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12 傭兵開始

「どうでしたか? 初めての戦場は?」


 クロエは魔王の椅子に座ってフィオナに問いかける。問われているフィオナは心なしか少し若返ったように見える。元々若い、というより幼いが。


「思ったよりも悪くなかったよ! あの空気も好きかもね」


 フィオナにとって戦場とはすでに仕事場となっていた。さらに自分にも守るべきものがありそれを守るためと考えると不思議と抵抗感は無くなっていった。

 クロエはこれで戦場を怖がったらどうしようと思っていたが、杞憂で終わったらしい。クロエは安心してある書類をフィオナに見せる。

 

「はい、これが各国の反応になっています」


 フィオナの目の前には棒グラフや、折れ線グラフなどで表されている書類。中身はフィオナへの評価。そしてフィオナに対しての各国の意見が事細かく書かれている。

 そのほとんどが否定的だ。


「ほら、見てみてください。これなんて殺人予告みたいになってますよ~」


 クロエが笑顔でそれを見せてくる。正直さっきまでの戦場よりも精神をすり減らす。

 知らぬ顔でクロエは新しい書類を取り出し、フィオナに見せてくる。


「その中でですね。傭兵として雇いたいという物好きさんが一国だけありました」


「へえ、その酔狂な国はどこ?」


「アルカディア王国というのですが分かりますか?」


「全然」


「でしょうね。アルカディア王国は国土が1番多く、国としても豊かです。兵士の数も他の国と比べて桁違いですが、精鋭はいません」


「なるほど、兵士を一度に大量に動員しなければならないのはなかなかの負担だからね。しかも戦争のときに奇襲もかけずらい。強大な力を持つ個人というのに魅力を感じたのかもね」


 クロエは唖然としている。まるで、あり得ないものを見たかのような表情をしている。

 さっきフィオナが発した言葉を全力でかみ砕いて脳で理解しようとしている。


「フィオナは考えることができたんですね……」


 クロエのスーパーコンピューターのような脳みそがフリーズ寸前まで酷使された。その結果、出てきたのはそんな言葉だった。


「失礼すぎない!?今回のプレゼンテーションの細かいところを考えたのは俺だよ!」


 プレゼンテーションとはさっきフィオナが戦場に乱入したアレである。

 要は自分はどのくらいの力を持っているのかの発表会ともいえる。


 クロエはようやくフリーズから回復したのか、普段の状態に戻る。


「しかし、来ている反応が非難ばかりと見るとあまりアレの意味を理解している国は少なそうですね」


「1国だけでも上出来じゃない?」


「まあ、そうですね」


 クロエは苦々しそうに答える。自慢の妹に対する評価に腹が立っているともいえる。

 クロエはシスコンに進化したのだった。・・・退化か?


「それでは依頼の中継所を魔王城にしておきますね」


「うん。お願いね」


 フィオナが魔王城を中継所にしたのはちゃんとした理由がある。別に、面倒なところはクロエに任せるといったことでは断じてない。とおもう。

 

 仮にも魔王は王。つまり各国の王との通信用の水晶を持っているということだ。そこからフィオナに対する依頼を聞き、フィオナに斡旋するというわけである。


「早速ですがアルカディア王国の依頼を受けていいのでしょうか?」


「依頼内容を見せて」


「それが、依頼内容は言っていなかったんです。アルカディア王国のとあるカフェで話すって。正直初めての依頼ってことを考慮すれば勧められないですね」


 フィオナにはすでに自制心や、恐怖心といったものは存在していなかった。きっとそのうち痛い目にあうだろうと思われる。


「でもそれしか依頼は無いんだし、もちろん引き受けるよ」


「そういうと思っていました。はい、これが地図です。集合時間はあと3日後」

 

 勧められないとか言っておいて依頼受けてたのかよ!という思いをフィオナは心にしまう。厳重に金庫に入れて。だってもし言っちゃったら半殺しぐらいにはされそうだからね。


「あとこれも」


 クロエは安物の仮面をフィオナに渡す。いや、仮面ほど立派でもない。屋台のお面といったところだろうか。


「これは?」


「素顔で傭兵をやっていく気ですか? 素顔は絶対にばれてはいけませんよ」


「なんで?」


 先ほどまでのフィオナならたどり着けたかもしれないが、今のフィオナは頭を使わない状態なので、とりあえずクロエに聞くというスタンスになっている。


「傭兵というのは嫉妬と憎悪を受けやすい職業です。このお面は素性を詮索されないための最低限の処置ともいえます」


 フィオナはなるほど、と思う。傭兵というのを根本から理解していないことを理解する。


 しかしフィオナは気付いていなかった。このお面はクロエがお忍びで祭りに行ったときに買ったものであり、処分に困っていたことに。


「これで、だいたいのことを言い終わりましたかね」


「じゃあ、俺は今からアルカディア王国を目指すね!」


「そうですね。それでは……」


 クロエの表情と周りの空気が冷たくなっていく。しかしクロエの冷たい表情には微笑が浮かんでいる。


「窓から出入りした分の説教を始めましょうか」



 日本ではこのご時世2時間の説教で体罰と呼ばれたりする。しかしながらこの世界ではそんな思想があるわけがない。その事実はフィオナにも例外なく襲った。


 何時間説教された?その質問に間違いがある。単位が違う。何日説教された?が正しい。1日説教されました。ん?短く感じる?やられてみるかい?


 そのまま、満身創痍で帰る途中で大事なことを思い出し、急いで『家』に帰る。そこにはずっと1人で俺の帰りを待っていたショタジジイ妖精が。


 フィオナの説教時間は延長戦に入ったらしい。 


フィオナがもらったお面はヒョットコみたいな感じです。

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