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第1話「出会いは火花」
夜の街に降るネオンは、星よりも簡単に手が届く。
だけど、その光は誰かの寂しさを食べて輝いている。
わたしはその日、少しだけ傷ついていた。
失恋という言葉にしなくてもいい程度のかすり傷。
けれど、アルコールの海は弱い傷ほどよく染みる。
「ひとり?」
背後から落ちてきた声は、氷がグラスに落ちるよりずっと滑らかだった。
振り返ると、眩しい笑顔。
ライトに照らされた横顔は、まるで映画のワンシーン。
彼の瞳が少しだけ悪戯っぽく細められる。
「よかったら、席ついてもいい?」
その一言で、世界がわたし中心に回りはじめた気がした。
彼は名前をわざとゆっくり言った。
忘れようとしても忘れられない呪文みたいに。
最初の一杯は彼が注文してくれた。
グラス越しに指先が触れた瞬間、胸の奥でチリっと火花が散った。
その夜、わたしは確信した。
これは運命だって。
恋だって。
でもそれは、火事の始まりだったんだと
今なら笑える。
……少しだけ、泣きながら。




