表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/61

翼の折れた巨獣②

「ダメだね……全身酷い傷だ。奇跡的に骨は折れてないから、生活に支障はないだろうけど……安静にしてなきゃ、いつ悪化するかわかったもんじゃない」


ジェルドの家のベッドの上で、バアルは横になっていた。呼吸が浅いせいか、死んでしまっているのではないかと思うほどに、弱りきっている。


「お兄ちゃん……死んじゃうの?」


「死なないさ……こんな所で死んじまうほど、やわな男じゃないよ。きっと大丈夫さ……」


「バアルさん……ごめんなさい」


シアーシャはバアルの手を握りながら囁いた。せめて、助けてくれた感謝くらい言わせてほしい。だから、お願い……目を覚まして。このままひとりにしないで。


「おい、お前」


ナーヴェがシアーシャに静かに問い詰める。


「あの時、なぜ獣を止められなかったんだ。生贄の民は獣の言葉がわかるんだろ?」


「ごめんなさい……私のせいで貴方まで危険な目に遭わせてしまって……本当にすみませんでした」


「俺は謝罪が欲しいんじゃない。理由を聞いているんだ」


「あの獣は一体なんなんだ?」


「それは……」


「言えないのか?」


「あの子は……あの獣は、ナムタと言って、私たち生贄の民と暮らす巨獣なんです。私たち生贄の民はナムタと言葉を通じて生活しています。普通……生贄の民なら獣の言葉がわかるんです。だけど……私には、獣と話す力が無くて……赤ん坊を連れているあの子と自分を重ねてしまって……もしかしたら、奇跡的に声が通じて、殺さずに解決できないかと思って、あんなことをしてしまいました」


「そうか……」


クリフの泣き声が部屋を包む。


大切な女性をひとりにさせる男なんていない。何もできずに、寝ているだけなんて、悔しいだろうに。だから、ここでくたばるなよ。


ナーヴェは、何も言わずに家を出ようとする。


「どこに行くんだい」


「決まってる……あの獣を殺してくる」


「無茶だよ……こんなことを言いたくはないが、アンタにあの獣を狩れるほどの腕はない」


「わかってる……だけど、誰かが行かなきゃいけないんだ」


「もう、何もせず何かを失うのは嫌だ」


「止めても無駄だ。俺は行く」


そっと、扉が閉められナーヴェは雪道を歩く。彼の行く先はひとつ。ナーヴェは剣と弓を携え、巨獣の待つ森へと歩む。復讐の火を灯しながら。ひとり静かに、闇の中へ沈んでいくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ