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特別昇進

自衛隊では定期昇進以外は特別昇進と呼ばれます。

でもって、戦争中なので戦時特別昇進で、優秀な人間はどんどん上に上がっていってます。

自衛隊そのものは将官ポストが多めといわれていますが、そのせいで戦争になった場合に前線に将官がいるということも普通に起こりうる配置になっています。

「高橋准尉、出頭しました。」

連隊長の執務室の前で大きく声を上げる。

ドアの向こうから入れ。との声がしてロックが外れる音がした。

「失礼します!」

ドアを開けるとすぐに敬礼する。

連隊長とほかに二人、一人は連隊参謀だが・・・もう一人は見たことがない?


齢の割にはけっこうガチムチの肉体・・・肩章が桜三つって陸将!! 


「ご依頼の戦闘報告書お持ちしました。」

参謀にUSBメモリーを渡すと、彼は服装を見て渋い顔をしている。

戦闘服装のままというのはまずかったか。もっとも先方も自分がせかしたというのがあるので責められないようだ。

もっとも陸将がいるのは予想外だ・・・1種夏服で来るべきだったかもしれない。


「急がせてすまないな。楽にしてくれ。」

連隊長から声をかけてきた。

「はっ!」

陸将と陸将補の前でどうやれば楽にできるのかわからないが、返事だけはしておく。

「こちらは小川陸将西部方面隊司令だ。」

現場トップじゃないですか・・・なんでまた。


「貴様が捕まえたタンカーだが、いま所有権で海自と陸自が折衝中だ。」

タンカーの所有権?

「今回の作戦はJTF-対馬ではなく陸自の作戦として海自に協力を要請した形になっている。」

そうなのか?チックに確認してみないと自信はないが、たぶんそうなのだろう。

「実際に捕獲したのは陸自だが、海自の割合を決めるのに現場の報告書が必要になってな。急がせたわけだ。」

その話の間にも報告書の要点を参謀がまとめている。

まとめたメモは陸将に手渡された。

参謀がこちらを向いて声をかけてきた。

「要点を上げると、貴様は海自の艦艇で当該水域へ移動、単機でタンカーに乗艦、独力で強襲をかけ、敵無力化を達成。捕虜の収容は海自。船の曳航も海自。ということでいいか?」

「はい、その通りです。」

俺が返事すると陸将と連隊長が話し始めた。


(陸自7の海自3か?)

(海さんは6、4といってくるでしょう。)

(・・・あとは陸上総隊の仕事だな・・・・)


「高橋准尉、ご苦労!」

西部方面隊司令から声がかかった。

「ハッ」

反射的に敬礼を決める。

「おそらくだがあの船には数十億程度の評価額がつくだろう。」

「具体的には海自に所属して補給艦に転用される予定だ。」

あのボロ船・・・いや・・・船齢が多いだけで中身は改装されまくってたか。


補給艦?


「貴様は知ってるだろう。新しいJTFーJSの飛行艇に燃料や簡易整備を行う船に改造されるはずだ。」


ああ、中のロボットもプログラム変更すれば、いくらでも多様性がありそうだったし、使えるか。


「作戦の合間の休養地点にもなる。だいぶ楽になるな。」


そういうことか・・・韓国近海で何の気兼ねもなく使い捨てられる補給船か・・・それはありがたいだろう。


「この功績を持って高橋仁准尉は、本日付けを持って3尉に任官だ。」

「おめでとう3尉。」

司令に昇進を告げられ、連隊長に祝われた。・・・どうも本当らしい。


「あと第3号防衛記念章を申請してある。明日にも届くと思う。」

なんか胸の略綬がどんどん増えてる気がするが・・・まあいいか。給料も上がるし。

「では、ゆっくり休んでくれ。」

「は、失礼します。」


連隊長の言葉に答礼して、そのまま執務室を抜け出る。

さっさと連隊本部を抜けるとすぐにPXに向かう。

3尉の服装一式と、第3種夏服を注文する。


支給以外にも持ってないと不便すぎる・・・このところで痛感していた。

もっとも今までは筋肉が育ってくると再支給申請していたので、私用の制服がいつまで着れるかは不明だ。

それでも戦闘服装から、パリッとした第3種夏服に着替えると大分気分が涼しくなった。

着替えた直後にハンガーに向かう。

入ってすぐに目に留まったらしい佐藤3尉からお祝いの声がかかった。

「おお、高橋昇進か。おめでとう。」

「ありがとうございます。佐藤3尉」

佐藤3尉は同じ3尉でも先任なので上官扱いになる。

きっちりと敬礼して感謝を示す。

「とりあえずバールは取り寄せに1月かかる。それまでは普通のバールを入れとくからAPではつかうなよ。」

「・・・はい、すみません。」

「あとツルハシとスコップも技研から金属疲労を見たいとのことで、一時的にあっち行きだ。代替品が来るまでは同じく歩兵用が入る。」

「それはきびしいです。個人用塹壕たこつぼが掘れないのは死にます。」

「一応柄の部分は鋼材で作っておくからAPでも使えるはずだ。たぶん・・・」

「あとで確認させてください」

「まあ、技研の言い分もわかるんだがな。土でなく鉄板をスコップで掘ったらなんて、想定してないから突然ポキリは嫌だろう」

「まあ、仕方ないですね」

そういうとターキー01を覗き込んだ。

今は全ての装甲を外してオーバーホール真っ最中だ。

「一週間というところですか?」

「わからん、フレームに歪があるところが見つかった。他もないか今検査中だ。とりあえずは予備APに乗っとけ。」

「予備機ってノーマルですよね?」

「一応、指揮官機で通信機だけ強化してある。」

「チックとの連絡は取りたいので戦闘時に電源お願いします。」

「了解だ。まあたまには部下の機体のスペック把握しておけ。」


フレームの歪と聞いて体の筋肉疲労のバランスのことを思い出した。

右半身の筋トレしないと・・・


佐藤3尉にお礼を言うとジムに向かった。

今日はダンベルカールとダンベルレイズ(サイド・フロント)を中心に右上半身に負荷をかけることにした。

つかうダンベルは30kgだ。

それぞれ15回3セットで上腕二頭筋、三角筋に負荷をかけていく。

そのあとはチューブトレーニングでクールダウンしながら左とのバランスを整える。

ざっと1時間でシャワーを浴びる。

・・・パンプアップが起きたせいか・・・夏服がきつい・・・もう1サイズ大きくすればよかったかな?


トレーニングが終わったのを見計らったように個人端末が鳴る。

表示名は・・・・春麗だ。


今日は2コール以内で出れた。

「はい、高橋です。」

「もしもし、春よ。昇進祝いするから、場所確保して。」

早いな・・・まだ2時間たってないぞ。

「わかりました。どれくらい呼ばれますか?」

「まず、教導団はほぼ全員。あとそっちでJTFに連れていきたい人がいればその人も。」

「?えらく大規模ですね。費用私持ちは勘弁してくださいよ。」

「安心しなさい。教導団持ちだから。」

教導団?・・・何か変だ。

「すみませんが、どなたの昇進祝いでしょうか?」

「私よ、わたし。3佐任官よ。」

「えぇ、それはおめでとうございます。」

ちょっと驚いた。自衛隊法施行規則では3佐へ任官には1尉で3年勤続が条件だが・・・まあ実戦部隊だし、自分を考えると何も言えない・・・戦時って本当に人事がむちゃくちゃになるな。


「台風が来次第、そっちに移動するから。それに合わせて日程組んで。」

「軍人の休みはお天気次第ですか・・・変わりませんねー」

幸いというか、対馬は台風銀座といってもいい場所である。

もっとも、そんな台風の日に店を開けてくれる男前な店は・・・あるか(笑)

「あと昨日の単独飛行の時に敵のドローンがコントロールアウトして自滅したんだけど・・・何かやった?」

「敵の電波中継地点つぶしました」

「助かったけど、危ないことはしてないでしょうね・・・JTF-JSに来れなくなったとかいったら、しばくからね。」

「・・・そっちより危険度は低かったですよ。」

「詳しいことは飲み会で聞かせてもらうから、日程決まったら教えて。」

「了解しました。」


通話が切れた。


でも昨日って俺、何も危険なことしてないよな?

タンカーの側面をバールとツルハシでフリークライミングして、対戦車ミサイルと機関銃の部隊を壊滅後、対戦車指向地雷を無力化して電波用のマストを破壊・・・で残敵を艦橋ごとスコップで無力化・・・巨大タンカーを拿捕。


なんか並べてみると危険がいっぱいで大活躍したように見えないこともない。

だから昇進したのか・・・納得した。


とりあえずヒバラ屋に台風の日の宴会を申し込もう。


絶対に台風で変なテンションになってる客だから、店の人が客を取り押さえられそうな店ってあそこしか知らないし。


おまけ:マニューバユニットの外観決まりました。


ラフ案に加えて副翼兼エアーブレーキ(可変翼)付きになったせいでイメージ大分変りました。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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