27 虐殺
ウル王国。この大陸の中央に存在している国。そのため一時期は3面攻勢をし、その各地の戦線で勝利をおさめていたこともあった。だがそれは昔の話。今は旧アルカディア王国の土地で国力を増強した各国と対等に戦えていない状態であった。
そんな敗色の濃い国の王の間。そこにフィオナはいた。今回の依頼は王からの直々の依頼だった。
依頼というのは依頼主の身分、立場によって報酬と難易度が分かると言われている。一国の王からの依頼となれば、報酬も難易度も最上級ということになる。
だが、フィオナには大体の依頼の内容は分かっていた。フィオナには強力な協力者であるクロエがいるのだから。
「今回の依頼内容はぺトラ公国及び、メンフィス共和国の合同部隊の殲滅だ」
フィオナは内心ほらきた、と思っていた。クロエ曰く、最近のぺトラ公国とメンフィス共和国の動向が気になるという情報は入ってきていた。
「北と東北と北西から3つの部隊が進軍をしている。再三の戦争でわが軍は疲労困憊だ。まともに当たっても勝ち目がない。そのため、東北と北西にわが軍の4割と4割。北に2割の軍隊を派遣した。お前には北の軍隊の援護をし、最終的には殲滅をしてもらいたい」
「思ったよりも簡単そうで安心しました」
「そう油断するな。敵国の北の軍は本陣だ。ソレールが同行しているだろう。さらに未確認部隊の情報も挙がっている。」
フィオナは一応、頭の片隅にその情報を転がしておく。
「依頼内容を確認します。北の敵本陣を味方部隊と共同して殲滅すればいいんですね?」
「大体そんな感じだ。詳しい内容は現地の指揮官であるカラミティーのトルナードに聞くがいい」
「了解です。それでは今すぐ行くので馬車をお願いします」
▽
フィオナは馬車の中で依頼内容をを反復していた。意外と真面目である。
未確認部隊。改めて思い返すと、言葉の響きか分からない物への恐怖か不安が拭えなかった。ここ2週間で各地でフィオナは猛威を振るっていた。もしかすると、対フィオナ部隊ということも
————まあ、そんなわけないか。
フィオナは自分で想像していたことを一蹴した。まるであり得ないことだと。
「すいません、私がいけるのはここまでです」
馬車の中でくつろいでいたフィオナに御者が話しかける。
「どういうことでしょうか?」
「ここから先は温度が高すぎて、馬が行きたがりません」
といわれ、フィオナは外に出る。と全身から汗が噴き出してくる。暑い。いや、暑いなんてレベルではない。最前線からまだ距離があるのにその熱がここにまで届いているのだ。
フィオナは御者に帰っていいことを伝え、歩いて戦場に向かう。
戦場。そこは地獄であり、天国である。弱い者にとっては地獄であるが強い者には天国である。多少例外はあるが。
だが、今までの戦場がぬるく思えるぐらいこの戦場は地獄であった。この世の理不尽を詰め込んだような戦場。これは戦争ではなく一方的な虐殺ではないのか? フィオナはこの戦場を見て思った。
天からは10匹のドラゴンが火のブレスを吐き出し、地にいる人間を燃やし捨てている。地では燃やされなかった人間を人間が虐殺をしている。戦線、陣形、そんなものは無い。ただの暴力の限りを尽くしている集団とサンドバックにされている集団がいるだけだ。
フィオナは高台からその光景を眺めて絶句していた。が無理矢理回復させ、指揮官の元へ向かう。
「どうも、援軍のフィオナです」
「あなたが援軍の傭兵ですか。私はカラミティーのトルナードといいます。早速ですが、ただいまこの軍は壊滅状態です。かろうじて要所は守り切れていますが、この本陣まで来るのも時間の問題です。そのため、あなたにしてもらいことは2つ。天を闊歩しているドラゴンの始末と、敵の一掃です」
「なるほど、了解しました。まずはドラゴンからいきましょうか」
といいフィオナはその場で魔法陣を起動させ、魔法を放つ準備をする。
きっとこの場にフィオナしかいない場合の方が楽だったのだろう。飛べるのだから。しかし味方がいる以上、羽を広げるなんて以ての外だ。
ベースは光の柱。それに闇魔法も加えて、形状を変化させる。すると、みるみるうちに魔法陣が小さくなっていく。それに反比例して魔力の密度が大きくなっていく。フィオナは先頭にいるドラゴンに狙いを定め、魔法を放つ。
フィオナの放った魔法は大気を貫き、最前線で猛威を振るっているドラゴンの頭部を貫通する。そのまま後ろにいたドラゴンの胸部にも直撃する。二匹が地に落ち、遅れてやってきた魔法の発射音が他の飛んでいたドラゴンの耳に届く。
「おい! 気を付けろ。ドラゴンが落ちるぞ」
「うそ……だろ?」
地の戦場では、ドラゴンが落とされたことによる恐怖が連合軍に伝わり、ウル王国の軍はここにきてようやく陣形を整え始める。
ドラゴンは同胞が殺されたことに激昂し、フィオナの元へ一直線に向かって来る。
フィオナはさっきと同じ魔法を使うことを諦め、普段の10倍はある氷の槍を数十本生み出し撃ち出す。その姿はまるでミサイルのようにドラゴン達を追尾し、身体に突き刺さる。
全身を刺されたドラゴンは頭を打ちぬかれたドラゴンと全く同じ末路を辿る。
激昂せず、遠くに居たドラゴン達は我先にと逃げ出したがさっきの獲物に満足せずにいた氷の槍に目を付けられ、全身をハリネズミにしてゆっくりと落ちて行った。




