ライバル
「おい、ヘルマン。ヘルマンってば」
揺り起こされ、僕はうっすら重い瞼を上げる。
栗色の髪の青年、とっても美形のコンラード・ヴィスコンティと、ソラという日本人の女の子が、微笑をたたえながら僕を見つめていた。
「なに、コンちゃん、もう朝?」
瞼をこすりながらあくびをする。
コンちゃんはその様子をじつにおかしがって、
「まだ夜明け前。けど、漁をして魚売らねえと俺たちが干上がるだろ」
コンちゃんは乱暴な手つきで船の舵をとる。
うう、ダメなんだ僕、船だけは苦手・・・・・・。
表に出てげえげえと吐き出していると、ソラが背中をさすってくれた。
「もうちょっと丁寧に運転してもいいのにね。あいつ、わかっててわざとやってるのよ。いやあね」
そう、ソラの心がコンちゃんに向いていないから、僕に八つ当たりしているんだ。
ちくしょう。
口でも勝てないし、体力も勝てない。
悔しいなあ。こうなるとまた、クセノフォンが恋しくなる。
「クセノフォンって、そんなにすばらしい?」
ソラが背中をさすりながら聞いてきた。
「そりゃそうさ、英雄だよ! 立派な思想家だよ! クセノフォンはプラトンと違って、実践型の哲学者であり、軍人だったんだからね」
ソラは僕の興奮した状態に困惑し、ふうんとか、あっそう、とか、そればかりの返答をしてくる。
「あっ、ごめん。でも僕・・・・・・」
ソラが本当は好き、といいかけて、コンちゃんが邪魔をしに割って入ってきたので、言えずじまいだった。
――こいつ、ほんとに大人かよ・・・・・・。
コンちゃん登場。
こいつホントにうさんくさい(汗。
謎の錬金術師・・・・・・て、何かぱくたんだろうか、自分・・・・・・。