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親として⑧

一晩眠って、目が覚めた。まだ朝になるには早い時間で隣ではまだクリフが眠っており、バアルも一緒に眠っている。


早く起きて、朝食の準備をしなければ……。


身体が重たい。昨日の疲れのせいだろうか。結局、テムを助けることができなかった。あの時みた、テムの表情が今でも思い浮かぶ……悲痛で悲しげな顔だった。子供を失ったテムの気持ちは、自分たちが思っている以上に辛いものだろう。自分だって、クリフを失えば悲しくなる。どうして、彼女の子供を巻き込んでしまったのだろう。殺す必要なんて最初からなかったのに……どうして、死ななくちゃいけなかったんだ。


謝るだけで許される行為ではない。


もう自分たちにできることは何もない。この先、どうするか、慎重に考えなくては。


ふと、テーブルに視線を向ける。なんの変哲もないただのも木製テーブルの上に一枚の紙切れがあった。手紙だろうか。紙切れを手に取ると、そこには見覚えのある筆先の綺麗な文章が書かれていた。


『シアーシャへ。

突然のことで驚くかもしれないが私たちは、隣国のエル王国に逃げることにした。仲間たちを救うことは一度、諦めて、お前もどこかへ逃げた方が良い。今回の騒ぎで、王国の連中も騒いでいる。なるべく、知り合いのいない遠いところへ逃げろ。お前も、これ以上、無関係の人を巻き込みたくないだろう。我々は、時期を見計らって仲間を助けるつもりだが、子供がいるお前は足手纏いになる。だから……ここでお別れだ。もう、お前とは二度と会えないだろう。寂しくなるが最後に、これだけは言っておく』


『愛してる』


「……先生」


胸が苦しくなる。こんなお別れなんて嫌だよ……。せめて、最後の言葉くらい目の前で言って欲しかった……。自分だって、お別れの言葉くらい言いたかったのに。寂しいのは自分だって同じなのに……ずるいよ。こんなの……卑怯だよ。自分だけ言いたいことを言って、最後は何も言わずに行ってしまうなんて……。


とにかく今は、逃げなくては……ここで、捕まる訳にはいかない。日が昇る前に、この国を出よう。でも、逃げると言ってもどこへ逃げれば良い。ジェルドたちの村に行くか……いや、それだと無関係なジェルドたちを巻き込むことになる。誰も知らない遠いところへ逃げよう。


生き延びよう……今、自分たちにできることは、精一杯、生きること。大丈夫……きっと、なんとかなるはずだ。どこでも良い。家族が無事に暮らせるのなら、どんなところでも耐えてみせる。逃げよう。今は……そうすることしかできないのだから。

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