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25 罠

「痛っ!」


 フィオナが目を覚ますと、そこは牢屋だった。何者も拒み、入れず出ることも叶わない鋼の部屋。

 普通の人がいきなり牢屋に閉じ込められるとどうなるだろうか? 怖がる。発狂する。壊れる。フィオナがいたって冷静に対処できたのはまるで夢のようだと思っていたからだろう。

 それと傭兵として非日常が日常となり耐性ができたのも大きい。フィオナは手首にはめられた手錠を忌々しそうに見る。


 フィオナはなぜこうなったのか、それは過去にさかのぼる。



 フィオナ日常は一週間代り映えのない依頼をこなす『日常』になっていた。依頼内容も戦場を荒らすだけ。依頼はすでに人の欲色に染まっている。

 フィオナの今回の依頼はアルカディア王国が依頼主だった。まるでつまらない依頼。フィオナは少し飽きていた。


「今回の依頼は………」


 フィオナは一週間前のクロエとの疲れるが楽しい休日を思い返していた。

 あの日はすごく楽しかった。クロエと一緒に居られるのが嬉しかった。そして土地を買ったあとの妖精たちの喜び具合も素晴らしく、頑張ったかいがあった。それもそのはず、妖精にとってこの事実とは、ようやく自分の住処を保障してもらえるというのだから。


 そのあとのスキルの練習も、普段のフィオナなら泣く泣くしていただろう。しかし内容はまさかの実習。前世の体育感覚で受けることができた。それにクロエとの2人だけの練習。嫌と思うのも罰当たりだろう。


「………となっております。って聞いてますか?」


 フィオナの妄想を依頼の説明者は遮る。フィオナはイラッとするが、聞いていなかったのは確かだ。だが、おおまかな内容は把握していた。


「聞いていましたよ。それで、俺はどうすれば?」


「詳しいことはこの町の中心近くにあるカフェでお願いします」


「場所移動をしたくありません。あなたが話してください」


「すいません。私には知らされてないんですよ」


 普段のフィオナなら絶対に行かなかっただろう。だが、昨日の楽しさ。そして、依頼説明者の懇願するような表情に絆されてしまったのだ。

「ビジネスに感情が入ったら痛い目を見てしまうな」

 奇しくも、フィオナにもその言葉が適用されてしまう。


 フィオナがカフェに向かっている途中、急に視界がぼやける。三半規管が狂っていく。足だけでは立てず、腕を地面についたのと同時に意識がフィオナから手放される。



 そして、目を覚ますとこれだ。

 スキルにある危険察知はこういう時には使えない。危険察知というスキルは自分の身に対する危険が迫ってくると、低確率で頭の中でアラームがキンキンと鳴り響くスキル。レベルが上がれば、危険を知らせてくれる可能性と知らせてくれる危険のレベルが下がっていく。

 ————仮に現代でこのスキルが使えるとしよう。傷害事件や事故にあう確率は確実に下がるだろう。もちろん毒ガスなどにも対応できる。なら、睡眠薬を入れられていた場合も? PM2.5にも? 答えは否だ。危険察知が対応できるのは24時間以内に身体が傷つけられる場合のみだ。もし3日後に身体に異常が出る毒を飲まされる場合、アラームは鳴り響かない。睡眠薬の場合も、飲まされるときは鳴り響かず、そのあと殺されそうになった時に夢を見ている途中でアラームが鳴り響く。

 フィオナは今回、睡眠粉か麻痺粉を吸い込まされたのだろうと推測した。


 フィオナはまず、手錠を外そうと魔法を使おうとする、が使えない。MPが消費された気配もない。

(魔法が使えないのか。まあ、アイテムボックスからそれなりの物を出して利用しよう)

 フィオナはアイテムボックスを使おうとし、使えない事に気付く。


 これによってフィオナはこの問題の真を理解する。この手錠にはスキルを封印させる効果があると。


 だが理解したところでこの場を脱するとこは出来ない。フィオナはイライラしながらも、思い出すのは楽しかった1週間前のスキルの練習。

 ここで、ふと思う。影化ならどうかと。現実逃避なのも、ダメ元なのもフィオナは分かっていた。だが縋ってみたかった。


 影化のスキルを使用。対象は自分の腕。10秒が経つ。するとガチャンという音と、時を同じくして腕が急に軽くなる。そう、スキルが発動したのだ。

 フィオナは狼狽するが、すぐに影化をまた使い、自分の手首に手錠をはめる。


 フィオナの打ち立てた今回の目標は2つ。自分をここに閉じ込めた者の確認、可能なら排除。この場所の把握。

 そのためには、手錠がはまってフィオナが何もできないように相手に認識させることが必要だった。

 

 逃げられることを認識した頭は想像以上に冷静になった。改めて牢屋を見渡すが、トイレは洋式トイレが開けた場所で自己主張。窓はなく、ベットには湿気がすでに寝ている。

 フィオナは仕方なく人が来るまで待っていようと、ベットに座りに移動していると


「やあ、久しぶりだね。お姫様」


 銀の網目から見えたのは坊ちゃん貴族のアルラだった。

テストもようやく終わり、もうすぐ高校総体。まあ、主役ではないので足を引っ張らない程度、それなりに頑張ってきます。

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