かがみのかいぶつ――鏡の怪物
ゆうぐれの――まだ、そらのかなたにうすらあおくそまるくもがみえるころ、しょうねんのかわいたこころへふしぎできみょうな、それでいてようきなねいろがきたかぜにまぎれやってきた。
ぐるぐるとまわるねいろ。まちじゅうむぞうさにしかれたかぼそいいとをたどるように、しょうねんはふしぎなねいろのせかいへまきこまれていった。
ふいにぬけたきたかぜがさらい、しょうねんのこころはもうどこにもありはしない。
はしるわけではなく、あるくわけでもない。しだいにねいろはふかくなり、そして――
――そのまちにはそんざいしない、じゅうきょのあいだをおうだんするながいみち。
みちばたにたまるみずのかがみに、じゅうきょをかざるまどがらすに、そのそんざいはうかびあがり、ふしぎなねいろはやけるようにあつくなった。
きくことをわすれたしょうねんは、やがてだれのめにもふれぬまま――そこにのこるのは、かげのまわりをやけこげたまっくろなあとだけだった――