41 同業者
時刻は深夜1時。場所はベンの屋敷の前。
眠い目を擦りながらも、フィオナは来訪者を待っていた。そう、都合の悪い来訪者の歓迎会だ。
ベンの屋敷は庭と呼べるようなエリアは殆どなく、門をくぐったらすぐに玄関だ。これは貴族としては珍しい作りであり、ベンがあまり格式張ったものを好まない性格が要因となっている。
フィオナは玄関前の段差に座り待っている。
何故フィオナは今日に辺りを付けたかというと勘だ。そう、勘。強いて言うならば昼にあった会合での二人の殺気が思った以上に膨れ上がっていたからだ。
近くにあった石を弄って遊ぶフィオナ。
その状態にありながらも常に気を巡らせており、不意を突かれることも無さそうだ。
(ここら辺に罠とか仕掛けておけば一瞬で殺せるのに)
フィオナのこの提案は瞬間でベンに拒否されていた。
あるか分からない襲撃対策での罠は過剰防衛もいいところ。さらに言うならば、フィオナは自分で仕掛けた罠を解除出来ない。
つまり誰かが犠牲にならないと解除されない罠というわけだ。
それを家に仕掛ける……。正気の沙汰ではない。
フィオナが顔を上げる。弄っていた石を投げ捨て、両手に威力を抑えまくった魔法陣を展開する。彼女はこの暗闇の中、何かを感じ取った。
「どちら様で?」
「こんな時間に来るんだ。客には見えないだろう?」
暗闇に問いかけたフィオナ。その返事をしたその者はゆっくりとその姿を現す。
黒い髪に黒い服。黒い仮面をつけて、闇夜に溶けているかのように錯覚するほどだ。殆どの情報は分からないが、声の高さと胸部の膨らみから相手は女性ということだけは分かる。
「殺し屋の方で?」
「いや、違う違う。傭兵さ、単なる傭兵」
「傭兵は戦争の専門家だろ? なんで暗殺染みたことなんか」
とここまで言ってフィオナは気付く。あ、これブーメランだと。
本来の傭兵として考えると、どう考えても護衛よりも暗殺のようがまだ外れていない。
「でもメイドさん。君一人じゃどうしようもないでしょ? 道譲ってくんない?」
傍から見れば、小っこいメイド。その傷のない肌、小さな体躯から見ても荒事担当には見えない。むしろメイドというよりお嬢様のようだ。
この来訪者も同じ感想を抱く。
「舐めないで下さい。あなた一人くらいなら余裕です」
「へー。じゃあ、その自信の理由を見せてもらおうかなッ!」
投げられたナイフをフィオナは最小限の動きで避ける。
背後でガラスが割れた音が聞こえる。だがフィオナも相手もそんなこと気にも留めない。
フィオナの右手の魔法陣から魔力によってできた鎖が6本ほど発射される。その半分をナイフで弾き、2本を身体をよじって回避。最後の一本を掴む。
「ほらッ!!」
掴んだ鎖を力任せに引っ張り、フィオナを自分の間合いに入れようとする。だが、フィオナはすぐに鎖を切り離す。
一連の攻撃の流れが終わり、静寂が二人を包む。
「中々やるね傭兵さん」
「あんたこそね」
傭兵こと、キリアは頭の中で後悔する。
口では余裕を持っているように答えているが、分が悪すぎる戦いということを理解した。なんせまだフィオナは全力を出して居ない。それなのに、キリアは幾つかの綱渡りをさせられている。
もし、鎖が10本だったら。もし鎖を掴んだ瞬間に魔力による細工がされていたら。その全てがフィオナがしようと思ったら出来たことであり、あえてしなかったことである。
フィオナはキリアがそんなことを考えているとは露知らず、足元から土を操り強襲する。
足元が不自然に動いたことを感じ取ったキリアだったが、時すでに遅し。跳んで宙に逃げようとしたが、土に絡めとられて足を縫い付けられる。
さらにその上から先ほどの鎖で何重にも縛られる。
最後にフィオナが近づいてキリアの心臓近くに魔法陣を埋め込めば完成だ。これでキリアはもう処刑を待つだけの囚人となった。
「私を殺さない方がいいわよ」
「なんで?」
「私は傭兵団に所属している。そして私の夫が団長。もし私を殺したら地の果てまで追ってあんたを殺しに来るわ」
「ふーん。ちなみにその傭兵団の名前は?」
余裕の崩れないフィオナに苛立つキリアだが、この余裕はブラフだと信じ切っている彼女は自慢に話す。
「ヘレ・ザーゲよ」
(知らねぇ……)
「へ、へぇ」
「だから、私を見逃しなさい。そうしたらあなたの命ぐらい助けてあげるわよ」
傭兵団の名前でビビったと思ったキリアは饒舌に話す。だが、フィオナが戸惑っているのは恐いからではない。知らないからだ。
「まあ、殺すけどね」
フィオナは手を握りしめる。それと同時に魔法陣が爆発。最小限に抑えた爆発は小さな悲鳴をかき消し、彼女の心臓部分一帯を消し飛ばす。
(いや当たり前なんだけど傭兵って俺以外にもいたんだね。ヘレ・ザーゲのついでにクロエに聞いとこ)
やっと眠れる。と呟きながら部屋に戻るフィオナ。最悪なことになった庭の後始末もしないまま。
朝、ベンが悲鳴にならない悲鳴を上げたのは当然か。
艦これのイベントが走破できるか心配になってきた今日この頃。
テストに揉まれ、先生に揉まれ、後輩に舐められ白髪の数が二次関数的に増えてまいりました。精神もまいりそうです笑
しかし、もうすぐガキ使ということでなんとか頑張れそうです。




