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船底に潜む思惑

艦橋には指紋認証のエレベーターが設置されていた。

定員は20人の大型のものだ。

認証登録を終えると、俺とうららは案内の船員と一緒に最下層甲板に降りていった。

「この先で与圧された区域がありますにで、耳抜きはできますか?」

うららはパイロットでお手のもの、俺も体調に問題がなければ問題ない。

プシューという音とともに開いたエレベーターの扉から潮と油と埃とカビが混ざったような臭いが吹き込んできた。

軍艦の臭いというか、懐かしきドン亀スメルというべきか。


暗い船底のはずだが無数のLEDが左は巨大なタンクで、右には柿の種のような形の金属構造物が占めているのを照らし出していた。

全長100mオーバーの銀色の巨大な柿の種が床に埋まっている感じで用途がわからないので、おそらく潜水艦関係だろう。

「右の方が潜水艦ドックです。潜水艦自体は船底から出入りします。右舷タンク二つを撤去して設置しました。」

ついてきた水夫が説明してくれた。

「出入り口はあちらの気蓋室エアーロックから入ります。」

指さす先には黄色に黒の縞模様のサイコロのような小部屋が柿の種についていた。

気蓋の入り口に近づいていくと、製造プレートが見えた。

ついているプレートは英語だったが最後に気になる一文が刻まれていた。

「MADE IN PHL」


どこだろう?たぶんフィリピンのような気がするのだが?


こんな機密兵器に海外が関わるとも思えないんだけど・・・

気蓋には指紋認識と網膜パターン認識の2つが着いていた。

両方とも登録しながら入る。

入ると部屋のライトがレッドに代わり気圧が上がっていくのがわかった。

デジタル表記をみると1気圧から2気圧に加圧されている。

おかげで少し息苦しい感じもしたがすぐに慣れた。

2気圧になるとライトがブルーに変わった。

目の前の扉のロックが外れる。

扉を開けると中には水面に浮かぶ全長100m超えの黒い潜水艦が待っていた。

「船内に水面?」

「直接船底口を通じて水が流入できます。今はシャッターを閉めてますのでつながってませんが、ご希望ならば開放してみましょうか?」

案内の水夫は何事もないようにいってみせるが、この船はダブルハル(二重底)のタンカーである。

外部船底だけでも高張力綱板で50cmはあるだろう。

乾ドックで作業しないと、こんな改造は無理のはずである。

いったい、このタンカーはこの短期間にどこで改修を行ったのか?


案内されたシャッター操作パネルはインドネシア製と書いてある。

ほかにもマレーシア、ヴェトナム、台湾の製品がそこここに散りばめられている。

・・・軍機に厳しい護衛鑑では無理な採用内容だ。

理由はたぶんコストダウンだろう。


その理由に思い至って、なぜ我々が潜水艦も与えられたのかに気づいた。


「うらら、これって統幕本部は我々に・・・」

「うん、何をさせたいか良くわかった。」


彼女も気づいたようだが、統幕本部は我々に古い兵器の改修を行わせたいのだろう。

いうまでもないが自衛隊は常に防衛費不足に悩んでいる。

装備品は特注で国内仕様。GDP1%枠も超えないように注意されている。

このためカツカツの状態で運用されているのが現状だ。


このため古くなった船の改修は重要な開発項目である。

ただし、従来の改修では、どうしても乗員数削減が難しい。

それをやれということなのではないだろうか?

そのうえでこの海外部品の導入を見ると、南シナ海での中国活動を妨害するためにASEAN諸国へ供与する可能性も考慮して作れということだと思う。


そこまでいけばこの船がどこで改修していたかは予想がつく。

おそらく台湾のドックだろう。

パーツそのものは海外に依頼していた「別計画の試験品」を輸送して据え付けた。

おそらく据え付けには船内のロボットも大活躍したのだろうが・・・そうやって超短期で作られたこの船は今、海上にいるということなのだろう。


「つまりは海外に供与する武装と自衛隊内部の改修を合わせて考えろということか。」


ここまでくるとバックにいるのがどこか判ってきた。おそらく経産省、経団連も噛んでいる。

東南アジアに寿命延長した運用可能な艦艇をばら蒔いて、日本製に慣らしたのちに新品を売り込もうというのだろう。

無料のお試しセットはそこそこ十分な性能の中古品で・・・それがこのうずしお型潜水艦かまではわからないが?

他の船が来る可能性もあるし、何より石油タンクはまだ6つ残っている。

入口さえ何とかできるなら水上船の改修も来るかもしれない。・・・何しろ、うずしお級すら内蔵しているのである。

DDではなくDE(乙型護衛艦)なら同様の方式で内蔵できてしまう。


そして小型、旧式のDEは改修の必要性や供与の可能性が高い。


「こりゃー船大工呼ばないといけないなー。」

佐藤3尉が嬉しそうに笑った。

ある意味規定を超えて好き放題改造できるこの職場は整備士にとっては夢の職場だろう。


「で、ジン私たちに、これの経理をしろということなのかしら・・・」

「その辺はチックとアリスに投げよう。」

どうせその方が正確で速いだろう。


「アリスも大変ね・・・」

「アリスもCPU増設してみない?」

「考えとく・・・」


だが、お偉方の考えが読めたおかげでほっとしたのは事実だ。

何もなしのうまい話の方がよほど怖い。

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