表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/61

王国へ⑤

荷馬車に揺られて、シアーシャは、ボーっと暗闇を眺めていた。今はどこにいるのだろう。村まであとどのくらいだ。仮眠をとって目覚めてから数時間は経ったはずだ。目を擦り、ずっと座りっぱなしだった身体を伸ばす。バアルより後に仮眠をとったのに、バアルはまだ目を閉じている。このまま起こすのも可哀想だし、今は眠らせておこう。


「よーし。今日はもう日が暮れるから、ここいらで野営しようか」


時刻は夜中、周りに明かりはなく、暗闇ばかりが広がっている。


「あの……今、どのくらいまで来たんですか?」


「まだ半分も行ってないってところだ。シルド王国までは、少なくともあと数日はかかるな」


馬の足が止まり、ジェルドが馬車から降りる。


「火を起こすから、悪いが嬢ちゃんも手伝ってくれ」


「いや、俺が手伝います」


いつの間にか、バアルが目覚めていた。いつから起きていたのだろう。もしかして、ずっと寝ていたフリをしていたのか……。


「シアーシャさんは、クリフの面倒を見てください」


「わかりました」


バアルに言われて、シアーシャは素直に頷く。


火を中心に、シアーシャたちは囲うように地面に腰掛ける。地面は乾燥して硬いが、荷馬車に比べたら幾分かマシだ。


ずっと移動していたせいか、妙に腹が空く。夕食は干し肉と麦パン。質素で腹持ちが良い食事とは言えないが、文句は言えない。


「悪いなぁ、せっかく旅行に行かせてやるって言ったのに、王国に着くまでの数日はひもじい思いにさせちまうかもしれねぇ」


「いえ、俺は慣れてますから……」


自然と、視線はシアーシャの方に向く。彼女は、長旅に慣れていない。村を出ることもなかった生活から、急にこんな長旅に連れていかれて、生活も一転してしまったのだから、不満のひとつやふたつはあるはずだ。それでも、シアーシャはその気持ちを押し殺して耐えている。


「結構、楽しいですよ。こんな旅をするなんて、故郷にいた時は想像もしてませんでしたし」


その言葉に安心したように、ジェルドの表情が柔らかくなる。


「それなら良かった」


「それにしても、嬢ちゃんが暮らしてた村か……噂でしか聞いたことないから、どんな村なのか俺も詳しくは知らないんだよな。嬢ちゃんの故郷ってどんな所なんだ?」


「私たちの村は、ナムタと言う巨獣と共生しているんです。ナムタとは小さい頃から育って、村人ひとりには必ずナムタが一体、付き添うんです。村人同士で婚約した場合、ナムタたちも同じように結ばれて、子供を作るんです。そうして、生まれたナムタの子供を、人間の子供が受け継ぐならわしがあるんです」


「なるほどな。でも、確か、生贄の民は獣の言葉がわかるんだろ?」


「そうです。"普通"なら……ですけど」


「普通なら……か。まるで、自分は獣の言葉がわからないみたいな言い方だな」


「それは……」


「あ、す、すまん。嬢ちゃんを傷つけるつもりは無かったんだ」


「いえ……気にしてません」


「そうか……なら良いんだが。さ、さて、そろそろ寝るぞー。明日も朝が早いんだ。さっさと寝て体力を温存しておかないと」


ジェルドがその場に布団を敷き雑魚寝をする。


「二人も早く寝ろよ。寝坊しても起こしてやんねぇからな」


「なら、見張は俺がするので、シアーシャさんは気にせず休んでください」


「はい……」


「おやすみなさい……」


クリフを抱き寄せて、シアーシャは地面に横になる。気にしないで起こう。ジェルドもわざと言ったわけではないんだ。だけど、どうしても考えてしまう。自分だって、獣の言葉が理解できていたら……と、いつも考えている。だけど、こんな平凡な自分でも、大切な人と出会うことができた。これ以上何も望まない。今あるものを大切にして生きるしかないんだ。だって、今の自分はそれだけで充分幸せだから、もう何も望まない。この平凡で美しい生活は、何にも変えがたい宝なのだから。


もう寝てしまおう。これ以上考えるのはよそう。今はただ……この生活を噛み締めて生きよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ