父が憎い
クセノフォン騎兵隊長――。
あなたに僕の意思は伝わるのだろうか。
僕はヘルマン。
クセノフォンが大好きな十八歳の、伯爵家の跡取り。
あるとき、クセノフォンが大好きで敬愛しているといったら、親父に殴られてしまった。
「クセノフォン? だれだそいつは」
「父上はクセノフォンを知らないのですか」
僕は上目遣いで親父をにらみつけた。
ぶたれた頬を押さえながら立ち上がると、父はぐいと胸倉をつかんできて、
「大学などへやるのではなかったな。哲学や思想などというくだらないものを学ばせたおかげで、おまえはたるんだ精神を抱いてしまったようで、残念だよ」
親父はそれから、僕を放り投げた。
僕は投げられた衝撃で腰を打ち、痛みを和らげようと手で腰をさすった。
――それにしても、ゆるせない。
僕は、親父が憎かったんだ・・・・・・。
僕にとってクセノフォンは命よりも大切な存在であり、憧れとなりつつあった。
クセノフォンについてのことなら、僕は何でも受け入れた。
そうさ! だって・・・・・・僕にとって彼は神にも等しいのだから。
クセノフォンはアナバシスという戦記小説を書いている。
ちょっと無理をして、小遣いをはたいて購入したそれを、僕は震える指先で丁寧になで、それから表紙をめくった。
そこには、王子キュロスの反乱の様子などが描かれており、クセノフォンの本は、たちまち僕を興奮の渦へと引き込んでいった。
ああ、なんとすばらしいのだろう!
だがクセノフォンはもともと騎兵隊長ではなかったし、軍隊の兵隊でもなかった。
クセノフォンは王子キュロスの教育係として呼び寄せられた貴族だったんだ。
あるとき夢を見た。
それは王子が兵を集めて力をつけていた様子であったという。
「寝ていてはいけない。相手は兵力をつけ、攻撃態勢を整えている。さあ、こちらも手を打たねば」
――紀元前401年頃の物語である。
以前書いたヘルマンとコンラードだと内容があまりにめちゃくちゃだったので・・書き直しというか、スポットをヘルマン中心で当ててみたもの。
今回はクセノフォンの人生が交錯するよ。