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一心不乱
暗い四隅の中
かりかりかりかり
細い細い黒が、黒い道を作っていく
かりかりかりかり
道と道がぶつかって
ちくたっくちくとっく
時計の針よりも、鼓動よりも早く
ちくたっくちくとっく
指先だけの動きから腕
腕の動きから体全体へ
彼はなりふり構わず書いていく
喉が渇くが知るものか
腹が減ったが知るものか
つい先週切った髪がすでに伸びてきた
前髪が目に刺さって痛い
だがやはり知るものか
まるでオーケストラの指揮をするように
まるで足踏みをしだしそうなくらいに
彼は止まらない止まれない
止まってしまえば止まってしまう
このほんのわずかな感情すらも大切な一秒だ
絶叫しながら、彼は指揮をして、足踏みをした
隣の住人が呼び鈴を鳴らした
それでも鳴らそうが構わない
住人は思いっきり扉を殴りつけた
それでもわめこうが構わない
住人は思いっきり扉を蹴りつけた
それでも壊れようが構わない
どんな邪魔をしようがしまいが、
彼には届くはずがない
今、彼は彼の中なのだ。