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19 勇者VS魔王(仮)

 フィオナは炎の羽を作り、そこから炎の羽根を飛ばす。それを4人は各々躱し反撃へと転じる。

 イルムは矢をフィオナに向かって5本放つ。フィオナはそれを3×3センチの土の壁を5個、空中に作って矢を受け止める。

 右側からロベルティーネが、左側からアルバートが走り向かってくる。すこしロベルティーネの方が速い。フィオナは脳内で優先順位を変更し、右から処理する。

 ロベルティーネのバレバレな横なぎをフィオナはしゃがんで回避。そのまま圧縮した風を、空気砲のようにして目の前のロベルティーネの腹部にぶつける。ロベルティーネは急流に飲み込まれる木の葉のように地面をものすごい勢いで転がっていく。


 そして間髪いれずに左から来ているアルバートの剣をフィオナは後ろに飛んで回避。ここでフィオナに向かって中々のスピードで炎の玉が飛んでくる。きっとエルザという女性が放ったものだろうとフィオナは仮定する。

 目の前の完全にフィオナを倒したという表情のアルバートを見る限り、これが彼らの必勝法のようだ、とフィオナは推測をした。

 イルムもこのタイミングでフィオナの回避は不可能。つまりあの魔法は確実にあたると決めつけていた。そして悔しいがエルザの魔法のセンスは脱帽しなければならないと思っていた。あの歳であのスピードであのぐらいの魔法を放つというのは天才の部類だったのだ。

 ただ、目の前にいるのは規格外の天才だったのだが。


 フィオナに向かっていた火の玉は残り1メートルのところで軌道を90度変えてアルバートの足に直撃する。何が起こっているのか理解が追い付いつかず、棒立ちしているアルバートは風の壁で弾き飛ばされる。

 

 転がっていったはずのロベルティーネとイルムが飛んできたアルバートをキャッチする。エルザは呆然と立っていた。

 何とか態勢を整えた勇者一行は作戦会議に興じていた。


「ちょっと!! なに魔法をアルバートにぶつけてんの!?」


「ストップストップ。多分だけど、エルザのせいじゃないと思う」


「うん。魔法が勝手に向かってた」


 どうやらロベルティーネはエルザに対して切れているようだ。というより勇者一行の女性たちは仲がすこぶる悪そうだとフィオナは感じた。

 目の前で修羅場を見るのも面白いかも。フィオナは悪い笑みを浮かべていた。


「魔法って言うのは発動者から離れた時点でその人が操作するわけではなくなる。最初にどう動くのか決めてから発動させるからね。そして俺の半径5メートル以内の魔法は全て俺に操作権が移る。もちろん、好きなように動かせるし、消すこともできる」


「何よ。そんなの卑怯じゃない!!」


 エルザがフィオナに怒鳴る。だがフィオナはまるで気にしていない。逆に、エルザとイルムは薄い笑みを零した。本当に仲が悪い。エルザが使い物にならなくなって自分が活躍できるとでも思っているのだろうか。


 フィオナは地面を氷に変えていく。ゆっくりと、しかし確実に。それにいち早く気付いたのはイルムだった。


「氷が広がっている。急がないとまずいかも」


 イルムの発言で冷静になったのか、また前衛二人が突撃をしてくる。フィオナを挟んで左右から剣を振るう。今度は同時に。

 だが、その剣は地面から生えた黒い手によって防がれた。


 だが、そうではない。彼らにとって事態はもっと悪い。最悪と言ってもいいだろう。なぜなら、黒の手に捕まれていた剣が、自分達の攻撃手段が抜けないのだから。

 それだけではない。


「後ろを見てみな。色男」


 フィオナから言われアルバートは頭だけを後ろに向けると、エルザとイルムが黒い手で縛られているのを見た。

 エルザとイルムは声を漏らしながら必死に拘束をほどこうと暴れている。だが誰がどう見ても不可能に見えるだろう。

 アルバートは歯ぎしりをする。フィオナは気付いていたのだ。このパーティの弱点を。それを分かるとどのくらいこのパーティがもろいか笑いがこみ上げてくるだろう。

 そう、1人が捕まると、アルバートは従うしかなくなる。アルバートが従うと、他の女性も従う。単純なことだった。


 ただ、今回のアルバートはいつもとは違った。


 アルバートは両手を上げる。それにつられるようにロベルティーネも両手を上げる。

 すでに勝利を確信したフィオナはアルバートに近づいていく。


 すこし、視線をロベルティーネに向けたときにアルバートはフィオナに向かって足を下から上に振り上げる。

 フィオナはぎりぎりで回避するがアルバートの足が顔のすれすれを通り抜けた。おかげでお面が飛ばされる。

 フィオナの素顔を見たアルバートは言葉を失う。それは見惚れていたのが5割。同情心が5割だった。彼女らはアルバートの反応を見て焦り始める。

 

 フィオナの睨みによってようやくアルバートは意識を戻す。

 

「どうして、君がこんなことをしなければならないんだ! 君はもっと普通の生活をしてもっと笑って良い筈だ!」


 フィオナは呆れるを通り越して絶句する。

 ああ、これがアレのハーレムの原因なんだね。女性と分かったらすごく優しくなって、全力で救おうとする。

 ……反吐がでる。


「俺はこんなことにも誇りを持ってる。もしお前がこんなことを止めさせようとしたら俺はすぐに貧困に苦しむだろう。俺が言いたいことが分かるか? お前は今しか見えていない偽善者ってことだ」


 固まっているアルバートと、フィオナを睨んでいるロベルティーネを黒い手で拘束する。これで無力化は完了した。


 これからをどうするか考えるフィオナだったがすぐに面倒になる。どうせ条件は殺さないこと。弱っている分には構わないだろう、と。


 過剰とも思える量の黒の手を彼らに這わせる。手を上で重ねて縛り、足も黒の手が抑える。そのまま床に転がして、土の壁で外界と隔離する。


 フィオナは椅子に座り、そのまま全てを忘れるように眠りについた。


一日一回投稿の人達ってどのくらいの時間をかけているのでしょうか?私、気になります。

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