ショートショート006 関心
ひとつの独裁国家があった。
その国は、民衆の貧しさになどはいっさい目を向けない一方で、化学兵器やミサイルを作り、大国たちとはり合おうとしていた。
大国はその国家に対し、圧力をかけるなどの行動で対処していた。
その独裁国家が、ある日ついにミサイルを発射した。それはどうやら威嚇射撃だったようで、すぐに自爆して海に落ちた。
だが、圧力がかかっている中でのこの行動に対し、すぐ近くの国々の国民たちは大騒ぎした。
ある者は「ついに戦争が始まるのではないか」とおそれおののき、ある者は「責任は政府にある」と喚き散らし、ある者は「そんなこと言って、どうせ飛んで来ないさ」と強情を張り、ある者は「飛んできたら私が打ち返すから大丈夫」などとジョークを飛ばした。
反応は様々だったが、いずれにせよみんな大きな関心を持って、事の行く末を見守っていた。
その頃、この事件について、遠く離れた国々の人々はこんな風に話していた。
「なあ、戦争が始まりそうだぜ」
「ふうん、そうかい。まあ、気にすることはないさ。しょせん、遠くのできごとだろう。よくあることじゃないか。平和なこの国で暮らす僕たちには、関係のない話だよ」