかって?それはなあ――
「陸上部が陸上の練習をしてないってことだよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
. . . . .つい声に出てしまった。
部室内でさけんでしまったので先輩たちが一斉にこちらに視線を向ける。あ、この視線知ってる!俺が面白くないネタ言ったときの皆の視線のやつだ!
「何?なんなの?霧里何したいの?」
軽蔑の視線を向けながら文句を言ってくるのは片桐先輩だ。性別は男。いつも小説ばかり読んでいる先輩だ。この先輩はいつも小説読んでいるが、それは『ふり』である。小説読んでいるかと思えば本が逆になっていてそれに気づいていないことあるし、どんな本か聞いたらなぜかドラマの話に持ち込むし、まじめかと思えばかまちょだし. . . . .。
「ねぇ、霧里。今の何?ちょっとよく聞こえなかったなぁ。もう一回大きな声で言ってごらん?そしたらお前の誕生日に菊の花でも贈ってやるよ。」
あらやだ、声に出てたみたい。でも俺は真実を告げたまでだ。気がついていないなら言ってやるのが一番。今までもそうしてきたからね。そしたら友達が居なくなったんだけど。あ、違う、嘘ついた。友達が居る状態じゃないと居なくなるって表現使えないもんね。
「片桐先輩、俺の誕生日知ってるんですか?俺は家族以外の誰からも祝われたことないんで学校の誰にも教えたことないんですけど. . . . .。」
皮肉を込めて先輩をひかせようとしたが、予想外の回答が帰ってきた。
「ああ、まじそれな。なんだよ、友達とか都市伝説なのかなぁ。」
ああー、地雷踏んじゃったかぁ。俺と同じ地雷持ってるね!
先輩は少し目に涙を浮かべていると、神崎先輩が追い打ちをかけるように言う。
「ああー、じゃあ私って毎日都市伝説じゃん!あははははははは!!!」
片桐先輩は力尽きた。なぜかそんな文字が片桐先輩の上に見える気がするんですけど。まあいいか。ちなみに片桐先輩は本を地面に落として固まっている。人生で初めてフリーズした人見たわ。絶景。
そして、毎日都市伝説っているこの先輩が神崎先輩だ。性別は女。友達もたくさん。コミュニケーション力抜群。おかげにルックスもいいと来た。いわゆるリア充というやつだ。つまり俺の敵だ。
「あ、あれれ?霧里君。声、声出てますよー?私あなたの仲間なんですけど?」
ああ、また声に出てたか。普段から独り言(特技)ばっか言ってるからつい声に出ちゃうんだよな。ちなみい中学校時代は「いっつもぶつぶつ言ってるやつ」っていう長いあだ名がつけられた。あ、違うな。悪口だった。ははは. . . . . .笑えないな。
「神崎先輩。俺は毎日都市伝説ってる側の人間じゃないんですよ。ね、片桐先輩?」
「あ、ああ。そうだ!こいつは俺たちの敵だ!」
「いや、そこまで言ってないんですけど. . . . .」
「あ、ごめん。って、いや!さっき言ってましたけど?」
なんか片桐先輩がキャラ崩れ始めてる。さっき地雷踏んだせいかなー?
「側って何?私も一応友達いないんだけど. . . . .。」
「「「「. . . . . . . . . . . . . . . . .は?」」」」
部室にいた皆の声が重なった。って、え?友達いない?何の冗談?それとも俺たちに対する当てつけかな?発送がネガティブすぎる。
「って、いやいやー。神崎友達いっぱい居て脳内お花畑牧場じゃん。」
そこで口を開いたのが高宮先輩だ。性別は女。冗談を交えながら嫌みを言っていくいい先輩だ。なぜいいかって?それは俺が嫌み言われないからだ!俺は皮肉言うし高宮先輩は嫌み言うし. . . . .ある意味の仲間だ。そしてリア充は敵だ。
「ね、ねぇ霧里君。聞こえてるんだけど。私リア充じゃないんだけど?!」
また神崎先輩に聞こえてしまった。
「おお、やっぱり霧里は分かるやつだなー。気が合いそうだよ。これからもよろしく!」
ニカっと笑ってさしのべてくる高宮先輩の手を取り、何回も握手をしていると神崎先輩が叫んでくる。なんだようるさいな。今親睦を深め合っていたのに。
「ちょっと!何勝手に絆深めてんのよ!私の話ちゃんと聞いてよ!」
「あー、はいはい。聞いてる聞いてる。なぁ霧里。」
「はい、ちゃんと聞いてたのに何で話さないんですかね?なんか絆とか言ってたし。絆とかそれこそ都市伝説ですよね?」
「ああ、絆というものはただの見せ物だからな。うちら今めっちゃ青春じゃなーい?とかいう会話ばっかしてる奴らに青春もくそもねえだろ。」
あら、先輩口調が悪くなっていらっしゃるわよ。やっぱり女子って怖いよね。だって朝は悪口言ってるし、休憩時間も悪口言ってるし、放課後も悪口言ってるし. . . . .ていうか悪口以外の行動起こしてんの?あいつら。
「そ、そんなことはいいから私の話聞いてよ!私は友達一人も居ないしリア充じゃない!だって、今日隣の女子に勇気出して話しかけたらいきなり隣の女子が後ろのやつに、今日蒸し暑いよねー、だねー、っていう会話してくるし!. . . . .うう、もう、なんなの?」
神崎先輩は泣く寸前で僕らに爆弾処理を強いてくる。もうやめて!それ以上話さないで!俺の新たな地雷が出てきちゃうから!
そこでテレビゲームをずっとしている先輩がコントローラーを置いてこちらに顔を向ける。え、何?怖いんだけど。っちょ!それ以上にらまないで!蒸発しちゃう!
「ねぇ、もうちょっと静かにしてくんない?ゲームに集中できないんだけど。」
新たに出てきたこの先輩は早河先輩だ。性別は女。ずっとゲームばかりしていていつも静かだけど時々話に入ってきたりする。普通にコミュニケーションはとれるのにあまりしゃべらないのはなぜだろうか。. . . . .まぁ、ただめんどくさいだけだろうな。実際俺だって人としゃべるときめっちゃ気使うしな。しかも相手がリア充だったら笑顔が引きつってしまう。
「あ、霧里。ちょっとこのゲーム手伝ってくんない?ほら、コントローラー二つあるから。」
「あ、はい。こいつ倒せばいいんですか?なんか見た感じ動きは遅い感じなんですぐ倒せますよ。」
「おっけい。じゃあ行くぞ!」
早河先輩はゲームしているときはすごくしゃべる。めちゃくちゃしゃべる。でもギャップ萌えみたいな感じでいいんだよね。普段静かだし。あ、これは声に出てないから安心してね!これ声に出てたら自殺しちゃうけどね。
「じゃあ自殺してもいいよ?」
. . . . .まじかー。聞こえちゃってたかー。ほんとに自殺しちゃおうかな☆でも、たぶん今日の夜ベッドでもだえてるから明日の朝にはショック死してるかも知れません。
「まぁ、こいつ倒しましょうよ!倒したら俺も先輩もハッピー!一石二鳥!」
必死で話をそらしてゲームに集中する。ああ、恥ずかしい。また新たな爆弾を作ってしまいました。誤作動で爆発。霧里悠人は力尽きた。
そう、またしてもいつもと同じ日常を送ってしまった。いつもこうだ。俺が練習しようって言って、気がついたら手にゲーム機を持っている。
この部活に入って二週間。陸上部がちゃんとした練習をしたことはない。それなのにこの先輩方四人は全員全国大会に出場している。もう頭おかしいんじゃねえの?完璧人間って現実にいたら怖くね?あ、完璧じゃなかった。先輩方皆地雷持ってるんだよね!俺も持ってるんだよね!
. . . . .はぁ。なぜこんな部活に入ってしまったんだろうか。
あれは、俺が入学して間もない頃だった. . . . . . . . . .。
こんにちは、社畜社会です。
今回は青春ものを書いてみようと思います。とは言っても題名が「アオハルなんて くそくらえ」だから青春もくそもないんだけど、彼ら、彼女らなりのひねくれた青春を描いていこうかなと思っております!
これからもよろしくお願いします!