過去と運命⑦
夜道。薄暗い周囲は村人たちが持ち寄ったカンテラで照らされ、雪の降る道を照らしていた。捜索隊が森に入ってかなりの時間が経過した。見つからなかったのか……それとも、死んでしまったのか、生きているのかすらわからない中で、ジェルドたちはその時を待っていた。
「帰ってきたぞ!」
ジェルドの掛け声で、村人は顔を上げる。
森の入り口に松明の灯りが見える。
「ギル……ギル!」
松明に照らされたナーヴェの背中に乗った影を、ジェルドは見逃さなかった。
「ギル……!」
だが、その喜びもすぐに絶望へと変わる。
無惨な屍となったギルを見て、両親は息を呑み込んだ。血は乾き、筋肉の糸が細く伸び、頭は陥没して中身が漏れかけている。
「う……」
すぐに目を逸らしたのはギルの母親だった。
息子をこんな姿で見ることを予想してなかったのだろう。父親に縋りながら、小さく泣き声をあげる。
「すまない……」
ナーヴェが擦り切れるような声音で話す。
「助けてやりたかったのに……何もできなかった……」
「ごめん」
「ごめん……なさい……」
震えた声だった。
「いいんですよ……こうなることは私たちも覚悟していました」
「息子を見つけてくださり……なんとお礼を言ったらいいのか……」
「本当に……ありがとうございました」
声を震わせながら、父親も涙を流す。
「ギル……ああ……」
母親の泣き声は、暗闇を引き裂いた。
誰も何も言わない。誰も動こうとしない。まるで、時が止まったかのように、永遠と同じ時間が繰り返されるような光景だった。
ナーヴェは考えていた。これで良かったのだろうか。何も見つけさえしなければ、この人たちは悲しまなかったはずだ。亡骸を見つけたあの時は、待っている家族の為にせめて息子の最後を見届けさせるべきだと思った。だけど、ここまで悲しませるようなことをさせるくらいなら、亡骸なんて見つからなければ良かったとさえ思う。捜索隊に参加しなければ……あの時、連れて帰ると言わなければ……。
家族を失う辛さは誰よりも知っているはずなのに……なぜ死体を連れて帰った。自分は、馬鹿だ。大馬鹿野郎だ。
こうするしかなかったんだ。ナーヴェはそう自分に言い聞かせた。大切なものを失う辛さは誰よりも理解している。だからこそ、バアルの忠告に耳を貸せば良かったと思う。あの時の自分は、何も考えていなかった。彼の両親がどんな気持ちで帰りを待っていたのか……それも知らない癖に、自分の物差しで判断してしまうなんて……最低な人間だ。自分は……自分が思っている以上にクソ野郎だ。何もできない癖に、一丁前に格好つけて……言い訳ばかり並べて……こんな自分……嫌になる。
「クソ……ッ!」
ナーヴェは走り出した。
「ナーヴェ!」
「俺が行きます」
バアルが後を追う。
無限に続く闇の中をナーヴェは駆け抜ける。どこでもいい、どこか遠いところへ行きたい。誰もいない遠い場所に。消えてしまいたい。そうしてナーヴェは走り続けた。深い深い、闇の中へ。




