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第15話「煙の向こうに朝が来る」
夜が明ける前の空気は、ひんやりとして透明だ。
煙草の煙がまだ指の間に残り、胸の奥でくすぶる痛みと共に漂う。
だけど、朝は確かに来る。
痛みを抱えたままでも、日差しは新しい世界を照らす。
深呼吸をして、窓の外を見た。
ネオンの残り香が消え、街は静かに動き始めていた。
あの人の笑顔も、あの夜の幻も、遠くに消えた。
心の奥の火はまだ小さく揺れている。
消せない痛みはあるけれど、もう恐ろしくはない。
それは経験であり、わたしを形作る色のひとつになった。
煙草に最後の火をつけ、ゆっくり吸う。
苦くても、胸に残る感触が、今の私を支えてくれる。
そして、息を吐くたびに思う。
もう、誰かの影に生きる必要はない。
自分の呼吸を、自分の時間を取り戻す。
いつかまた恋をしてもいい。
誰かに依存する前に、自分の心を信じて生きてみよう。
煙の向こうに、朝が来た。
痛みと希望が混ざった光が、わたしをそっと包む。
生きていること、呼吸していること、愛を知ったこと――
すべてが、今日の私の証明だった。




