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鈴木と佐藤

飲んでるのは黒佐藤の方です。白佐藤はロック向けの感じがするので

鈴木2曹のフルネームは鈴木恵美です。

今後名前が呼ばれることがあるか不安ですが・・・一応決めてありますので。

朝鮮半島での戦闘を前提に考えると、必要な能力がある。

それは現在では殆ど使われていないハングルといわれる言語の読解能力だ。

作戦域の多くでは簡体語の看板に置き換わっているだろうが、山の中の看板までは変わっていない。

俺たちの作戦を考えるとそんな山中の突破も起こりうる。

基本的には画像認証による翻訳に頼ることになるが、実際に使える人間がいればなお良い。

実は鈴木2曹はハングルが読める。

彼女はチュルスンのファンで彼のトレーニング本を読むために勉強したことがあるらしい。

彼の言葉として「薬やサプリメントは何もとってないよ。お酒飲まなきゃいけないしね。アルコールとか何も気にしてない。フィットネスの三大要素は酒と女とタバコさ!hahaha」

というアルファメイル(リア充)精神の塊だがその分追い込みは激しいらしく、一日3000回以上のアップリフトをこなす等の伝説を持っている。

その結果としてMusclemania World Championship Bodybuilding Competition 2012 ラスベガス大会 では優勝している。

ポージングにロボットダンスを取り入れる等エンターテイメント性が高く、個人的には好きとは言えないが、毎晩彼女を変えるといわれるクラブナンパ師に対するひがみといわれるのもなんなので、ノーコメントを通している。


ともあれ、彼がアメリカで書いたトレーニング書は韓国でベストセラーになり鈴木2曹はその本をよむためにハングルを学んだらしい。

古典以上に使わない言語を知っているというのもなんだが、そのうちルーン文字扱いになりそうだ。


ともあれ、夕方、雨のそぼ降る中をヒバラ屋に到着した。

「Hey らっしゃい! 兄貴!」

引き戸を開けると威勢のいい声が響いてきた。

「姐御がお待ちですよ。」

三浦三郎がいい笑顔で個室の方に案内してくれる。

「待たせたかな?」

「先ほどお着きで、すでにお通しと芋焼酎で飲み始めてます。」

まあ、プライベートとは言ったから飲んでてもおかしくはないんだけど、人事の話できるのかな?

「姐御、兄貴が到着しました。」

「ああ、ご苦労、ネギマ塩で3人分追加頼む。」

「ネギマ塩3人分ですね。ありがとうございます。」

「それと馬刺しと刺身の盛り合わせ。追加で焼酎、ボトルでもってきてくれ。」

??

なぜここに春一尉がいる?

彼女は固まった俺を笑うように見上げると

「早く座れ、今日はプライベートなんだろう」

いや、普通に怖いから・・・

「理由は簡単だ。チックからアリスを通して今日部隊員の面接があると聞いた。」

チックか!・・・考えてみればそこから情報が流れたのは自然だ。

「で、AP分隊の分隊副長候補を見に来たというわけだ。」

彼女はいたずらっ子のように口をとがらせながら

「呼んでくれれば、すぐ飲みに来たのに、水臭いぞ。AP分隊とMU中隊は密接な連携が必要なんだ。私と合う合わないは結構大きい問題なんだが。」

たしかに言ってることはわかるが・・・昨日の夜、決めたことをすぐに察知して佐渡から飛んでくるってどれだけ飲みたいんだよ。と心の中で突っ込む。

「申し訳ありません。ちょうど天気の関係で今日が都合よいと「昨晩」決まりましたのでスケジュール的に無理だろうと判断していました。」

「そういえば佐渡にいたが・・・MUで飛べば50分もかからないぞ。600km程度だったし」


・・・飛行機乗りの距離感覚は狂ってると思う。

というか私用にMU使うなよ。いや一応公用なのか?


「まあ、座って飲め。今日は芋焼酎でゆっくり飲んでいるから大丈夫だ。」

運ばれてきた焼酎は「佐藤」、 黒千代香くろじょかと呼ばれる酒器が卓上コンロとセットで出てきた。ポットに入った水もついてきた。


彼女は手慣れた様子で水と焼酎を黒千代香に入れるとコンロの上に掛けた。

燗がつくまでの間、今作っている戦訓レポートをMU乗りの目から見てもらうため、タブレットに映し出して意見を求める。彼女はなぜかちょっと不満そうであった。


芋焼酎に燗がつく前に鈴木2曹の到着が告げられ、案内されてきた。

「あら、高橋曹長。そちらの可愛い方はどなたでしょうか?」

鈴木2曹が興味津々で尋ねてきた。


「ああ、彼女は・・・」


ようやく、ここまで来て彼女が制服ではなく私服で前回買った服を着ていたことに気付いた。

チェリーピンクのブラウスに幅広のベルト、赤地の上にレース付きのフレアスカート。

白のベレー帽と一緒にショッピングモールで選んだ記憶がある。


(不満顔はそれが原因か・・・リア充は程遠いな・・・)


「空自の春一尉、通称のアリスリーダーの方が有名だな。」

「アリスリーダー・・・って教導団の中隊長ですか。なんでそんな方がここに?」

「今回の相談事と関係があるから、これから話すつもりだ。飲みながら話そう。」

そういいながらタブレットにテキストを打ち込む。


=似合いすぎて自然だったので、褒め忘れました。良い買い物でしたね。=


そのテキストを春一尉だけ見えるようにタブレットを向けると、ようやく彼女の不満顔が引っ込んだ。


つまみを持ってきた三郎に追加の注文を出すと、本題に入った。

「実は今度新しい統合任務部隊が作られる。コードは日本海だ。」

鈴木2曹は芋焼酎のお湯割りを猪口で飲んでいたが興味津々になった。


「基本任務は韓国国内でのPKO、警察活動も含む。」

「それって・・・憲法大丈夫ですか?」

「亡命韓国政府からの依頼ということでギリギリセーフのはずだ。あとは国会議員のお仕事になる。」

PKO法案は何回か通ってるし、戦闘と書かずに警察活動もしくは取締りで日報を書けば何とかなるだろう。

「警察活動の中には日本国内に直接影響する犯罪の取り締まりも含まれることになる。早い話がミサイル基地、ドローン集積地、空港への攻撃だな。」

「それは派手ですね。・・・むちゃくちゃ危険ですけど。」

「空自はMU1個中隊、を教導団から抽出。海自は移動基地になるUS-3を4機提示、でわが陸自はサポート部隊として航空管制官を主任務とするAP分隊をJTF-対馬から抽出となった。ここまでで質問あるか?」

ここで少し間をおいて鈴木2曹に状況を理解してもらった。


「まず分隊長として俺の赴任は決まっているんだが、航空管制官としての仕事が大きいので実戦で指揮のとれる分隊長役が必要だ。ということで鈴木2曹、副長を受けてくれないか?」

「自分がですかぁー・・・」

彼女の顔が真剣に悩み始めた。危険と将来性、両方を天秤にかけているようだ。


「受けてもらった時点で1曹に昇格してもらう。その後は俺が三尉になった時点で曹長になってもらい

JTF-日本海での最先任曹長になってもらう予定だからな。」

「え?」

「いや、パイロット連中は基本士官だから曹士ってうちの部隊だけなんだよ。」

サポート用の整備部隊には曹士はいるが戦闘序列からは外れることになる。


「最先任曹長ですか・・・」

彼女の口調には若干のあこがれが入っている。内実はどうあれ下士官の憧れの名称である。

「わかりました。受けます。」

「ではこのタブレットを見てくれ、今回の部隊編成について意見を聞きたい。」

彼女にタブレットを向けた直前に、春一尉の右手が動き画面に触れたのが見えた。


「あのー、これはどうコメントすればいいのでしょうか?」

そこには96ポでさっき入力したテキストが写し出されていた・・・


・・・


ちょっと気まずい間があったが、何とかスルーして昨夜作ったファイルを開けて鈴木2曹に見せる。

その横では春一尉がチシャ猫のような顔で笑いを堪えていた。


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