表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/61

さよなら①

鳥が空を飛んでいる。窓の外から見える光景は、代わりなく青空が広がっている。退屈な光景だ。うつり変わる街の様子も、入り組む群衆を見ることもできない。自由な鳥が羨ましい。自由に空を飛ぶ鳥と、檻の中に閉じ込められた自分。檻に閉じ込められた鳥が大空を飛ぶ夢を見ないように、日を重ねるにつれて、自由を忘れていく。


「おはよう。シアーシャ」


「テム……」


「ここの生活はもう慣れた?」


テムの言葉にシアーシャは答えない。


「やっと準備ができたの」


「アナタの処刑が決まったわ」


その言葉に驚きはない。当然のむくいだ。テムの子を殺した罪からは逃げることなんてできない。これは、必ず償わなければいけない大罪なんだ。


「先生たちを殺したのね……」


「ええ……みんな殺したわ。まだ生き残りがいるかも知れないけれど、必ず見つけて殺してみせるわ」


「どうして……そんなことができるの……」


「みんな、一緒に暮らしてきた大切な人たちなんだよ! どうして、平気でいられるの? 昔のテムはそんなことをするような人間じゃなかった……なぜ、みんなを殺せたの、一番辛いのはアナタでしょ!」


「知った風な口を聞くな!」


「アナタに何がわかるの……リーフを産んでから、私はここに閉じ込められたきり、外に出ることも……ナムタと一緒に空を飛ぶことも許されない」


「リーフは私の全てだった……愛していたのよ……だけど、もう、リーフに会うことも叶わない。私はナムタと同じなの、檻の中で暮らす囚われの奴隷よ」


「テム……ごめんなさい。アナタの気持ちは良くわかるわ……私にもね、大切な人ができたの……だからどうか、罪滅ぼしを――」


「よく言うわ」


「アナタたちが全てを奪ったくせに」


「もう……あの子の匂いも忘れかけてる。あの子の声も……あの子の体温も、抱きしめた時の柔らかさも……全部……全部」


「どれだけ私から奪うの……そんなに私を苦しめたい?」


「私をひとりにしないで……」


「もう……ひとりぼっちは嫌だ……」


「テム……私は……」


「ようやく……これで、全てを終わりにできる」


「私はもう、アナタを友達だと思っていないわ」


「さよなら……シアーシャ。せいぜい、大切な人を思いながら死になさい」


どうして、こんなことになってしまったのだろうか……。別の選択肢があれば、テムもここまですることはなかったはずなのに……何が彼女をあそこまで凶変させたのか……。死の恐怖で身体が揺れる。そうか……自分は死ぬのか。自分が死ぬことなんて考えたこともなかった。死というものはこんなにも怖いんだな。今更後悔しても遅い……。


「死にたくない……死にたくないよ」


「誰か……助けて……」


消え入るような声で、シアーシャは最後に呟いた。その声は誰の耳にも届かないまま虚空へと消え去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ