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JTF-JP陸自分遣隊

「雨があがりましたね。」

鈴木2曹が窓を見ながら呟いた。


いつの間にか日は沈んだが、星が見えている。

ここ対馬の星空は、澄んだ空気のせいもあって東京とは比べものにならないぐらいに多くの星が見える。

例えば天の川が川といわれる理由がはっきりわかる程度には、くっきり見ることができる。

町中ですらそうのだ、山の上に行けば遙かにきれいな星空が見えるだろう。


「今から冬が星空がきれいに見える時期よね。」

春一尉も窓の外を見ながら頷く。

春から初夏にかけては大陸から黄砂や埃が飛んでくるので霞がかかってしまう。

彼女の言うように秋から冬が星空はより美しくなる。


ボトルでとった焼酎「佐藤」はまだ四分の一も減ってない。


それも主に鈴木2曹が飲んでいる。

春一尉は最初以降は殆どアルコールをとらず、食事がメインだ。

パイロットが上空に上がると一気に酔いが回るという話は聞いたことが有るが・・・MUでも同じなのだろうか?


ともあれ、鈴木2曹と話しながらJTF-日本海への分遣隊の構想はまとまってきた。


隊長機はチック搭載のターキー01、搭乗者は当然俺だ。

他に10機の(合計11機で分隊になる)装備を決める必要がある。


相談の結果、分遣隊の主任務である航空管制をメインとするため他の要素は殆ど切り捨てる形にする。


具体的には固定武装を持つのは分隊中に二機のみ、ただしM2重機関銃(キャリバーを搭載して、対地・対空を対応する。

その他の機体は、

①通信機と回転型集音機

②サーモグラフィーカメラ装備型、

③赤外線カメラ+赤外サーチライト、

④フューズドアレイアンテナ装備型、

を各二機ずつ揃える。

分隊機10機の共通装備としてC4I子機(兼分隊内専用通信機)、PSDフィジカルスモークディスチャージャー新型煙幕射出筒三門×二である。PSDは1ナノメートル以下の酸化チタンとカーボンを主原料にした煙幕で、カートリッジを上空で爆発させれば、視界、電波、赤外線に対して掩蔽効果を発揮する。

煙幕の中ではこちらも電波、赤外線を使った交信は不可能になるが音声は通常に伝わるので使い勝手がいい防御兵器である。


この編成は物理的な攻撃力は低いが、C4Iシステムの親機をチックが代行することで、観測についてはきわめて高い能力を有することになる。

攻撃力・防御力についてもドローンをチックが操作することで、直衛やピケット鑑がわりの電波発生源にすることである程度対応が可能だ。

捕獲したドローンを数台持ち出して改造する事になるだろう。


「まあいい部隊になりそうね。」

陸自に出すプレゼン用のコンセプトシートを見ながら春一尉は満足そうに頷いた。


「春一尉は・」

そこでいきなり俺のほっぺたは引っ張られた。

「プライベート!もう、いい加減になれなさいよ。」

「では、春さんは・・・」

「名前の方がすき」

「うららさんは」

俺の返事に春一尉は、小さくガッツポーズした。

鈴木2曹のあきれ目線がどんどん強くなってる。

見た目はマッチョが小学生にほっぺを引っ張られているのである。

「この後どうなさるのですか?」

「考えてないけど、一緒にホテルでも行く?」

「・・・」

「いつでも肉体関係教えるって言ってたじゃない。」

「恋愛関係の解説です!!」

目の前で鈴木2曹がビくっとしたが、俺のつっこみで溜息を大きく吐いた。


「仲よろしいんですね。・・・」

あきれた声で鈴木2曹の声が漏れ出た。

「前にAIの教育方針でもめたことがあってな。」

「AI?」

「ストップ!!」

春一尉は両手で口を押さえてきた。


(なにトップシークレット話してるのよ・・・)

(大丈夫、ごまかせるから)

囁きで意思伝達する。


「いやそのときにAIの搭乗員に対する感情が恋愛感情に近いという話になって、箱入り娘のうららさんにはそれがうまくつたわらなかったんだ。」

「それで、恋愛感情を解説するですか。」


「ああ、ちなみにチックには確認してみたが正しいらしい。」

「・・・マッチョと人形の愛・・・」

鈴木2曹の目が泳いで遠くを見ているようだ。


「おーい、帰ってこーい。」

「ハッ、すみません。」

「いや、いいけどね。もう春一尉でなれた。」


それで、納得はしてくれたようだ。

「冗談はともかく、うららさんはどうするの。」

「ホテルとまって明日帰還。」

「じゃあホテルまで送りますよ。」

「ちなみに部屋はツインです。」

いきなり真顔で切り出した。

・・・


「護衛が必要だなーーどうしようかなーーー?」

あの目は受けないと教導団に連絡するっていう目だ。


「わかりました。今晩の護衛引き受けます。」

「ありがとう。助かるわ。」

鈴木2曹を基地に送った後にホテルに入るとようやく春一尉が本音を切り出した。


「アリスが最近、精神が安定しなくてアップダウンが激しいの。今晩相談に乗ってあげてくれない?」


やっぱりか・・・まあ、色っぽい話だとは思ってなかったからいいんですけどね。


補足説明)C4Iシステム:2010年代ではまだC4I2と呼ばれていたが、Artificial intelligence<人工知能>の組み入れとともにC4Iシステムの名称に戻った。


他の要素はCommand〈指揮〉 Control〈統制〉Communication〈通信〉 Computers〈コンピュータ〉 Intelligence〈情報〉 Interoperability〈相互運用性〉


火器管制から(簡単に言えば射程内で測定子機がある地域ならどこでも至近距離のような感覚で射撃できる。着弾の成否はすぐにわかり補正もすぐにできるのですごく便利。)

戦術支援(部隊配置や火力支援)、作戦支援(部隊移動指示や装備の指示)、業務支援(報告書の提出から兵站物資の申請、輸送指示まで)まで幅広い情報が扱われる。


この頃にはリンク16と呼ばれる戦術級通信システムを陸海空で採用しており、アリスやチックが会話しているのもこのリンクを通じてである。

子機には大出力の通信機は省かれ、軽量化、低コスト化されている、子機の観測データは通常の通信で部隊内で暗号共有化され、部隊内の親機からリンク16を通じてC4Iシステムに計上される。

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