表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/62

恋は突然に(略奪愛W)

気の向くままに書きためていた作品です。


一応続きを書くつもりはあります。




夏の終わりを告げる入道雲が大きく育っていた。

その入道雲を覆い隠すように巨大な銀色のエイが空を飛んでいた。

全長300m、尻尾も入れれば500mはあるだろう。

全幅は600m、、マンタのような格好をした物体が空に浮かんでいる。

31式甲殻飛行母艦1番艦「おにいとまき」 所属は海上自衛隊でこれでも護衛艦である。

「おにいとまき」から光の粒がポロポロと産みおろされる。

落ちた光の粒はすぐに回転して体勢を立て直すと、きれいに編隊を組んで日本海上を北上していく。


2030年代の戦争はドローンやAI搭載型無人機が制空戦の主力を担っていた。

何しろドローンは安い。維持費も格安で、航続距離についても漁船を空母のように使い、中継基地も兼ねさせれば格安の海洋航空戦力になる。


ミサイル自体にAIを搭載し自動識別性能が向上するにつれ、ステルス機すらドローン搭載の光学センサー型ミサイルにより撃墜される事件が起こり、高額な航空機の運用は限定された局面に限られていた。

何しろいくら高性能の戦闘機でも100機単位のミサイル付ドローンに対しては逃げをうつしかない。


そんな中、ドローンに機銃や小型爆弾を積み込んだ攻撃型とも言うべきタイプが量産され、地上侵攻の補助に使われるようになってきた。


これにいたり、各国は対ドローン兵器の開発に総力をあげるのだが、ドローン兵器はコストパフォーマンスが良く、撃墜されても損害は軽微ですみ、むしろ金額的には対抗兵器の方が高価で、運用に気を使うという状況になっていた。

ドローン戦の特徴は安い機体で大量に、好きな場所、好きな時間に攻撃をかけることであり、全周防衛を準備するのは巨額の費用がかかることから、攻勢側優位を覆せないと言われていた。


このため自衛隊は一時、限定攻勢のプランを練ったが違憲との判断が出るに至って、防衛戦について根本から考え直すことになった。


その結果生まれたのが、甲殻飛行母艦「あかえい」であり「おにいとまき」はその発展拡大型にあたる。

「あかえい」はヘリウムガスを使用した巨大な飛行船であり高度20000mというドローンの苦手な超高空から広域に対して電波探査を行うことができる。


そして不明な電波源に対して時速300kmで急行しECMもしくは艦載型機動兵器「高機動性外骨格」(通称ManueberUnit MU)を装着した搭乗員が破壊することで現代日本の国境防衛の最前線を担っている。


そしてもう一つが最前線に対する最終防衛線の装備「動力内蔵型装甲服(Armored Puppet通称AP)」だ。前者がサイバーダイン社のHALの流れをくむ筋電流測定に基づく、思考制御型、機動補助がメインなのに対して、こちらは、ベースはスケルトニクス社のスケルトニクス(人力型動作拡張装置)。それに電動自転車のパワーアシストシステムを組み込んだ、至って簡単な仕組み。

それ故に安価で量産でき、軽自動車と値段が変わらない。すでに4個普通科連隊が乗り換えがすんだ。

防護力は12.7mm機銃まで、対人地雷や手榴弾だと四肢が破壊されるが搭乗員は無事という生存性で、対機甲部隊には不足だがソフトスキンや対ドローン戦には十分で、自衛隊はこの機種を激戦地に大量に配置することで防衛を優位に進めていた。


挿絵(By みてみん)


護衛艦「おにいとまき」をまぶしそうに見上げる一機の「動力内蔵型装甲服」がいた。

ここは対馬駐屯地、第1級防衛地域だ。

見上げるAPは明らかに通常型とは異なった。

発電機用のロータリーエンジンも49CCではなく90CCに大型化され、なによりも直径20cm全長150cmに及ぶ巨大な葉巻のような装置が右肩に搭載されていた。

葉巻は至る所にコイルや排熱用のファンが見えることから銃器ではないようだが、武装独特の重々しい雰囲気を漂わせていた。

「こちらターキー01、ワンダーランドへ、作戦位置についた。オクレ」

「こちらワンダーランド、ターキー01へ受信確認、貴官の管制はアリス01になる。オクレ」

「こちらアリス01、ターキー01へ、シグナル0から6に変更オクレ」

「ターキー01、アリス01へシグナル6に変更、終了、オクレ」

「こちらアリス01、搭乗、春一尉。ようこそターキー01、トリプルエース(100機以上の撃墜者)が後衛は頼もしい。当てにしてるぞ。オクレ」

「こちらターキー01搭乗、高橋曹長。教導隊トップのミスアリスと組めるとは光栄だ。オクレ」

「アリス01より管制各員へ状況報告、朝鮮方面からUFO(Unidetifed Flying Object)50。Banditと認定。迎撃する。支援部隊は打ちもらしの進入阻入、接敵エンゲージは3分後 カウント30から開始。オクレ」

「ターキー01受領、オーバー」


高橋曹長は通信を自動に変更すると機体に話しかけた。

「さてチック、準備はいいな。」

人工音声、明らかに若い男性ボイスが返答する。

「いつでもいけます。ご命令を。」

「カウント5からフル稼働だ。こっちに回さなくてもいい。」

「数が多いですが大丈夫でしょうか?」

「相手はアリス姫だ。回ってくるのは多くて十機だろう。少なければジャックしろ。」

「了解、カウント始まりました。」

チックの声の代わりに無機的な女性ボイスがスピーカーから流れ出る。

「30、29、28・・・・10・・・7、6、5」

「電力補助カット。アシストモーター停止。CPU5列並列稼働。01Rユニット発電最大。FUEL80%

バッテリー残量15分。」

一気に高橋曹長にかかるAPの抵抗が重くなる。アシストモーターに回していた分の電力を演算用に回したのだから当然だ。

「今日はいい筋トレ日和びよりだぜ。」

室温調整も止まった機内で汗を吹き出しながら高橋はうそぶく。

あきれたことにAPの動きは全くと言っていいほど変化していない。

APそのものは80kg程度、それに自分の体重80kg、加えて動作拡大倍率1.5倍。

動作拡大を考えると全身に160kgをつけて動いているようなものだ。

普通の人間なら身動き一つとれない状況で、彼は走り、動いている。走る速度も40kmを下らない。

「1、エンゲージ」

スピーカーから女性の音声が途切れる。

撃墜されたわけではない。詳しい情報がHUDヘッドアップディスプレイに通信で投射されている。

「チック解析!」

「Q.クイック アイデンテファイ完了。波長24(ふたよん)暗号化有、デコード、TYPE CH0210準拠、カウンタープログラム準備します。」

「アリス01よりターキー01へバンデット5機突破、機銃搭載型、推定2式端子!対応求む。オーバー」

高橋曹長は2式と聞いて眉をひそめた。

あれは1m四方ぐらいの大きさに12・7mm機銃を積んだ奴だが航続距離はさほどでもないプロペラ機だ。

機動性が高く当てるのが面倒な奴だ。それなのにALICE中隊は45機も落としている。もうちょっと回ってくるかと思ったが流石だ。


「チック最適迎撃点の算出と主砲充電。」

「演算完了HUD表示。」

「500m先か、チック、40秒で支度しな!」

「冗談が言えるならまだ平気ですね。電力すべて主砲チャージに回します。」

血も涙もないAIの言葉に心撃たれながら高橋曹長は筋トレを続けた。

高橋曹長に変わりチックが状況を音声確認する。


「予定ポイント到着、敵方位確認。完了、照準。照射。敵4機支配、一機抵抗、AI搭載型自律タイプだと推定します。指示願います。」

HUDにはその一機の後ろに友軍機が近づいていた。

「放っておこう。アリス姫がきてる。」

その言葉が終わる前に銃声がして最後の一機は破壊された。

アリス機は攻撃の瞬間に垂直に回避したドローンを追って直角に上昇した・・・

あれがT型ターボファンを装着した高機動型か・・・嘘か誠か旋回半径10mというのも冗談とは思えなかった。

アリス01はそのまま木の葉のように音も立てずに目の前に着地した。


挿絵(By みてみん)


「こちらターキー01、アリス01へ、支援ありがとう。助かった。オクレ」

「こちらアリス01、ターキー01へこちらこそ5機もまわしてすまない。ほかの4機は廬獲したのか?オクレ」

「こちらターキー01、現在コントール中、指定位置に着陸できる。指示求む。最後の一機はAI搭載の新型と思われる。残骸の回収を提案する。オクレ」

「ワンダーランドから第8師団に要請がいった。回収部隊が出るようだ。提案感謝する。ターキー01オーバー」

「まってアリス01!」


突然チックが割り込んできた。


「回線が混戦しているようだな、誰の声だ?」

「私はチック、ターキー01搭載の人工知能です。」

勝手にしゃべりだしたチックに俺は混乱した。

いままでこんなことなかったんだが?

「その・・・アリス01、あなたは美しい。惚れました。愛してます。つき合ってください。」

「高橋曹長、これは何の冗談かな?」

春一尉の声が冷たい。やばい怒ってる。

「いいえ春一尉殿、人工知能の故障です。チックやめろ。相手は上官だ。」

「いいえ高橋、アリス01には階級はありません。私に階級がないように。」


チックはそのままファックスのような音を流すと通信を続けた。

もしかしてチックは、機体に恋したのか?あり得るんだろうか。

続いてスピーカーから流れてきた音声は俺たちを驚愕させた。


「友達からでいいなら。」


響いた感情のない無機質な女性ボイスはカウントダウンと同じアリス01のものだった。


あまりに衝撃的な事態に春一尉も俺も石化して対応がとれず、一旦帰投ということになった。


今後のため、お互いの個人端末のアドレスを交換して別れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ