昔遊んだモノ。
瞼を開けて。
そういわれ、現れた光はまぶしかった。
産声を上げた時のように、
日光も人の笑顔も肌も顔も、すべてがそう。
見えなくなってしまった光が
真新しくなって目の前に広がった。
再び現れてくれた色が、光が、そして影すらも。
今までは鬱陶しいくらいだったのに
今ではとてもきれいでとても愛おしく感じた。
お茶会をしたり、おしゃべりしたり、自由に歩いたり。
自分で自由にできる喜びは、ほんの僅に私を支配した闇をも消す。
目の前がまるで今生まれたかのように見える。
目を閉じて、開いて。
白にもいろいろあることを知った。
目を細めて、凝らして。
光にもいろいろあることを知った。
目を覆って、覗いて。
影にもいろいろあることを知った。
新しい世界のようで、新しい空気のようで、
たくさんたくさん自分に取り入れて、吸い込んだ。
そしてまた、得たことから失ったものもある。
失ったものなんて、本当は得たことよりも比べてはいけないくらい小さい。
だけれど、それは小さくて大きかった。
想像できないくらい、大きかった。
そうだ。
小さいときのように、また未知数のそれに恐怖を感じる。
慣れたはずの未知数は、生まれ変わった世界でも大きかった。
影の中に、光の中に、色の中に。
時折見せる姿はとてもとても小さくて。
時折見せる指先はとてもとても大きかった。
夜ならば世界すべてが包まれてしまいそうだった。
黒くて、紫で、蒼くって。
純粋にそれは闇だった。
純粋なそれは未知数だ。
子供の無邪気さに紛れ込む、あの残酷さを象徴しているようだった。
自分の元の世界をつぶした、あの残酷に近かった。
髪の毛に櫛を通す日もあれば、
その髪をわしづかみにして振り回してくれる時もある。
新しい世界は元の世界とは違っていて、
腕をつつむ大きな子供の手は、とてもとてもやわらかい。
大きな子供は元の世界の子供と似ていたけれど、
どこか違くって、頬紅や口紅は自分にしている。
髪は伸びて、歯もどこか抜け落ちている様子もない。
どこの子供だろう。
色や光や影さえも、取り戻してくれた人はこの人だ。
ぷすぷす刺さる銀の杖と、細い細い糸で誰かが体をいじっていく。
瞼まぶたもさび付いていたのに開いたときはこの人がいた。
大きな手は私の体を包むくらいで、
やがて大きな子供はやわらかくて暖かい髪の毛の中と胸の中に
くたびれた私を引き寄せた。
その中は、ぬくもりだらけで暗くったって闇だとしたって怖くなかった。
その中は、暗い暗い固い固い箱なんかよりも暖かすぎるくらいだった。
口紅は小さく弧を描いて、
頬紅には透明な弧が描かれた。
私は明るくて白い長椅子に座らされた。
横には元の世界にいたモフモフのクマや猫、私の洋服があった。