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11 傭兵(ただし傭われていない)

ちょっとグロいかもしれません。お気を付けください。

「ここがあの女のハウスね」


 フィオナのくだらない言葉は兵士たちの怒号によってかき消される。

 普段ならきれいな景色大好きなフィオナが、回り道もよそ見もせずに戦場まで一直線で来たのは奇跡としか言いようがないだろう。


 嗅覚からは鉄分の匂いが、視覚からは暴力が、聴覚からは悲鳴と怒号がここは戦場だとフィオナに突き付けている。

 

 フィオナは空から戦場を見ているため、状況がよく見えた。これからは勉強の時間だ。

 互いに剣を持って振り回し争っているのは騎士と、騎士よりも幾分、質が悪い装備をしている兵士だ。騎士と兵士の割合は1:9ぐらいになっており、騎士はこちらの世界の将軍みたいなものだろう。とフィオナは考える。

 その後ろ。敵と直接的に面していない部分にはローブを着ている魔法使いがいる。

 

「しかし、兵士の壁が薄すぎないか?」


 あまり剣を振り回して戦争するのを見たことないフィオナでも兵士の壁が薄すぎると疑問に思った。

 と、ここで騎士が周りの兵士を集めて一点突破しようとしている。突破を受ける側の兵士は浮足立っており、受け止めるなんてとてもじゃないが無理だ。


「あ!」


 突撃をかまし、兵士の壁を7割ほど削ったときにその部隊は消滅した。いや、実際には魔法使いの火で蒸発でもしたのだろう。クレーターができてるし。

 なるほど、兵士の壁が薄いのは相手からの魔法の被害を少なくするためか。

 

 つまり、まとめるとこの世界の戦争は、兵士が多いほど防御力が、魔法使いが多いほど攻撃力が高いということだな。

 しかし、これは兵士に駆り出された人達は堪った者じゃないだろうな。魔法使いの壁になれって言われているようなもんだし。まあ、関係ないけど。


「それじゃあ、ちょいとばかしやりましょうかね!」


 といいフィオナは垂直に落ち、地面から5メートルぐらいで地面と水平に飛ぶ。

 ここでようやく双方の兵士がフィオナのことに気付いたようだが遅い。すでにフィオナは魔法陣を起動させていた。

 数十のレーザーが魔法陣から放たれている。その魔法陣を4つ、周りに浮かせてフィオナは戦場の端から端まで飛び回る。レーザーはそこに居たはずの人も物も知らぬ顔で焼き切っていく。

 レーザーと兵士の絶叫をバックに魔法陣の文字が舞う。主役はフィオナか。


 戦場に居る人は様々な反応をする。逃げ惑う者。届くはずのないフィオナに剣を振るう者。動けない者。魔法で反撃しようとする者。全てがもうブロック肉と化しているが。


 戦場の兵士の数はすでに1/10にまで減っている。ただし、本陣の方には傷1つついていない。きっと通信機械のようなものがあるはずなので、本陣の彼らには俺の情報を本国に伝えてもらうとしましょうかね。


▽ 


 何だあれは!? 俺はさっきまで何してた? 隣国と戦争してたんだよな?

 空から何かが落ちてきたかと思ったら最前線が爆ぜた。そのまま、味方も敵も全てを蹂躙しているあの化け物をどうすればいい? いや、どうしようもできないのか。


 というよりあの怪物が戦場に入ってきた時点で俺はどうしようもなかった。あんなスピードで部隊を半壊させられたら指示なんて伝えられるわけがない。ましてや撃退なんて考えるだけ無駄だ。

 俺ができることは情報通信用の水晶でこの事実を本国に伝えることだけだろう。



 1度フィオナは最初に戦場を見ていた位置まで上昇する。逃げている兵士がいないか確認するためだ。


「あ、見つけた~~」


 さて、見つけられた彼らは不運の一言に尽きるだろう。だが、これこそが彼らが待っていたチャンスであった。

 わざと見つかった彼らは魔法使いの一団である。先ほどのように近づいてきたところを人数差に物を言わせて反撃を狙っている。といったところであろう。自分たちの命を犠牲にして。


 その発想はあながち間違いではないと言える。ただし、フィオナが近づくこともなくその場で魔法陣を発動させなかった場合はだが。


 それは魔法陣。先ほどのレーザーの魔法陣の10倍の大きさ。込められている魔力は先ほどの100倍。そのとき魔法使いの一団は死神の足音が聞こえていただろう。

 あの時、魔王を滅した光の柱を横に放ちそのまま薙ぎ払う。魔法使いの一団と一緒にまばらにいた兵士たちも巻き込まれた。


「よし、帰るか!」


 きっとこの土地にはもう木々がかえってくることは無いだろう。

 地面は凹凸だらけで、地面のほぼ全てが深紅に染まっている。残った物は人だったものと荒れ果てた土地だけだった。

 この世の最悪の温床となった土地で1人中心で笑みを崩さない少女。その姿は全ての人に畏怖、憧憬、嫌悪、欲情、を抱かせる光景だった。


 中身はチャランポランのフィオナだったが先ほどまでの行動と合わせるとそれすらもカリスマとなるだろう。


 そんなことを考えてもいないフィオナはできるだけゆっくりと。本陣のお偉いさんに見せつけるようにゆっくりと飛んで帰っていくのだった。

 








「あの化け物、どう思いますか?」


「ああ、増援に行かなくて正解だった。あれはまずい」


「しかしこのままだと」


「……ああ、いずれは処理しなければならないかもな」


「できるんですかね?」


「どんな手を使ってでもやるさ。どのくらいの血が流れるのか考えたくはないがね」


「ははっ、言えてますね」


傭兵の話と思ったら雇われてなかったでござる

(´・ω・`)

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