表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/48

2 リライトにほえろ!

「それでは今回も見送り、ということで?」


 幹部の問いに対して魔王は心底不服そうに無言で肯定の意を伝える。それもそのはず、今回ですでに14回目の会議が可決とならなかったのだから。

 そしていつも非を唱えるのはリライトだ。普通の奴なら非を突っぱねて強引に可決にすることは可能だが彼には力がある。力が正義のこの『魔の地』では立場もかなり高いことになる。


 

「はやめに対策を打たねばな」


 リライト・ノームは困ったように囁く。リライトはこの世界に2人しかいない吸血鬼の1人。元々吸血鬼はかなりの数いたが、ある能力を恐れられ人間に狩り尽くされたのだ。

 さらに吸血鬼は妖精の一種だ。そのため瘴気が多い魔の地では生きていけない。彼ら吸血鬼はやむを得ず人の地で狩られ続けるほかなかったのだ。

 リライトは力が強かったため魔の地でも生きていくことができたが、居心地がいいところではなかった。


 彼の頭の中は会議の話でいっぱいだった。

 最近、やたらと戦争の会議が多い。魔族のほとんどが資源が少なくなっている魔の地を見限っているのだ。

 だが、戦争肯定派の奴らは分かっていない。人の地に攻め入った場合、魔の地と違い瘴気が無いために実力の7割も出せないことに。

 きっと私の部隊も大半が死ぬだろう。奴らはもう家族のようなものだ。犬死だけはさせたくない。

 

 しかし魔王は私の意見を取り入れないだろう。いつか堪忍袋の緒が切れて強引に戦争に踏み切るだろう。

 私が魔王を殺し、魔王の座に就くか?リライトは自分の案を自分で却下する。

 いや勝てないな。相打ちにもできないだろう。


 リライトが紅茶を飲みながら思案しているとドアがノックされる。


「お兄様、失礼してもよろしいでしょうか?」


 リライトの返事を聞く前に入ってくること以外は丁寧な少女。

 彼女ことクロエ・マグノリアはリライトが拾ってきた孤児であり、世界に2人の吸血鬼のうちの1人だ。つまりこの部屋にいる2人がこの世界における吸血鬼の全てとなる。

 

 金髪で緑目。身長は140にも満たないが、彼女の脳はすでにこの世界のほとんどのことを記録している。さらに柔軟な発想ができるため、秘書にもってこいだったりする。

 秘書という名の雑用なんて口が裂けても言えない。言ったら物理的に口を裂かれそうだが。


「どうした? 普段より10%ほど心拍数が上がっているようだが」


「この子が空から降ってきました。魔王城はペット可ですよね?」


「ここは人の地の宿ではないのだが……」 


と言いつつも、クロエが抱きかかえている少女のステータスを開示する。


名前 

年齢 4

性別 女

種族 人間

Lv 1


HP 40

MP 200

STR 10

DEF 30

AGI 30

DEX 40

INT 150

MDF 30

LUC 1


スキル


アイテムボックス


 4歳時点ですでに人間の大人のステータスの平均を所々超えているのは引っかかる。

 スキルのアイテムボックスというスキルは何だろう?

 そして名前が無い。名付けの契約——契約などと言っているがただの名前の決定である——をしていないのだろうか?

 リライトは様々な考えを巡らせていたが、いい案を思いついたのか、笑みをこぼす。


「まあ、いいだろう。彼女を私直属の部下として城に住み着かせる許可を与えよう」


「私が見つけたんですよ!?」


 しかし名前が無いということは私が名付けるべきなのか判断に困るが、ずっと彼女ではそれこそ困ると思い

「名前は……そうだな。フィオナ・アシュリーにしようか」


「え? 私が見つけたんですよ……?」


 リライトはクロエがうなだれている隙にフィオナを奪い客間の一室に運ぶ。とりあえずは、フィオナが目を覚ますのを待つつもりのようだ。

 リライトは慎重な性格だった。そのため待つことは慣れていたし、待つ時間が好きにもなっていた。



 彼女は体の5倍ほどあるベットに横になって思考を張り巡らせていた。

どういうことだ?俺は死んだんじゃないのか?生きてた?じゃあここは病室か。ここで少女は頭を振る。あり得るわけがないのだ、なぜ病室のベットがここまで大きいのか、窓に鉄格子がはめられているのか。

 まるでここはVIP用の監獄のようだと感じた。


「ふむ、ようやく目が覚めたか。調子はどうだ?」


「ひうっ!?」


 少女は驚くが無理もない。先ほどまで居なかったはずのところに急に現れたのだから。

 だが、ここで人が現れたのは幸運だろう。彼に聞くべきことを頭で選別しながらまずは場所の把握に努めることにする。


「ここはどこなんですか? 病院ではないようですけど」


「ふむ。びょういんとはなんだ?」


 え?この世界で病院を知らない人っているの!?

 彼が病院を知らないということはここは病院ではないのだろう。


「じゃあ、ここはどこなんですか?」


「ここか? ここは魔王城だが?」


 まおうじょう?マオウジョウ、魔王城・・・魔王城か!?え?じゃあここは異世界?異世界転生?ってことはやっぱりあの時死んで転生したのね。修学旅行で死亡って・・・。


「お前は空から降ってきたと聞く。記憶はあるか?」


 空から降ってきた?俺は飛行石でも持ってたのかな?

 ここは記憶が無い振りをしてさら~っと立ち去るのが一番いいだろう。


「すいません。何も思い出せなくて。あと、私は人間のいるところに行きたいのでこのあたりで失礼しますね」


「それはかまわないがここの魔族は人間が好物だ。私は手を貸さんがどのように行くつもりだ?」


 なるほど、彼がずっとにやにやとしていたのは俺は逃げる手段がないことを知っていたからなのね。


「俺を食ってもおいしくないですよ!!」


「私は吸血鬼だ。人など食わん」


「血もおいしくないですよ!!」


「ああ、おいしくなさそうだ。私は知的な者の血が好みだからな」


 あれ?身の安全は保障されたはずなのに心が折れそうだ。


「じゃあ、何が目的なんですか?」


「それを教える義理はないが、これから行うことは教えてやる。お前の訓練だ」


「へ?」


「最終目的は私ぐらいだな。それでは今日から始めようか。ほら早く行くぞ!」


 起きた日から始めるってスパルタ、いや教育ママか?どちらにしても大変だ。

 いそいでベットから降りようとして、足の長さが足りず、躓き倒れる。

 起き上がって周りを改めて見てみるが、視線が低い・・・?


「何をしておるか?淑女たるものそう騒ぐな」


「え?誰が淑女?」


 彼は困惑の色を浮かべながら、鏡を俺に手渡す。


「……。」


 なんじゃこりゃぁあ!!!

 A.美少女です。

これから主人公成長章です。傭兵の話はもうちょっと後になりますね。はい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ