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第2号防衛記念章

自衛隊に勲章はなく略綬の形をした防衛記念章があるだけというのは今回調べて初めて知りました。

なんとなく納得しましたが・・・



行きは10分、帰りは2時間。

ホバークラフト「しらさぎ」はまさにヨタヨタという感じで対馬港に入港した。

埠頭にはAPキャリアーが整列し、整備ハンガーへ歩かずにウィンチで吊るされての移動になった。

というのは、APは腕と脛は装甲がなく骨材にワイヤー丸出しである。

このため多くのAPが命中弾や跳弾でワイヤーを切られ作動不能になっていた。

ターキー01も腕のワイヤーが数本切られていたが、武装は持ってないので戦闘に支障はなかったというだけで同じように吊り下げられての移動になった。

連隊への報告は、指揮官の榎本少尉が行ってくれるそうなので、ハンガーに潜り込んで、ワイヤー交換を始めていた。

「おい高橋、連隊本部が呼んでるぞ。」

佐藤3尉が声をかけてきた。

「なんでしょう?あとちょっとで右腕が終わるんですが」

「知らん。呼ばれたら行け。それが自衛隊だ。」

「確かにそうですね。」

工具を佐藤3尉に渡すと

「佐藤整備隊長へ、ターキー01整備引き継ぎます!」

「佐藤3尉引き継いだ。高橋曹長、連隊本部へむかえ。」

お互いに敬礼すると、俺は早歩きで連隊本部へ向かった。

通されたのは意外なことに連隊本部長の執務室だった。

(・・・俺、何かやったっけ?・・・まて、チックの不正アクセスバレたとか・・でも今回の戦功で何とかしてくれないかな・・・)

どう考えても連隊長に呼び出されそうな記憶は悪い意味のものしかない。

「第810分隊 高橋仁曹長 入ります」

まさか連隊長に呼ばれているとは思わなかったので作業服装のままだ。

「おお、来たか。」

40代後半で歴戦の雄という感じの迫連隊長は笑顔で迎えてくれた。

第一印象はセーフである。

思わずホッとするが、表情には出さない。

「ご命令により参上しました。」

教本通りの敬礼を行う。連隊長が頷く。

「早速だが、要件に入ろう。」

連隊長は前置きもなく話し始めた。

「航空自衛隊と海上自衛隊から連絡があってな・・・」

・・・やっぱチックの不正アクセスの件か・・・いきなり背中に冷や汗が流れる。

「双方からお前に第2号防衛記念章を推薦してきた。」

え?

「第2号防衛記念章ですか。あれは第1級賞詞受賞者に贈られるものです、本官にはその功が思い当たらないのですが?」

オリンピックのメダル取得者が第2号章になるぐらいの常識はある。

俺、何やった?

「まあ、待て、陸自としても貴様には第2号か第3号の防衛記念章を贈る予定だった。」


・・・?


「榎本少尉から報告は受けている。3000発の爆弾処理をしてくれたそうだな。」

ああ、そういえば・・・その後の死戦の方が記憶に大きくて忘れていた。今回の第1目標は爆弾の破壊だった。


「一人で5ktの爆弾処理・・・十分に第1級賞詞に値する。おかげで対馬は無事だった。市民に成り代わって礼を言わせてもらう。」


頭こそ下げていないが謝辞だ・・・セーフ、セーフです。でもとすると、なんで空自と海自も?


「海自はしらとり防衛の功に報いたいとの話だ。」

「それは指揮官の少尉の功では?」

「JTF(Joint Task Force)-対馬コードを使って「おにいとまき」に天候、風速を見極めた最短航路を提示したそうではないか。おかげで教導団の救援が間に合ったとの判断だ。」

そうなのか、チックが勝手にやったとも言えないし・・・空自もそうなのかな。

「空自はC4Iシステムで敵座標を報告、遠距離からの精密射撃を統制したことに対する賞詞だそうだ。最前線にいながら、常に敵500以上の運動データを送付して最適射撃位置と方向まで指示したということだが?」

「それはターキー01搭載AIによる分析データの送信です。」

「うむ、いいAIを育てたな。」

「ありがたくあります。」

「よって、貴様には金色桜花付第2号防衛記念章と、自衛隊法に基ずく命令による交戦での第4号防衛記念章が与えられる。届き次第連絡するので受領に来るように。」

「了解しました。」

「よし、以上」

「失礼します。」

何とか姿勢を保ったまま連隊本部を抜け出したが、宿舎につくころにはフラフラに疲れていた。


…正直、戦闘より疲れた。


あの時は立ったままチックに命令するだけだったものなぁ。命の危険は今回の方が高かったし。


プライベートスペースに戻ると落ち着くために、スクワット200回をして汗を流し、頭を切り替える。


PCを立ち上げてチックに繋ごうとしたときにメモ帳が目に入った。


「ひばら屋か。予約した方がいいのかな?」

今回これだけ大規模な攻勢をしたのだから、しばらくは大丈夫だろう。


そのままPCでひばら屋のサイトを探す。

予約サイトも兼ねていたのでコースメニューと料金を確認しながら調査していく。

ヘルシーで高たんぱく低カロリーの料理が主体だが、夜間はお酒も出すらしい。

・・・蒸留酒主体のカクテルが多いが・・・ただのジントニックでジンの種類が選べる店ってのは・・・ショットバー並みの品ぞろえだぞ、ここ。

個人的にはゆっくりとウォッカを舐めるように飲むのが好きなのだが・・・

春一尉も飲むのかな?・・・絶対補導されるとは思うが(笑)

コースでも良心的な価格だ。これなら薄給の兵隊でも1週間に一度くらいは行けるだろう。

ただちょっとウェブサイトがバラを背景に使っているせいで華やか過ぎてうるさい感じがする。

ひばらのバラのしゃれのつもりだろうか?

それ以外は期待が持てる雰囲気だし、予約を入れようとして、春一尉に時間を連絡するのを忘れていたのに気づいた。


個人端末で電話を入れる。


10コールぐらいで向こうが出た。


「ひゃ、ひゃい。はるです。」

・・・あ、噛んだ?かわいい声、だれですかー?

「もしもし、高橋です。10日後の面接の件ですが・・・」

「面接って何よ!高橋、もうすこし言葉を選びなさい!」

あぁ、春一尉だ。

「それと臨時休暇が出たから、明日行くわよ。調整しなさい。」

「ちょっと待って、俺の予定は?」

「ターキー01のオーバーホールでここ3日は出撃なしになったわ。」


なぜ俺の予定を本人が知る前に他人が知ってる??


「チックからアリスに連絡があったわ。」


あいつか、あいつが原因なのか!


「そういうわけで、明日、午後2時くらいから買い物をして夕飯ね。お酒付きでお願い。」

「かいものですか・・・?」

「おにいとまきに乗ってると消耗品は外に出たときに買わないといけないのよ。」

「おにいとまきのPXって品揃えいいので有名ですよね?」

「だって、私サイズの服とか、かわいい下着とか、おいてないのよ!!」


(・・・それは無理もない)


これは地雷踏んだ俺が悪い。


「・・・これは失礼しました・・・服を買いに行くということでよろしいでしょうか?」

「ええ、いい店を選んでね。」


「あのーそれで、恋愛相談は夕食の時ということでしょうか?」

「あなちゃが恋愛相談(驚)・・・あぁアリスの恋愛、そうね、そう・・・そうしましょう。」

「・・・?」


「では、また明日。午後2時に前回の図書館前で」

「ええ、楽しみにしてるわ。お休み、タカハシ」


プープープー


今の最後のタカハシって言葉が、ちょっと色っぽく感じた?・・・疲れがたまってるのかもしれない。


あわててネットで調べだす。対馬に自衛隊が地方方面隊を置くようになってからショッピングモールができたので、衣類は意外と入手しやすい。

問題は彼女のサイズだ。会ったときのイメージでは140cm台半ば、体重は40kg前後だと思う。

・・・これだと子供服では?と思ったが婦人用のSサイズがギリギリ合いそうだ・・・胸と尻は難しいが


下着とかも言ってたけど、ブラは特注じゃないと無理だろう・・・たぶん。

タンクトップかチューブトップでチョイスしてもらおう。


ひばら屋に明日の予約を入れると17時から3時間個室が取れた。

ほっと安心して、ベットに横になる。

その時にはもう個人端末に連隊本部から3連休の連絡が入っていた。

明日はつぶれたが明後日と次の日は1日休みだ。何をしようかわくわくしながら眠りについた。

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