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遠ざかる心③

「ただいま」


誰もいない家に、声が上がる。暗い部屋にろうそくを照らし、あかりを灯す。


誰もいないのに、ただいまと言う癖は未だに抜けない。ひとりの生活は寂しいものだ。家を出て、ひとりで暮らすことがどれだけ大変か、やっと理解できた。母さんや父さんにまた会いたい。だけど、自分にはそうすることを許されていない。


仕事を始めてから友人とも会わなくなったし、今では仕事のことばかり考えている。シルド王国の連中が、また最近、戦争を起こそうとしているらしい。この国もいつ、攻撃されるかわからない。今日、攻められてもおかしくない世の中だ。今でも、シルド王国とエル王国の戦争は終わっていない。戦争は何十年も続き、今でも時折、国境で争いが起こっているほどだ。停戦も何度か考えられているがエル王国は未だシルド王国に屈していない。くだらない。戦争をして、人を殺してなんになると言うのだろう。


眠ろう。今日の任務のせいか、驚くほど身体の動きが鈍い。ベッドの上に横になりながら、ボーッと思考してみる。


母と父は元気だろうか。自分がいなくなって寂しくないだろうか。自分は両親と別れて寂しい……。あれだけ嫌っていたのに、別れてみると自分の気持ちが素直に理解できた。悔しかったんだと思う。二人を守れない弱い自分が嫌でたまらなかったんだと思う。


両親のことを嫌っている訳じゃないのに……反抗して、傷つけて……自分は本当にどうしようもない人間なんだ。


今更謝ったって遅いだろうけど、自分には謝る資格すらないのだと思う。だけど、もう一度、あの人たちに会いたい。おかえりと言ってくれる人がいて、愛してくれる人のいる場所へ……。


いや、そんなことを考えても無駄だ。これ以上、あの人たちに甘えているままでは大人になれない。あの人たちと別れてから、寂しさだけが自分の中に残る。自分もまだ子供なんだな……。


別れの言葉くらいちゃんと覚えておけばよかった。自分はいつ死ぬかわからないのに……。この仕事に就いたのは、家族を守りたかったからだ。あの人たちを守ると誓ったのだから、その約束を守りたかったんだ。


自分はもう守られるだけの存在じゃない。恋をして、人を愛して、人を守れる大人になったんだ。子供じゃない。自分だって、大人だ。


何もできない子供じゃない。


必ず守ってみせる。失いたくない大切な人たちを守る為に、戦うんだ。ひとりじゃないから、一緒にいてくれた人がいたから、生きてこられた。精一杯生きる。それがあの人たちへのせめてもの恩返しだ。


こんな形でしか、恩返しできなくてごめん。


でも……それでも、家族のことを愛してる。大好きだから……。


だから……どうか、生きていてほしい。ずっと……永遠に、生き続けてほしい。自分が守るから……だから、何も心配しないで。二人を置いて行かないから……ひとりにしないから。絶対に。

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