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タンカー捕獲?

大字造船は似てる宇から連想した架空の会社です。


「やっぱり大字造船か。」

高橋准尉は艦橋のプレートを確認して呟いた。

「造船から30年、姥船うばふねもいいところっていうか、韓国製じゃないか。」

いまは亡き大韓民国に存在した造船王手、大字造船のプレートは英語で書かれていた。

「では、韓国製に敬意を表してポッキーの刑に処する。」

プレートの製造形式に該当する設計図をデータベースから読み出す。

予想できたように艦橋は軽量化のためアルミ合金の支柱に1cm未満の鋼板貼りである。

一応艦橋にスピーカーで退避勧告はしておくが、室内戦に持ち込もうとしているのか誰も出てこない。


「ポッキー開始。」

APの左手に持ったスコップを艦橋に突き立てる。

まるで紙を突き破るように刃が容易く入り込む。

奥まで刃を突っ込むと引き抜き、そのすぐ横に突き立てる。

チックの補正のおかげで横一文字に穴が広がっていく。

ガインガイン言わせながらスコップを差し込み、穴を横に広げていく。

時折柱らしいものやコードを切った気もするが気にせずに、前面と左右側面に横穴を広げていく。

背面には手を付けず、まさにポッキーの箱のように穴を刻んでいく。


小一時間で予定作業を終わらせる。

「さて筋肉、本番開始かな。」

前面からフルパワーで押す。船のローリングに合わせて力を籠める。

「右手も後でやらないとな・・・」

体のバランスを考えながらトレーニングメニューを頭で組み立てる。

そんなことをしながら力を加え続けると大きな波がきたとき、ほんの僅かに均衡がずれて艦橋が揺れた。

波のローリングの繰り返しを利用しながら押し続けると、艦橋はじわじわと後ろに倒れ、そのまま一気にのけぞるように折れ曲がる。


「たおれーるぞー」

バキバキいいながらポッキーの箱のようにつながったまま折れ曲がる。

轟音を立てながら艦橋が船の後部甲板に倒れる。

もっとも10万トンクラスの船、艦橋を倒しても船のバランスは崩れていないので、沈没の心配はない。


念のため救急用のゴムボートを海に放り込むと海自の「くまたか」に連絡する。


「タンカーで艦橋破損事故が発生しました。。船員の保護をお願いします。あと船員は戦時法の不正工作員扱いでお願いします。」


「くまたか了解。任務開始する。」


近づいてくるくまたかを確認後、ついでなので四角く開いた甲板の穴から下層甲板目指して階段を下りていく。

このタンカーは上甲板、中間甲板、下層甲板の3つの甲板を持っていた。

下層甲板は大量のミサイルが保管されていた。

「予備の空対空ミサイルか・・・1000発はあるな」

どうもドローンが撃って戻ってきたら再装填するように準備されていたようだ。

「しかし作業員がどこにもいない・・・あれか。」

そこにはコンベアにロボットアームが数本並んでいて自動的に装填できるようラインが組まれていた。

「げ、このロボット、黄色い帝国製だ。」

日本の富士山麓の樹海に存在する外壁が黄色く塗られた工場で生産された世界一シェアNo1メーカーのロボット達は30年たっても元気で動いていた。

「さすがメイドインジャパン・・・というかターキー01も兄弟機になるのか?」

ターキー01は独自チューンのため栃木県壬生の工場で試験的に製造されている。


どうも、乗員は艦橋に残っていた分で最後だったようなので、マスト基部付近の確認をしたのちに上甲板に戻った。


甲板では時折銃声と爆発音が響き、くまたかの海兵隊が艦橋内部の鎮圧を行っていた。

戦況は一方的なようで、爆発音は音響手榴弾か閃光弾、銃声はゴム弾を使用しているようだ。

どうも、残った人間を確保して尋問したいらしい・・・5階建てビルが倒れた中で生きていた人間・・・普通に考えれば瀕死だろう。命令としては過酷なものではない。


海自の鎮圧を横目にくまたかとの間にワイヤーを張ってもらい、懸垂降下する。

やはり片腕だと微妙にバランスが崩れるせいで、操縦に余分な力みが出てしまい疲れが早い。


「ところで報告書どうします?」

くまたかでターキー01を下りようとしたらチックが声をかけてきた。

「バールの紛失理由うまくと書かないとな・・・秘密兵器スコップ強度試験コンバットプローブンも済ませたし、穏便に取り計らってもらおう。」

超硬合金のバール紛失なんてどう考えても始末書ものだ。


「でも、どっちにしろ今回も連隊本部に呼ばれるとは思います。」

「あ、2種夏服。まだ彼女に貸したままだ・・・准尉ってPXで制服買えたっけ?」

「私服としての購入は3尉からです。准尉はまだ幹部ではないので・・・」

「やばいな。1種夏服か作業服装でごまかそう。」


謝りに行くのが前提な以上、突っ込み場所は減らしたい。


「正式な報告書は捕虜尋問の後での作成になるだろうが、その前に戦術報告書は提出させられるだろうな。」


幸い記憶が飛んでいる個所はチックに聞けば問題がない分、他の人よりは楽なのだが。

くまたかの海兵隊が鎮圧を終了したのは1時間後、タンカーを曳くタグボートが来て、帰路についたのは3時間後になった。


「船員はほとんどがアフリカ人とか・・・予想外すぎる。」

帰りの船の中、意外な結果に俺はぼやいていた。

「船の運航部分はガーナとナイジェリアの船員が多いですね。中国大使館経由で船の運航を依頼されたようです。」

くまたかの海兵隊長が調査結果を報告してくれている。

「戦闘員は?」

「どうも中国人と朝鮮人らしかったのですが・・・船長以外はマスト攻防戦のミサイルのダメージで死亡していたようです。残った船長も艦橋倒壊の衝撃で重体です。いま医療班が手当してます。」

「で船長はどっち?」

「船長は中国国籍です。」

「船員、全滅させなくてよかった・・・」

おそらく船員は中国からの支援金の代わりに乗り込むことになったのだろう。

母国からの命令で乗り込んだだけらしい彼らは、本当にただの一般市民らしく有用な情報は持っていなかった。

彼らを全滅させて後から判ったら、相当後味の悪い結果になっただろう。


くまたかは経済速度で2時間ほどかけ、対馬に戻った。

港についた途端にAPキャリアーが来てターキー01は吊るされての移動になった。


APキャリアーの運転席には佐藤3尉が座っていた。

「高橋ぃ、何やったんだ?右腕全損に右足関節の軋み、おまけに左腕関節もいかれかかってる。」

「ちょっとタンカーと格闘を。」

「タンクと格闘?海上に戦車でも来たのか?」

「いえ、LRⅡ型10万トンクラスのタンカーを白兵戦で仕留めてきました。」

「前から疑ってはいたんだが・・・・実はバカだろ、お前。」


佐藤3尉の目線が真冬並みに冷たかった。

戦闘経緯を説明したら、ちょっと春の気配がきたけど・・・口が滑ってバールを投げたことを告げたら、一気に真冬に戻った。

冷や汗まみれで、スコップの使い方を話した時点で大笑いされて機嫌は直ったけど・・・艦橋やっててよかった。


ターキー01はそのままオーバーホール行きで、俺は戦術報告書の作成に入った。

佐藤3尉が書いていたバールの補充申請の方が、報告書より分厚かったのは気のせいではない。

APの腕とか足なら紙一枚なのに、どんだけ高いんだよバールと言ったら、不機嫌な佐藤3尉が「自腹で払うか。給料半年分くらいだ。」と真顔で言われたので「すみません」と尻尾巻いて逃げてきた。


戦術報告書を書いていると連隊参謀から催促の連絡が入った。

どうもタンカーの取り扱いの問題で早急に海自と交渉に入ることになったらしい。

慌てて報告書を仕上げると、戦闘服装のまま連隊本部に駆け込んだ。

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