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さよなら③

朝焼けの空の下。バアルは荷物をまとめて王宮へ行こうとしていた。片手剣に弓、矢が数本とあるが、目的はシアーシャの救出であって、兵士の殺害ではない。ひとりで王宮へ侵入するのは少々危険ではあるが、仲間を探す時間もない。


「助けに行くの?」


どこからか声がして、バアルは振り返る。


「母さんを助けに行くなら俺も行く」


クリフはそう言うが、人数が増えたところで危険なのには変わりない。だが、クリフももう子供じゃない。一人前の兵士でもあるクリフの手を貸してもらえるのはありがたいが、クリフの親として、危険な場所にノコノコと連れて行きたくはない。


「命がけの仕事だぞ。敵兵に見つかれば即処刑だ。それでもついてくる覚悟があるのか?」


「行くよ。俺だって母さんを助けたい。約束したんだ……絶対に母さんを守るって決めたんだから」


強くなったな……小さな頃は、ひとりぼっちになるとすぐに泣いて、自分たちに甘えてきたのに、今じゃ一人前の大人になった。その成長が嬉しくもあり寂しくもある。クリフももう大人になったんだな……。きっと、もう自分たちの手助けも必要としないのだろう。それでいい……もう自分たちは、見守ることしかできない。クリフが自分で選択したことだ。これ以上何も言わない。


「シアーシャを助けに行くのかい?」


部屋の奥から声がした。そこにはディナの姿があったジェルドたちにバレないように家を出ようとしていたのに、どうやら自分たちの行動はすでにバレていたようだ。


「ええ。俺たちで助けに行きます。止めても無駄ですよ」


「別に止めはしないよ。アンタらの気持ちだって理解できる。だけど、これだけは言っとくよ」


「必ず生きて帰ってきな。アンタたちを待っている人は大勢いるんだ。だから、そうやすやすとくたばるんじゃないよ」


「さっさと行きな。シアーシャだってアンタらを待ってるんだ。これ以上、あの子を待たせるんじゃないよ」


ディナの言葉に頷いて、バアルとクリフは王宮へと向かう。ディナたちには返しても返しきれない恩がある。家に住まわせてくれたこと、自分たちを本当の家族のように接してくれたこと。どれだけ感謝しても足りない。彼らへの恩を返す為に生きて帰らなくてはいけないんだ。こんな所で死んでたまるか。シアーシャとクリフと、そしてバアルの三人でまた一緒に家族になるんだ。そう心に誓いながら、バアルたちは王宮へと向かうのだった。

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