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10 俺のやり方

 よく考えてみてほしい。妖精の『家』についてだ。

 あの時はさらっと流したが妖精の家と言われてもまったく想像できないだろう。

 というより妖精に家が必要なのか、まずはそこからになってくる。

 

 やはり妖精の家というと小さいのではないのだろうか? その場合、俺はその家に入れるのか?

 ちょっと大きい木の中が家とか言われたら俺はどう反応したらいいのだろうか?


「着いたぞ」


 フィオナが妖精の家についてつまらない考えを巡らしていたら、どうやら到着したらしい。

 

「さあ、そこらへんに座るがよい」


「……家じゃねえじゃん!!」


 そう、そこには何もない。屋根も壁も。雨や風が我が物顔で闊歩する家だ。さっきまで歩いてきた道と何が違うのかフィオナは全く分からなかった。


「まあ、そうカッカすることでもあるまい。話すことがあるのじゃろうて?」


 そうだった。とフィオナは思い出す。ここに来たのは突っ込むためでも、妖精の家を見るためでもない。気持ちを入れ直し、壁も屋根もない『家』で村長的な妖精に今までのことを話す。



「そうか。そんなことがのう。辛かったであろうな」


 といい、フィオナの頭をなでる。

 ああ、この人も私を責めない人なんだ。とフィオナの中で残念に思う気持ちが少し湧き出た。


「それで、困っていることは無いですか?」


 フィオナは食い気味に迫る。

 本当にフィオナは誰かの役に立ちたかったのだろう。妖精はそのフィオナの覚悟を垣間見た。


「実は、最近人間が儂ら妖精の力を無理矢理に使ったり、儂らの土地を奪ったりしておるのじゃ。このままでは儂ら妖精は絶滅してしまうだろうて」


 なるほど、しかしフィオナはある思考に辿り着く。


「ですが、結局困るのは人間の方ではないんですか?」


「結果的にはそうじゃろう。しかし、それは儂らが絶滅してからじゃ。儂らは絶滅などごめん被る」


 フィオナは冷たいものが身体に循環していくのを感じながら考える。

 そりゃそうだ。実際妖精の方が長い間この世界にいるのだ。人間の方が新参者なのに、そいつらに絶滅させられるというのは屈辱だろう。

 なんか、人間を他の種族から見ると、嫌悪が湧いてくる。


 しかし、フィオナが考えられるのはここまでだった。実際、解決策が見当たらない。そこらへんに落ちてたらいいのに。ともらした。


 こういう時は、ちゃんとした人を頼ろう。という結論に至ったフィオナは


「ちょっと待っててください」


 というやいなや羽を広げて飛んで行った。そう、もと居た場所へ。


 

 ようやく見えてきた趣味の悪い建物にフィオナは安堵する。

 そのまま、クロエがいるであろう魔王の部屋の窓にそのままのスピードで突撃する。

 クロエにとっては災難である。


 「せめて扉からお願いします」


 目の前には、窓から入ってきたのにも関わらず全く驚きもせずに呆れている少女。そう愛しのクロエだ。

 クロエは少し笑みを浮かべながら


「帰ってきてもいいとは言いましたけど、流石に早すぎですね」


 フィオナはうつむき、耳まで真っ赤にする。

 例えるならば、友達を惜しんで別れたあとにすぐ出会うような感じだ。いや、自分から会いに行ったのだから余計恥ずかしいのだろう。


 

「なるほど。そんなことが」 


「でさ。どうしたらいいと思う?」


 聡明なクロエのことなら何かいい意見が出てくるであろうと頼ったフィオナは祈るように問うた。


「簡単なことです。土地を買えばいいでしょう。そしてそこに住まわせればいいじゃないですか?」


 なるほど。この世界でも土地を買ったら立ち入ることはできない。そこに妖精を住まわせるというのは良い意見だとフィオナは納得しかける。


「でも、買うためのお金ってどうやって稼げばいいのかな?」


 そう。そこなのだ。フィオナは金を稼ぐための方法を全く知らなかったのだ。他人の土地を奪うのは少し考えたが、奪った土地で過ごすのは妖精なのだ。罪悪感が湧き出てくることだろう。


「今、人の地では魔族の侵攻がなくなり争いが始まっております。醜いものです」


「そうなんだ。全然知らなかったよ」


 フィオナは魔王城にいたころは外界のことなど何1つ教わらなかった。教わったのは魔物の手足の捥ぎ方や、人体の急所など。今考えても分かる。リライトは実は馬鹿だ。


「はい、そうでしょうね。だからフィオナは傭兵でもやってみてはいかがでしょうか?」


「傭兵?」


「はい。傭兵です。戦争のために雇われる兵士のことですよ。フィオナは実力は相当ですし、兵士よりも給料はいいらしいですよ、強いのなら」


 フィオナは争いは苦手ではなかった。それに吸血鬼補正か分からないが、人を殺すのも魔物を殺すのもあまり変わらなかったのだ。

 それに妖精のためと思えば、そんなこと小さき事だったのだ。


「分かった! 傭兵、やってみるよ」


 フィオナの答えにクロエは微笑むと、魔王城を去るときのように1枚の紙をポケットから出した。


「これは、今日起こるであろう戦場までの地図です。まずは、アピールをしなければいけないでしょう?」


 準備していたのだろうか?まあ、重要なことではないとフィオナは自分を納得させる。


「ありがとう! それじゃ行ってくるね!!」


 と、いい来たときに突撃した窓ではない新品の窓を壊しながら出ていく。

 

「後で説教ですね」


 クロエが天使から堕天使に堕ちたのをフィオナはまだ知らなった。


私はキングダムが好きなのですが、まさか世界史の授業でネタバレされるとは思っていませんでした。

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