親として④
「揃ったな」
酒場に降りると、そこには数十人の仲間たちが並んでいた。何か会議でもするのだろうか。それにしても人が多いな。もしかしたら、生き残っている仲間全員が集まっているのではないか。密集した中央には先生の姿が見える。これから何を始める気だろう。
「みんなよく聞いてくれ」
「今回集まってもらったのには理由がある」
みんなを集めると言うことはそれほど、大きな知らせがあると言うことなのだろう。どんな内容なのか、シアーシャたちは息を呑む。
「明日……テムを救出できるチャンスがあるかもしれないんだ」
その言葉に仲間たちはどよめく。
「明日の夜。王国では彗星祭が行われる」
「祭りには太公や国王が参加する。王宮から出発した太公の隊列が街の広場まで進み、その日に限って王宮の見張りが手薄になる。それに乗じて、私たちは王宮へ侵入しテムを救出する……それが今回の作戦だ」
「失敗はできませんね」
「ああ……今回のチャンスを逃せば、もうテムを救出することはできないだろうな」
みんな、それを理解している。だから何も言わなかった。
「作戦は明日の夜に決行だ。衛兵は見つけ次第、殺しても構わない。この作戦、必ず成功させるぞ」
「おう!」
仲間たちが鼓舞するように短く叫ぶ。
「でも、シアーシャはどうするんだ」
「シアーシャが作戦に参加させるなら、誰がクリフの面倒を見るんだ」
シアーシャは悩む。クリフはもう赤ん坊ではないがまだ小さい子供だ。酒場でひとりにさせるのは少し心配が残る。だけど、自分だけ何もしないのは嫌だ。クリフはまだ小さいから、親と離れることを怖がるかもしれないが、こうるしかないのだ。
「私としては、シアーシャとバアル殿にもこの作戦に参加してほしい。人数は多い方がいいからな」
「シアーシャには悪いが、明日はクリフをひとりで留守番させてやってくれ」
「……わかりました」
不本意だが、そうするしかないのだ。クリフはちゃんと言うことを聞いてくれるだろうか。ここ数年間で、ようやく巡って来たチャンスなんだ、この日を逃せばもうテムを助けられない。失敗してはいけないんだ。
「クリフには悪いな……せっかくの祭りなのに楽しませてやらないなんて……」
「大丈夫……きっとあの子も理解してくれますよ」
せめて、祭りの日くらい自由にさせてあげたかった。しかし、自分たちはテムを助けなきゃいけないんだ。彼女を見捨てることなんてできない。
「みんな、今日はもう休め。明日のために体力は残していた方がいい」
「……はい」
そうして、みんなは部屋に戻っていく。
いよいよだ……やっとテムを助けに行ける。この日をどれほど待ち続けていたか……。待っていてね……テム。貴女を救って、もう一度、故郷に帰ろう。ひとりじゃないから……私たちがいるから。明日……一緒に帰ろう。




