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20 報酬

 ただただ暇な1日が消化されていく。

 今回の依頼は3日間の間、勇者一行を足止めすること。ただし殺してはならない。それなりに簡単な依頼だろうとは思っていが、まさか1日目で捕獲して、残りの時間はずっと待っているということになるとは思っていなかったのだが。


 朝、目を覚まして、勇者一行から罵倒され、それの仕返しのようにフィオナはごはんを目の前で食べる。勇者たちにとっては最悪な数日間だったかもしれないが、フィオナにとっては新しく楽しい数日間だった。当然、嫌味的な意味で。


 そして依頼を受けてから4日目の朝、ようやく依頼達成となる。フィオナの脳内で『チャラチャチャ、チャッチャチャ~~』という音楽がなり響く。節子、それ依頼達成やない。レベルアップや。

 フィオナはすぐに黒の手を外し、勇者たちに水とおにぎりをアイテムボックスから出して渡す。


「これをくれるのかい?」


 勇者のアルバートは3日間なにも食べていないからか、ずっと同じ姿勢によるストレスだからかは分からないが、ものすごくやつれている。他の女性も同じくだ。

 正直、やりたくはないが、ここで死なれても困る。フィオナはアルバートの疑問に頷きで返す。それを見た勇者一行は我先にと久しぶりのごはんにありつく。


「それじゃあ、俺はこのままニップール帝国に戻るので」


 フィオナは依頼達成の報告をするためにニップール帝国に戻るつもりだ。だが、出発しようと準備をするフィオナを止めたのはロベルティーネだった。


「ボクたちも連れて行ってよ」


「はぁ?」


 ロベルティーネのお願いにフィオナは困惑する。いや呆れる。というよりこのお願いの意図が分からなかった。ただの興味本位か、それともなにか騒ぎを起こすつもりなのか。

 だが、フィオナがロベルティーネの目を見たとき、自分でも分からないが、まあ、いいかという結論が出てしまった。


「まあ、いいでしょう。捕虜扱いでいいのなら、連れていくことができますよ」


「なあ、ちょっと待て」


 口を出してきたのはアルバート。まあ、確かにロベルティーネの暴走と言えなくもなかったが、そういう会議はあらかじめやっておいて欲しい。


「なんで急に連れて行ってもらおうと思っているだ?」


「意味不明」


「敵地のど真ん中ですよ! 危険です」


 ロベルティーネに3人は食ってかかる。しかしロベルティーネは平然と答えた。


「依頼をしたのがニップール帝国なら、ボクたちを殺さないように依頼したのもニップール帝国じゃん?つまりボクたちは身の安全を保障された状態で敵情視察ができるんじゃないかなって」


 ロベルティーネのまともな意見に一同は考え始める。粗はないか、おかしいところは無いか、と。だがどれだけ探しても、粗という粗は見つからなかった。

 それと同時に全員がこの意見に肯定をした。


「会議は終わった?」


「はい、つれていってくださいお願いします」


 フィオナは変わり身の早さに呆れつつも、連れていくことにした。


 フィオナが空に向かって火の魔法を放つ。それが合図だ。すると数分で馬車が迎えに来る。ここに来たときの馬車と同じ馬車のようだ。


 捕虜という扱いなので勇者一行を縄で縛って連れていく。馬車内では何をしゃべっても聞こえるからか、会議もおしゃべりもなかった。


 馬車に乗っていると、デコボコした道からしっかりと舗装された道に変わる。街道といっても、やはり町から遠いと舗装もあまりされないらしいのだ。

 

 馬車の窓から見えたのは、高さ15メートルに届くであろう町を囲っている壁。そのうえには兵士たちが等間隔で見張りをしている。

 そこから門をくぐると、すぐに見える建物がある。それはこの町の中心地にあるのにも関わらずだ。

 それは城だが、そこらへんの城ではない。まるで何年でも、下手をすると何十年も籠城できるであろう大規模な城だ。


 今回の依頼の報酬はあそこで受け取るようになっている。フィオナがチラリと勇者一行を見ると、全員。いやエルザ以外が、城にくぎ付けになっていた。


 馬車は城のなかに入っていき、入り口の前で停止する。そこから案内役の執事が付き、フィオナと捕虜にされた勇者一行が案内される。


「いや、しかし。勇者一行を足止めどころか捕虜にするなんて流石ですね」


 廊下を数分歩いたときに、案内役の執事がフィオナに媚びを売り始める。ちなみにだが、今のフィオナはお面にフードを被って完全ガード状態だ。もしかすると、おこぼれに与りたいだけかもしれない。


「聞いていたほどではなかったので」


「ご謙遜を。勇者と言ったら各地での問題を解決して回っていると噂ですよ」


 フィオナがアルバートを見ると、なぜかどや顔になる。後ろのロベルティーネのとイルムも同じくだ。ただ、エルザは困ったような顔をしていたが。



 執事の媚びを回避しつつ、歩いていくと大きな扉にエンカウントする。


「ここが陛下の部屋です。どうか粗相のないように」


 フィオナは執事の忠告を左へ受け流しながら扉を開く。視線で勇者一行をせかす。


 そこの部屋は豪華であった。きらきらと目に悪くなるような色で、魔王城のような品がおいてないのに悪趣味といえる部屋だ。

 そしてその部屋の中心近くには椅子があり、王様らしき人物が座っていた。


「ニップール帝国の王よ、このたびの依頼。完遂することが叶いました」


 フィオナは片膝をつき、頭を垂らす。こんなことをしたくはないフィオナだったが依頼を達成したのに、ここで機嫌を損ねて報酬をもらえないなんてギャグもいいところだ。


「このたびは大儀であった。足止めどころか勇者を捕らえるとはなかなかどうしてやるものだな」


 フィオナは安堵する。このままだったら報酬もしっかりともらえそうだと。


「ところで話は変わるが」

 

 とここで王の後ろ側から数十人の男女が出てきて並び、フィオナを注視する。


「ゾディアックに入るつもりはないか?」


 後ろのほうで「ゾディアックのメンバーがこんなに!?」とフィオナは聞いた。あれらはゾディアックのメンバーで間違いないのだろう。

 ただ、こんなことでビビるフィオナではなかったし、全力を出せば片づけられる相手であった。


「ここの王は話す相手を脅さないと会話もできないようだ」


 フィオナは思いっきり挑発をした。王の後ろにいる連中の数人は青筋を立てて睨んでいる。腰についている剣に手を伸ばす輩もいる。

 だが王自身は、満足したようだ。


「ふっふっふ。まあ、よい。ほれ、これが報酬だ」


 フィオナの前に金貨が百と数十枚も入っている袋が渡される。依頼難度と合っていないとフィオナは思うが、それはフィオナから見た場合である。

 普通の傭兵から見たら3日間、勇者一行を殺さずに足止めという依頼は最上級の難易度を誇るといっても過言ではなかった。


 フィオナは満足そうにアイテムボックスにそれを入れる。この世界にアイテムボックスというスキルは無いので目の前で消えた袋を見て周りの者は唖然とする。


 それを真っ先に振り払った王はフィオナに向かって発する。


「新しい依頼を頼みたい」


「その依頼とは?」


 フィオナは立ち上がり、王をその双眼で見つめる。王の視線とフィオナの視線が互いに反発しあい、弾きあう。


「ここで死ね」


「断る!!」

この小説ってちゃんと三人称になっているのでしょうかね?なんかグダグダしているような気が。

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